強者とは
第13話
導入
中学時代の黒板と先生。
青い六角形が空中に浮かぶ。
「これが能力空間だ。」
六つの頂点が順番に光る。
強い力──隔系。
電磁力──電磁系。
重力──重系。
弱い力──壊系。
ネゲント力──ネゲント系。
意志力──意志系。
「この世界のすべてのステートは、この座標のどこかに存在する」
ナークは、(正六角形の1番上の頂点から時計回りに)ネゲント系のケラとザン、壊系のサマンダー、重系のヒュラ、意志系のヒル、電磁系のネラとクラルとアレン、隔系のマラルの9人と戦っていた。ザンとアレン以外は同じ中学校である。
彼らは筆記試験でも優秀だった新人C級隊員である。
ナークは咄嗟に全ての能力を遮断し、ステルスを使った。
だが、ヒルは彼のステルス使用前にそのことを察知し、ナークはヒルのフィールド内に捕えられた。
ステルスは知覚されると効果を失い、また、フィールドはリンクエフェクトという媒覚に由来する基本的な特殊能力に由来するため、ナークのステルスはこの時ヒルのフィールドにより存在を知覚されて無効化されたのだ。
ナークはルームのチャージ リフレクトで跳躍して、ヒルとヒュラのサテライトから逃げた。
それから、フィールドを針のように伸ばして、ヒルにとどめを刺した。
マラルとクラルもこの攻撃を受け、マラルは体に数ヶ所の穴を開け、クラルは頬と両足にすり傷を作った。
ヒュラのメテオライトを盾で防御する。
その後、頭上から切り掛かりにきたヒュラを間一髪交わすが、盾は破損した。
必死にヒュラを交わしていたナークは、右足でヒュラを引っ掛け、体勢を崩させた。
マラルが手からもくもくと蒸気のようなものを放出しながら、ナークに殴りかかった。
ナークはかがんで交わし、マラルの顎から頭を左手から生えた刃物で切り付けながら殴り飛ばした。
マラルは戦闘不能になった。
と同時に、倒れかかったヒュラをチェンジで刃物を生やした左手で殴り飛ばし、腹に切り傷を付けた。
山場1
クラルが剣にプラズマを纏わせて近付く。
一瞬の隙を見たヒュラは、ナークに剣を向けて刺そうと襲いかかった。
ナークの顔に密着したフィールドを(瞬時に重力場で)掠め取った。
クラルの剣のプラズマは、ナークのフィールドを切り裂きながら、フィールドから剥き出しになったナークの顔を狙って鋭く伸びてきた。
刃物のようなプラズマは減速して分散し、その先端はナークの目前で一歩届かなかった。
ナークは
フィールド操作を解いて、直ちに長剣を取り出した。
その剣でヒュラを切り裂き、一回転して踏ん張りを効かせる。
そのままリフレクトで跳躍して、クラルを切り裂いた。
ナーク
(危なかったな。あのまま戦っていたら、傷を負うどころか、僕が完全に敗北していたな。
咄嗟に防御を諦めて急な攻めに転じたけど、足の重し抜きにしても、もし彼らに戦闘の経験がもう少しでもあれば、厳しい戦いになっただろう。あの一撃で2人を仕留められてよかった。)
ナーク
「ヒュラはよくこんな戦闘をするのかい?」
ケラ
「彼の戦闘スタイルはネゲント系気質です。
戦術の方は、大抵の場合は理に適ってます。
意表を突こうとする動きは、普段の戦いでも結構多いです」
ナーク
「実は、ちょっと消極的に見えたから、気になったんだ」
ケラ
「彼は誰よりもセンスと才能に溢れる強い戦士のはずです。
彼は重系能力のせいで正当に評価されてきませんでした」
ナーク
(ヒュラがB級用のステレオで1,2ヶ月の経験を積めば、今の僕と互角になれそうだ。)
実際、もしヒュラの援助がなければ、アレンとザンが受けた斬撃は、わずかだがより深かっただろう。
ヒルとケラの戦闘を含め、C級6人の戦闘力は、ヒュラの援助で底上げされていた。
ヒュラがいなければ、全員に見せ場はできなかっただろう。
アナウンス
以上で試験を終了します。お疲れ様です。
全員合格です。各自、C級用ステレオを持ち帰ってください。
皆解散した。
ヒュラとナークは本部基地に向かう。
ナーク
「やっぱりヒュラがこの中で抜きん出て強いと思うんだ。
君のおかげで、マラル以外はそれなりに活躍できたわけだし」
ヒュラ
「僕は戦いで、あまり調子が安定しません。
僕があの中で抜きん出て強いはずがありません」
ナーク
「ネラとクラルは、良い意味で士気に貢献してたね。
君も触発されたのかい?」
ヒュラ
「2人は僕の親友です。
僕もせっかくだから、何か爪痕を残したいと思いました。
彼らに負けていられないので」
ナーク
「君の戦闘スタイルは、結構異質だよね?ヒルの影響かい?」
ヒュラ
「それもありますが、1番はケラの影響です」
ナーク
「へぇ、ヒルは君をかなり特別視してるようだが、
君は案外そうでもなさそうだな。
ヒルは結構キツいこと言ってきそうだが、耳が痛くても無下にしない方がいいぞ」
基地周辺でメレピーが襲撃している。
山場2
ギーク
「ナーク、その子が噂のC級隊員か?」
ナーク
「やあ、ギーク。その通りだよ。この子はヒュラ。
僕の弟子だ。よろしく頼むぜ」
ギーク
「そいつ、ナークが気にいるほど強いのか?
適合系統と独自ステートはなんだ?得意な戦闘スタイルは?」
ナーク
「聞いて驚くな?こいつは重系の第三世代だ。
メレピンは多めでレンジも高めっぽいけど、ブレブレらしい」
ギーク
「重系だって?またハズレ仕事引かされたのか?」
ナーク
「それがよ、こいつ第1試験で準1級アンテ倒したらしいぜ」
ギーク
「へぇ。それは将来に期待の大新人だ。
そいつの未来に期待だな。はるか遠い未来にな」
ナーク
「あんまり見くびるなよ?」
本部の中に入り、ガラス張りのエレベーターに乗ったヒュラは、ギークが戦闘する様子を見ていた。
1級のティラノサウルス型メレピン獣、ティーラ3体と、準1級の食虫植物型メレピン獣、ウツボカヅ8体と戦っていた。
ギークは隔系らしく、剣にフィールドを纏わせて中距離斬撃を繰り出していた。
起爆性で、斬撃を受けた切り口からウツボカヅが爆発して傷だらけになっていた。
ドロドロの物質を撒き散らす攻撃は、ギークの大量の中距離斬撃で木っ端微塵にされていた。
ティーラが口から放つ衝撃波を、ギークはことごとく交わす。
ギークは、厚そうな皮膚で覆われた巨体のティーラを真上から真っ二つに切り裂いてしまった。
ナーク
「ヒルは能力の割に強くない。
実力はそこまで大したものではない」
ヒュラ
「ヒルは自分の能力をほとんど使いません。
それに、さっきトップクラスの戦闘力だって…
今日あなたと戦った中では1番のはずじゃ……」
ナーク
「もちろん、戦闘力だけならね。
ただ、彼は能力を使いこなせない。
強い能力でも、ただ持ってるだけで強いわけじゃない。
本人が1番強く自覚してるだろうけどね」
ヒュラ
「基礎的な戦闘力が実力を決めるはずでは……?」
ナーク
「戦いの結果は、基礎戦闘力や能力だけで決まらない。
僕はこれまでC級B級って言ってきた。
けど、そんなのは状況や工夫で、ひっくり返せたりする。
君と僕の1対1で、僕が君に勝てるとも限らないんだよ。
君の方が、実力でヒルより勝るだろうね」
ヒュラはあまり納得がいっていない。
引き
ヒュラ
「あの時、直接戦闘して、ヒルが持ち堪えたのは27秒。
僕ならたぶん、5秒くらいです。
実際、僕は最後に呆気なくやられました。
それで、僕がヒルに実力で勝るって、どういうことですか?」
ナーク
「結局、僕を追い詰められたのは、実質、君だけだ。
ヒルは僕がステルスを使うまで粘った。
だが、ステルスを使わせたのは、君だ。
独力で僕のフィールドを剥いだのも君だ。
最後に僕を倒す寸前まで戦い抜けたのも、あの場で君だけだ」
ヒュラ
「僕はこれからもっと強くなります。
ただ、今の僕の実力は、そんなに大したものではありません」
ナーク
「うーん。
さっき言った『実力で勝る』っていうのは、君がすぐにでも彼を追い抜けるんだ、って捉えればいい。
ギークの言葉だけど、将来への期待って言えば良さそうだ」
ヒュラは、ネラとの会話を思い出した。
ヒュラは、改めて自分の目標が、将来的にS級上位クラスになることであるのを確認する。
ギークの戦闘を目に焼き付けていた。
ヒュラとナークは上層部がいる基地本部の最上階に到着した。
ルーク
「初めまして。僕は、S級最強のルークです。
現バリリオンズの頂点に立つ最強戦士で、総司令やってます。よろしく」
ヒュラはルークに挨拶する。
「どうも。こんにちは。ヒュラです。どうぞよろしくお願いします。」
ルーク
「あれ、S級最強って聞いても反応薄いね。バリリオンズのトップには興味がないのかな」
ヒュラ
「いえ、僕の目標はS級上位者です。バリリオンズの最高戦力を目指しています。」
セルラが笑う。ナークが頭を抱える。
セルラ
「君まだC級なりたてでしょ?」




