08 ささやく星
「星が綺麗ですよ。ジェイク」
ジェイクの腕の中、リーリアが楽し気に囁く。白い息と共にこぼれた言葉は、星の音のようだとジェイクは何故かそんな柄にもないことを思ってしまった。
「さっさと寝ろよ」
「もう」
リーリアは不満そうな声をあげる。返答に面倒になったジェイクは更に強く、しかし腹部には注意して抱き寄せ、寒くないようにと厚手の毛布を隙間なく巻き付けた。
この寒さの中であるが、ここまで二人を乗せてくれた馬はしっかりと側にいるのを確認する。明日も二人も乗せて走ってもらわなければならないのだ。しっかりと休んでもらわなければならない。
「墓守様はきっと驚くでしょうね」
「そんで、何故か怒鳴ってくるだろうな」
「ふふっ……」
せっかく隙間なく毛布を巻き付けたと言うのに、リーリアは隙間から左手を出し、薬指にある指輪を見つめる。
静が二人の為にと力を使い、作ってくださった銀の指輪。飾りも、彫金も一切ないつるりとした表面のそれは、星明りに照らされている。
ジェイクもまた同じく左手を出し、その細く小さな手を包み込んだ。ジェイクの左指にも同じく銀の指輪がある。が、その中央には白い石、元は白い蝶であったヴィラがそこにいた。
まさかこのように姿を変えてまで側にいてくださるのかと驚き、そして強い感謝を抱いた。それは今も変わらない。
そう、だからこそ。
「冷えるだろ、リーリア」
「だって綺麗ですもの」
「知ってる」
ジェイクはリーリアの左手をしっかりと毛布の中にしまいこむ。誰にも、とられないように。
「俺はもう寝るぞ」
「……ええ、おやすみなさい。ジェイク」
「おう、おやすみ。リーリア」
リーリアの不満げな声を聞きながら、ジェイクは腕の中の熱を強く抱えて瞼を閉じる。
守らなければ。全てから。静と、ルイスのように。
その為ならば墓守の理不尽な怒鳴りぐらい平気、だとジェイクは思い込み、今度こそ眠りについた。




