08 変質
夜の大神殿は静寂に満ちている。というのに、この場だけはずいぶんと空気が明るかった。
「あのね、あのね。静、この祈りの間がある中庭に眷属がいるんだよ。リディアータの」
「そうなんだ。どんなお方?」
「鼠! あ、けど、いるかなぁ……?」
静の手を引く伊織はぐるりと見渡す。
ここは大神殿の祈りの間の建物がある中庭だ。静にとっては初めて足を踏み入れる場所だが、伊織はもちろん、一緒についてきている奈緒と真咲も、何度か訪れていた。
「あ、いた。あの子だよ」
伊織は指した先には、草花の合間から鼠がひょこりと顔を出していた。近づいてくるかと思ったが、鼠は残念ながらすぐに姿を隠してしまった。
「あれ?」
「……ウーロがいるからじゃない? もしくはフーリュがいるから、とか」
鼠の天敵は蛇。そして梟だ。静はノーマンの肩に大人しく止まっているフーリュの姿を見た。
この場にいるのは、静達の他にルイスはもちろん、ヴィンセントにエドヴィンもいる。ユアンもいるが、周囲を忙しそうに見渡しており、カルロスが呆れた様子で見ていた。
もちろん各々の侍女達もいる他、ジェイク達四人もいる。かなりの人数がこの場にいるのだ。それなりに空気が明るくなるのも当然であった。
それでも中庭の片隅はじっとりと妙な暗さがあった。
「何か出そう」
「幽霊いるよ?」
「……いるんだぁ……」
当然のように答える伊織に、静は言わなければ良かったとほんの少しだけ後悔した。
後ろからで、ヘクターがあそこにいそう、という声が聞こえてきた。ついで、フィルとノーマンが黙れと口をそろえて言い放ち、ジェイクは言うなよお前、と詰めている声も聞こえてきた。
どうやら三人は嫌いらしい。仕方が無い、幽霊は殴れないのだから。
そうこうしているうちに、エドヴィンが祈りの間の扉の鍵を開ける。ずいぶんと大きな扉を片方だけ開き、傍らに控える。
先にヴィンセントが中へと入る。続いて伊織が静の手を引いて中へと導いてくれる。静はそのまま中へと足を踏み入れた。
初めて入る大神殿の祈りの間は、とても簡素な内装だった。
建物自体、白で作られていたが中もまた同じように白かった。青い絨毯が引かれた先、目の前の奥には我らが神、アルカポルスの彫像があった。いくつかのステンドグラスから淡い月光が差し込み、中をほんのりと明るくさせていた。
なんとも、幻想的な光景だった。
けども、すぐに静は目の前の幻想的な光景から視線を落とし、耐えるように胸元を押さえた。
「静、大丈夫……?」
「……うん、大丈夫。大丈夫、だけど……」
伊織は慌てず、むしろ分かっていたのだろう、静のこの状態を見て話しかけるだけだった。むしろ後ろにいたルイスの方が慌てている様子が見え、静の体を支えようと背中に手を添える。
静はふっと、大丈夫と言うようにルイスに微笑みかけ、伊織には困ったようにしかめた顔を見せた。
「これ、きついんだけど」
息苦しいものが静の胸の内から溢れ出し、締め付けようとする。本当に意味が分からなかった。
「きついって。ユフィアータって、そんな変な感情抱いてるの?」
「……伊織は違うの?」
伊織の言い方から察するに、これはユフィアータの感情が流れ込んできているということだ。
祈りの間、だからなのかどうかは不明であるが、これはこれで繋がっているのだと強く実感が出来るものだった。
「えっとねぇ……。なんか、機嫌は良くないかも」
「……そうなの?」
「うん。と言うか、いっつもそんな感じ。奈緒と真咲はどう?」
いつも感じているからこそ、伊織は平常なのだろう。そして後ろにいる奈緒と真咲に目を向ければ、二人そろって顔をしかめていた。
「メルヴェアータは今……、だいぶ落ち着いているわね」
「そうなの? ラウディアータは苛立ってるわ。で、静は?」
どうしてそのような感情を抱いているのか気になるところではあるが、静は感じているがままに答えた。
「なんか、すっごく苦しい」
どうして、こんなにも苦しいのか。
初めて知るほどの重苦しさに、静はただ、胸を押さえて耐える他なかった。
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青い絨毯の下に隠された、六つ星を象った青いタイル。見る角度によっては雪の結晶が浮かび上がる仕組みなのだと真咲に教えてもらった。ただ今夜はどうも見られないらしい。
そしてヴィンセントが手早く星、もしくは雪にを象ったタイルに触れ、動かす。
正直、静はこの時とても楽しんでいた。
何これ、面白い。まさしくファンタジー。いや、魔術もあるし、眷属もいて髪にも会っているわけだけどもこういう冒険ファンタジーチックなものを目の前に少々興奮を抑えきれなかった。
ちなみにジェイク達四人は子供のようにはしゃぎ、リーリアにたしなめられていた。この場にヨカゼがいれば、そろってたしなめていたかもしれないが、猫達のお守りのために留守番だ。
先を行くヴィンセントに続いて、六つ星、もしくは雪の下に隠されていた螺旋階段を下る。当然のことながら静は膝のこともある為、ルイスに抱きかかえられているわけだが。
そうして、長い長い螺旋階段を下りきった先にはとても広い空間があった。
天井部分には淡い光を発する魔具なのだろう、それが全体を照らしていた。そして半分も崩れている状態の見上げるほどに大きな壁画があった。
向かって崩れた左を向いている女性の姿。あれは我らが神にして天の神、アルカポルスの姿だった。
「これは……! おお、なんと素晴らしい……!」
それを目の前にした瞬間、ユアンは大きな声をあげた。歓喜の声であった。続いてジェイク達がわぁわぁと次々に声をあげていた。
「すげぇ、こんなゴーレムもいるのか……。お前もそのうちでっかくなるのか?」
「大きくなったら専用の場所用意しとかないとだ」
「おお! すげぇ!」
「でけぇ……」
何せ、その壁画の前に二体の白いゴーレムがいたからだ。
小さなゴーレムの眷属であるゴズと共にいるフィルは、躊躇なくゴーレムに近づき、ノーマンが少し警戒をしながらもその後を追う。ヘクター、ジェイクは壁画とゴーレムを前に、もはや語彙力というものを失ってしまったらしい。
『本当に愚かだな、人間は』
「そう?」
『ああ、そうだとも。このような場所を残しおって……』
静の服の下に身を潜めていたシルドラがひょこり、と顔を出した。シルドラは呆れているのが伺える声を発し、またすぐに服の下へと引っ込んだ。
「扉だ!」
ヘクターの驚いた声がよく響き、静はすぐさまに目の前へと視線を向け、銀の瞳を丸くした。
先ほどまで壁画しかなかった場所に、扉が現れていたのだ。よくよくと見れば二体の白いゴーレム達がどうやら出入り口である扉を作り上げたようだった。
ヴィンセントは一度、静へと振り返る。行くぞ、と言わんばかりに。
「静様」
「うん」
それを見てルイスはようやく静を下ろし、すかさずに手を差し出した。静は分かっていると一つ頷き、手を重ねた。
では行こう、とした時、前にいた伊織が思い出したように告げた。
「あ、静。ここを守ってくれてる人達がいるからね」
「うん……?」
つまりは幽霊がいる、と言うことなのだろう。そう理解しつつ、静は改めて中へと足を踏み入れ、すぐに理解した。
「……ああ、そういうことね」
同じように淡い明かりが室内を照らしていた。その中、風化した黒い布をまとっている三体の木乃伊が、まるで座禅でもしているかのように座っていた。
伊織は迷いなく祈っている最中のヴィンセントの横に並び、同じように祈る。
静もまたその後ろにつき、祈りを捧げた。
悠久の時を過ごしながら、今もこの場を守ってくれている者達に感謝と慈しみをこめて。
全員が順番に祈りを捧げ続けた後、さらに奥の部屋に入り、静は目の前の大きな絵画を見上げ、小さく息を呑んだ。
「……この絵だ」
「はい」
表の壁画同様、右側には我らが神、アルカポルスの左を向いている絵。エヴァンハイン家の隠された宝物庫で見たものと同じ構図であったが、あちらは我らが神が描かれている箇所以外、大きく焼失し、全体を見ることは叶わなかった。
しかし今、ようやく全体を見ることが叶った。
大きく描かれた我らが神の下、そこに四人の白をまとう少女達の姿。愛娘達が、同じように左へとそろって顔を向けている。
そして先頭にいる愛娘、少年のように髪が短いユフィアータは剣を捧げ持ち、中央で光をまとう人間へと差し出していた。
中央の人間は金髪の男だった。その背には白い翼が描かれている。
さらに左を見れば、我らが神とそっくりな、しかし一目で分かる大きな男が描かれていた。
あれこそが、シルドラの前の姿。封印された大地の神にして我らが神の兄。もはやその名を口にすることは出来ない。
良くないもの、呪術や召喚術によって身を汚された結果、自我を失い封印される結果となった。そしてあの冬至に封印が解かれたわけだが、結果的に今、ユフィアータの眷属となり、砂の神、シルドラとしているわけである。
あの時は本当に大変だったと思い返しながら、静は先ほどからずっと中央に描かれている人間を見上げていた彼女の隣に並び立った。
「この人がジーン?」
『そうだ』
愛娘達全員から力を授かり、大地の神を封じた人間であり、エヴァンハイン家の先祖。つまりはルイスの先祖にあたる人間だ。
『二度と会えないと知っていたらと、今でも思うよ』
「……今も、愛してるんだ」
『ああ、とても愛してる』
そしてユフィアータが愛し続けている人間。
そこでようやく静はこの重苦しい感情の意味を悟った。
これは愛だ。
愛娘と呼ばれる神のような存在が、ただ一人の人間を愛した。結末なんて分かっていただろうに、残されると分かっていただろうに、それでも愛した。
孤独と、きっと幸福に満ち足りた遠き日々によって胸の内が強く締め付けられてしまっている。それでもユフィアータは今もなお、愛している。忘却することもなく、別の何かを愛することもなく、ただひたすらに愛し続けている。
静は、だから、この苦しみを大切にしようと決めた。
何せ己は銀の聖女。ユフィアータが聖女であるのだから。
なんて。
「それで、呼び出した理由は?」
『赦しを得た』
気を取り直し、静はそのままユフィアータに問えば、そんな答えが返ってきた。
一体どういう意味か。
静は僅かに顔をしかめながら、ようやくユフィアータを見やる。ユフィアータは真っ直ぐに輝く銀の瞳を静に向けていた。
『我らは直接、人間には介入出来ない。せいぜい加護を与えるか、願われた時ぐらいだ』
「うん」
『それが理だ。だが、今回ばかりは僅かであるが介入した』
そうしなければいけない状況になったということだ。
『まぁ、そもそもとして静達にはある程度の介入をしていた為今更なことにはなるんだが』
「それなら赦しを得なくても良かったんじゃないの?」
『あの時は静達が帰るという選択をしていたからこそ、赦されたことだ。最初から帰らないという選択をしていたら側にいない』
初めてこの世界に落ちてきた時、静達の側にはそれぞれ小さな動物の姿となって側にいてくれた。静達を元の世界へと帰らせる為に。
もし、これ幸いとこの世界に最初から居座ろうとしていたならぱと想像してしまうと静はぞっとした。
知らず知らずに理に触れていたかもしれない。そうでなくても、魔力が毒であることなんて知らないまま命を落としていたかもしれない。
しれない、という想像が次々と湧き上がる。
静はその過ぎ去った過去の想像をすぐ様に切り捨て、ユフィアータに向き直った。
「……で、赦されたことって?」
『うむ。にしても想像通り、全員で来たな。話の手間が省ける』
「あっそう。で?」
そもそもとして愛娘であるユフィアータに呼ばれたのもあるが、静が無茶無謀を本人の自覚なくやるのだ。だから一緒に聞かない、なんていう選択は無い。
ちなみにヴィンセントは面白がってついてきただけだし、ユアンは奈緒が呼んだ。せっかくだから、と。カルロスとジェイク達は念の為である。
全くもって信用されていないが、それでも無茶無謀をするのが静である。仕方のないことだった。
『そもそもとして、静の他に伊織、真咲、奈緒もまた異世界の人間であるが故に狙われやすかった。だが、私の力が弱まっていたが故にとくに静が狙われていた』
「お陰様でね」
『ああ。そして、冬至の日。静寂の山で、静の魂を使い、召喚術が行われた結果、彼の神が召喚された。封印が解かれたと言っても良いが』
静は何気なく、ルイスに振り返り見る。ルイスはいつになく硬い表情を浮かべていた。
『あの時、静の魂は肉体と離れた。しかし母上……、天の神であるアルカポルスの力によって繋ぎ、静は一時的にその身に神を宿した』
「そうらしいね」
静はあの時、意識は存在していなかった。
目覚めた時にはルイスの腕の中にいたわけだが、まさか我らが神が静の身に宿っていたなんて思うはずがないどころか、一度死んでしまっていたなんて思わなかったのだ。
『そう。それで、お前達はそのままこの世界へと留まった』
「……すごく嫌そうに言うね」
『……まぁな。だから介入せざるえなかった』
「なんの?」
おそらく、今の話は前提の話。本題はこれからだった。
静はユフィアータに続きを促すと、ユフィアータの小さな唇が歪んだ。
『理により、静の全てを抹消しなくてはならなくなった』
静はユフィアータが言っている意味を理解出来なかった。なんとか時間をかけて咀嚼するように言葉を飲み込み、静は半笑いをつい浮かべた。
「……消えて、ないけど」
『ああ、我々が介入したからな。だというのに、何故こうも巻き込まれるんだ。うかうかと目を離せない』
「あ、はい。ごめんなさい」
ユフィアータから理不尽な怒りをもらい、静は反射的に謝罪した。
「えっと……なんで?」
幼い子供のようになんで、という言葉を繰り返すしかない静に、ユフィアータは答えた。
『魂が変質したからだ』
「……そうなの?」
『そうだ。伊織は見えているようだが、魔力を私の力で守れる以上に溜めやすくなった。おかげで本来の浄化の力が半分も使えていない』
「嘘。あれで半分?」
『半分以下だ。私の力はもっとすごいぞ?』
何ということか。まさかの事実に静は思わず絶句していると、伊織が口を開いた。
「じゃ、じゃあ……静が曇っていたのって、ユフィアータの力が戻ってないから、とかじゃなかったの……?」
『元には戻りつつある。それに思い出してみろ、伊織。私の力が今よりも少なかった時でさえ、私は静を脅かす毒を全て排除していたぞ?』
どうやら静は伊織から見たら、常に曇っていたらしい。
しかしまさか、そんな状態だったとは静は自分のことだと言うのに、全く気づかなかった。
「……えぇっと、それで抹消とどう関係が?」
『単純に言えば、そこに加えて神を宿しやすくなった』
「それ、わたしのせいじゃない」
『だから介入したと言っただろう。完全にこちらのせいだからな』
その理由に静はなるほど、と納得しかけた。
「……や、待って。それだけで?」
『ああ、そうだ』
「理不尽です」
『だがな、そうは言えんのだ』
魂の性質が変わった。結果、魔力が溜まりやすくなり、神を宿しやすくなった。
それだけで何故、抹消されることになるのか、意味が分からなかった。
『なぁ、静。何故、人間は召喚術を使っているんだ?』
「……それは、神を……召喚しようと……?」
静達がこの世界へと落ちた原因である召喚術。あの時、静は封印されていた大地の神を召喚しようとした結果、異世界にまで届いたものだと認識していた。
そして、召喚術により、封印が解かれた大地の神と対峙した。
そして静は大地の神と言葉を交わした。
何故、大地の神が封印されることとなったのか。黒に汚されたのか。
大地の神は答えた。
召喚術を使われたからだと。
『では次だ。思い出せ、静』
さらに思考を巡らせようとする静に、容赦なくユフィアータは問う。
『あの時。そう、静を監禁した男。凍土に眠ってしまったという娘を生き返らせて欲しいと願ったあの男に、静は何と答えた?』
謎解きをしている場合ではない。だが、これがユフィアータが出来る問いかけなのだろう。
どうもこの世界の理というものは、人間に対して厳しい。人間の力で解決することを強く望んでいた。故に神は最低限でしか関わらない。答えをそのまま提示しない。ひたすらに問いかける。そして気づかせようとする。
静はその精一杯のユフィアータの言葉に、必死に頭を動かす。が、すぐに諦めてルイスに振り返った。
「ねぇ、ルイス。わたし、なんて言ったっけ?」
「何故、ご自身のことなのに忘れたんですか」
「いやぁ、あの時はいかに怒らせて殴るかってことで頭いっぱいで」
この世界に落ちてすぐ、なんだかんだとあってとある貴族の屋敷に数日だけ静は監禁された。おかげでルイスに出会えたわけであるが、その男の願いに静はとても腹を立てた。ので、静は男をわざと怒らせ、顔面に拳を入れたのである。
一年も前のことだ。自身がやったことは明確に静は覚えているが、何を言って怒らせたのかまでは詳細に覚えてはいなかった。ただ禄でもないことを男に説いたのは覚えていた。
そんな静にルイスは呆れた様子で大きく息をついた。
「生き返らせることがもし過程であった場合の話をなさいました。しかも、かなり具体的に」
「ああ、うん。それは覚えてる。内容はあんまりだけど」
「……確認ですが、我が国の葬儀については」
「知らない。どうやってるの?」
「火葬です。土葬で埋葬をするとスライムが来るので」
「ああ……」
この国のスライムは恐ろしいが、まさか死した人間の肉体にまで集まるとは思わなかった。
「ただ静様は火葬だろうが、土葬だろうが、魂を入れる為のいれものを用意する必要があるとおっしゃいました。では人形か。老化をしなければ死ぬことが無いが、それは人間と言えるのか。さらに言えば、生き返らせた側が人間として凍土に眠った後、残された側はどのようになるのか」
そも、どのようにいれものに魂を定着させるかによって話は変わるだろうが、今はそんなものを考える時ではない。
静は続けてくれるルイスの言葉に耳を傾けた。
「では、他人の体を乗っ取るのか。似たような人間を捕まえ、殺し、そしてそこに魂を……」
と、そこでルイスは言葉を止めた。深緑と、翠玉の瞳を目いっぱいに見開き、静を凝視した。
ルイスがそんな反応をするのを静は理解した。そして同時にまさか、と言いたくなった。
はくり、とルイスは音も無く唇を動かす。何かに苦しむようにルイスは顔を歪ませ、ユフィアータへと目を向けた。
「静様の、体に……召喚した神を宿そうとしている、と……?」
嘘であってくれと願うように、たどり着いてしまった答えをルイスは口にする。
そしてユフィアータは無情にも一つ、頷いた。
『ああ、そうだ。静の魂と溜められた魔力さえあれば、召喚術は行えてしまうだろう。そしてそのまま神を宿せる。故に、これを危険とし、静の全てを抹消することとなった』
「しかし、何故。それだけであれば……!」
『そう、それだけ。しかしそれだけでさえ、もはや取り除かなくてはならないのだ』
静という存在は異物である。その異物が突然変異をしたのだ。であれば、これ以上の脅威になる前に取り除くという行為は当然のことではある。
理屈では、静は理解出来た。しかし、それが当事者となった今、理解なんてしたくなかった。
『であるからに、赦しを得た』
ユフィアータは、そしてもう一度同じ言葉を口にした。
一体何の赦しなのか。これを告げる赦しなのか、そうではないのか。静はもはや、そこまで考えられるほどの余裕なんてもは残されていなかった。




