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アルカナの戦慄  作者: 三古谷
第七章 『That person is sinner』
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『私は貴方を許さない』

ガラス張りの部屋。

その中で、私と同じ空間に居るのは、獣の悪魔のみ。


獣の悪魔には、宝石の首輪が取り付けられてる。

…恐らく、GEMと同じようなもので拘束具の役割を果たしてる。

『それじゃあ、始めてくれ』

バーネットさんが通信で言った。

他のみんなもバーネットさんと同じ、通信室で待機してる。


「…………?」

思わず扉の前にいる礼人に、視線で助けを求めてしまう。

是が非でも残るって言った礼人だけど、こういう場合でも助けてくれるものなんだろうか…?


「………」

えっ、どうしろと??

倒すんじゃ駄目なんだよね、もちろん。

でも光の能力を剣に纏わせたりして、いつも倒しちゃってるよ?


『それは想定外だった。

 すまない。やり方までは解らないんだ。』

そんなバーネットさん!!

丸投げですか?!!


通信越しにバーネットさんに切れ掛かってるとノックが聞こえる。

当然、礼人だ。

助け船が来たと嬉々として部屋の隅へ向かうと

『思考を閉じろ』

と、ジェスチャーも交えて言われる。

私が24時間、思考駄々漏れみたいな考えは止めて欲しいね。


…まぁそうなんだけどさ。

それが故のこの事態なんだけどさ。


えーっと。

読まれたくない。知られたくない。殻を作る。殻を閉じる~。

『良いか。そのまま。

 オレ達の力に順序ってものはない。

 銃を作りたいな。と思うから出来る。

 剣に纏わせたいな。と思うから出来る。

 それだけだ。」

ガラス越しの礼人の声に耳を澄ませる。


あー、うん。なるほど?

思考を閉じるって考えながらで7割くらいしか理解できないけど、うん。ワカルワカル。


思考を~閉じる~。殻~カラ~COLOR


礼人はただでさえ聞き取りづらい声を、更に小さくした

『思えば大抵の事はできる。

 だが愛本。

 果して、ここでそれを成功させて良いのか?

 判断はお前に任せる。

 お前がどんな判断をしても、オレは必ずお前を守る。』

そう言い終わると礼人はガラスを一回ノックして、ガラスから離れていく。


………さては礼人。


私の話、全然聞いてなかったな?!

今の今やるんですー!やるったらやるんですー!!と言い張ってた私の話を。

オリンピック並みの頻度でしかない私の我が儘を、全く聞いてなかったな?

考えてるふりして、ずっと寝てたのか、お前は。


「いや、やりますよ。」

やりますけど?

ここで成功させて良いのかですって?

良いでしょうよ。

この悪魔ちゃんはこの世でたった一人、この子しか居ませんもの。

あたるも八卦当たらぬも八卦ですよ。何か違うけど。






「うん。当たらなかったね~」

思ったよりずっと軽い調子のバーネットさんの声に、知らず知らずに緊張していた体が緩んだ。

紅茶を飲むバーネットさんにつられて飲んだお茶がまた、私の心を鎮めてくれる。


「すまないね、骨董ばかりの古臭い部屋で。 

 完全に僕の趣味なんだ。」

骨董品…というかアンティークだらけの部屋はめちゃくちゃハイセンスだ。

よく解んないけど、何かかっけぇ。


ティーカップを置いて恐る恐るバーネットさんを見つめる。

てっきり、悪魔を救う力?とやらが全く使えなかったことを言われるのかと思ってたけど、そうではないみたいだ。

…だとしたら何で呼ばれたんだろう。

部屋の外。扉の前に礼人と永徳が居るという面倒臭い状況なのに。


ちなみに綾雅はそういうもしもが起きたとき、残ってる隊員を逃がす要員。

いや、そんなもしも起こるわけ…

「ごめんね。

 君の秘密にしたいこと、知ってしまって。

 いつもなら知らないふりをするんだけど…君の力だけはそうも行かなくて…。

 アリスも察してしまったみたいだし…、もう良いかなって」

うえっ……、マジですか。本当ですか。

やっちまいましたね、私。

トップどころか、アリスさんにまで…?

そんなのいつ…いや、バーネットさんが言うんだから間違いないんだろうけど。


ど?

どうしたら良いんですか??

口封じ?口封じなの?口封じってどうするの?え?お?

「あはは。

 落ち着いて」

言いながらも、バーネットさんはニコニコ笑っていた。


あ、そうだ。この辺の声も聞こえてるんだ。

ちょっと落ち着こう。

っていうか口封じとか言っちゃった。我ながら物騒。


「普通じゃない?

 どうもしなくても良いよ。

 アリスは馬鹿じゃないから、君をどうもしない。

 それに、させないからね。」


んん…、概ね倖架さんの想定通りになってしまった。

バーネットさんに、そういう負担を掛けてしまうのは申し訳ない…けれどもそれに頼る他ない。

うー…自分が不甲斐ない。


「勘違いしないでね。

 僕にとって君の力が有用だから、アリス達に邪魔されたくないだけ。

 普段なら全部無視してるから。」

ちょっと不機嫌そうな、ふてぶてしい感じの言い方で、バーネットさんは言った。


何度か瞬きしてから、私はまた笑ってしまう。

態と冷たく言って心配かけないようにしてるのが、凄くあからさまに解る。

これが世に言う、ツンデレと言うもの何だろうか。

よく解らないけど。

愛しさのような嬉しさのようなものを覚えるから、多分あってると思う。


「…その、有用性の事だけど」

ああ、聞こえてても話はそらすんですね。


「はい。光の力の事ですか?

 正直に言って私の力って弱い部類に入るんですよね。

 綾雅とは比べるべくもないし、天莉愛さん…あ、うちの隊員なんですけど、

 その子よりもずっと弱いですし。

 うーん…、本当にカルディアって言うのも微妙なくらいで…。」


「どれほど微弱であっても、それは稀少で貴重だ。

 力であることに違いはないから、…出来ない筈はない。」

確かに二人に比べたら弱いとはいえ、ある程度の攻撃くらいなら出来る。


それなら、その延長で攻撃以外に使えても…可笑しくはない。

「そう思うんだけど…ごめんね。

 光の能力者ってこの国では僕が生まれる前には途絶えてたし

 どんな力か…、何て事すら隠されてたから…。」

バーネットさんが何歳なのかは解らないけど…、50年くらいは無かったのかなぁと思う。

能力者に関する文献とかは能力者達自身が後世のために残してるから、光の力は意図的に隠されたんだろう。

…悪魔に狙われないため……、だっけ。

それでもなお2010年の事件で滅ぼされた。無論、悪魔によって。

神夜さんのご両親が亡くなったのもその頃だっけ…、あ、帆凪様が誘拐されたのも……ああ。


多分、全部光の家系の事件に巻き込まれたんだろうな。

始めからその家系がなければ、全ての事件は起きなかったんだろう。


「その長い時間を考えれば、いつでも良いんだよ。

 今じゃなくても、ここじゃなくても、何でも良い。

 君が居てくれたと言う事実だけで十分だ。

 今まで光の力は正統者レジティーマしかないと思ってたから…。」

そっか。血統に関係なく光のカルディアが生まれるんなら、私が死んだ後も、また生まれるかも……知れない。


けどそれって一体、何年後なんだろう。


やっぱり、私が子供を産んだ方が確実なんだろうな。

少しでも光の因子のある人、もしくは異端の人と……。

そういう人と結婚した方が確率は高い…って、昔、繋パパが言ってた。


ミハヤさんはそう言うのとは全然関係ない人で、きっと先はないんだろうなぁ…と思う。

私はアンゲルス隊員で、光の能力者で。

もしも自分の子供に光の能力が現れたら…、ミハヤさんに危険が及んだら…。


余程、特殊な人じゃない限りきっと傷つく。きっと愛想を尽かす。きっと嫌になる。

きっと…、絶対終わる。


「………僕の力は君の知る通り、心を読む力だ。

 違うよ。

 聞くのは慣れてるから。君のせいじゃないし、僕のせいでもない。」


「…心って言うのは結構漠然としてて、人だけじゃなく動物も、時たま虫や植物でさえも聞こえる。

 何もないはずのところや………、あと、悪魔とかね。」

悪魔…の声?


「ずっと小さい頃から聞こえてた。

 僕を気味悪がる親や人の声、利用しようと笑う能力者の声。

 殺してくれなんて僕に言う悪魔の声。

 まあ、慰めてくれるのも彼らなんだけどさ。

 動物とかは僕の話を理解してくれなかったから…」

何だか…、かなり聞いてはいけないことを聞いてる気がしてる。


もうバーネットさんの中では悪魔は、絶対的な悪ではないんだろうな。

「だから僕は言われるがままに悪魔を殺してきた。

 志桜しおう隆覇りゅうは…、あ、今のトップの親ね。ん?祖父母?まあ、どっちでも良いか。

 ブレディとかハリスとか…、みんな僕の事知ってて手伝ってくれた。

 ギールスは口で言うし、カミーユのことはホンット大嫌いだけど。

 でも…そういう友が出来て幸せだった。」


紅茶を持って、そこに沈む自分の顔を見つめた。

「でも…僕はそこまで導いてくれた悪魔を、殺し続けてた。

 僕にとって悪魔は必要なものだったんだ。

 悪魔が居なければとっくに死んでたろうし、悪魔が居なければ彼らとは出会えなかった。

 そうでなくとも、苦しむ彼らを救いたいと思う。

 ずっと思ってきたんだ。」

バーネットさんは、せっかく持った紅茶を飲みもせずに置いた。


その紅茶から視線をはずし、私を見つめた。

そして、やけにか弱い、か細い笑みを浮かべる。

「ごめんね。

 自分の事話すのは苦手で…

 だからさ、君が彼らのうち誰か一人でも、救ってくれたら。

 ううん。

 救いたい…だなんて思ってくれるのが、凄く嬉しい。

 友ですらそんなことは思わないからね」

いつか、してくれたら良いって言うことなんですね…。

悪魔にも…心の声があるんだ。

…だからこそ、救える……?

それなら人を襲うなんてことを…。


「それを聞いて良いのかい?」

バーネットさんは、もう知ってるんですね。…本当の事を。


イケシジノキアクとか言う、あの私達を襲った悪魔は言語を話して感情も…あったな。

………過去も見えた。


イケシジノキアクは、間違いなく私にとって悪だ。

如何なる過去が有ったとして礼人を傷つけたのは許さない。

でも、その罪の度合いは理由によると思う。

愉快犯ならホント許さないけど、少なくともそんな風には見えなかった。


…だから。

だから、私が悪魔を救うと言うならば……

例え、如何なる理由があろうとも

私は貴方を許さない

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