『君に刻まれた暗号』
「基本の説明は終わったヨ」
「それじゃあ終わりで…良いかな?
陽灯ちゃん。」
オペレーションルームにて、リーさん…じゃなくてイーサンと明石家さんの言葉に、私は首を横に振った。
「せっかくですから、決闘…じゃなくて、練習試合をしましょう。
組み合わせは私が決めて良いですか?」
イーサンさんと明石家さんは顔を見合わせてから、頷いてくれた。
一樹伊菜穂vs坂井苑
五十嵐風護vs岩瀬永徳
槌居友姫vs水野天莉愛
千々輪Dアルフレッドvs笠原心結
よし、こんなところかな…。
「綾雅くんは休みで良いのかナ?」
イーサンは、モニターに向き合いながら、そう言った。
「はい。
私の弟子なので」
本当はそこは関係ない。
単純に、綾雅の実力。
永徳でさえ、同等に戦うのは多分無理なんだ。
大判狂わせも良いところだ。
多分だけど、私も実力では負ける。
出せる手全て使えば、フェイントで三回くらいは勝てるけど…。
十番勝負なら、そこからは完全に綾雅のターンになる。
愛雅さんと泰芽さんの子で能力者だからっていうのもあるけど、綾雅はこと、生存…不利な状況で生き残ることに長けてる。
反射神経も、危機察知能力も鋭い。
絶対的とも見える力があるのに全く傲らないどころか…。
どんな大人になるのか楽しみである。
「これは…、何か法則でも?」
明石家さんに声を掛けられ、私は首を降った。
この組み合わせには何かデータ上の法則はない。
というか、普通部とか狙撃部すら見ちゃいない。
「パッと見た強さと相性別です。
全部勘なので、大外れする可能性もありますけどね」
言ってから、聞こえた音に扉の方を見ると、訓練室から移動してきた綾雅が居た。
そして当然のごとく私の隣まで来ると、ジッ…と水野さんを見つめていた。
確か…、二人は同級生だよね。
学校も同じ…だったかな?
ピー!
終了を告げるホイッスルにより、全試合が終了した。
「いやぁ、驚いたね。
天莉愛ちゃんって水の能力者だったんだ!」
うーん。
この二人は大外れしてしまった…かな?
友姫さんには悪いことをした。
水野さんの圧勝で終わってしまったのだ。
永徳と戦わせた方が良かったかもしれないけど…うーん?
win一樹伊菜穂vs坂井苑
五十嵐風護vs岩瀬永徳win
槌居友姫vs水野天莉愛win
千々輪Dアルフレッドvs笠原心結win
永徳は勝ったのにぶちギレてた。
ちゃんと見てなかったから、理由が解らない。
何でだろう?
「手を抜かれたんだろ」
後ろから聞こえた声に、私は色々納得した。
あの組み合わせは、私も五十嵐さんは水野さんより強いと思ったから、永徳と引き合わせたんだ。
でも五十嵐さんは何故か手を抜いた?
まあ、私と礼人の目が節穴ナだけかもしれないけど。
「うわっ、いつから居たんだヨ?」
永徳もそう感じてたみたいだし、私の勘は大正解だったわけね!
これで順位はハッキリした。
だからどうって訳ではないんだけど。
「シフト伝えたら、解散しよう。
良いよな?」
礼人の言葉に、私達は頷いた。
オリエンテーションを終え、数週間。
部下達の訓練を終えて、今日も今日とて、私たち班長組は反省会をしていた。
お酒ではなく、ジュース片手に。
さて、この数週間頑張って“先生”をやってみた感想は
「班長なんて…、分隊長なんて…
やっぱり向いてないんじゃないかなぁ」
と、私は深く溜め息を吐いた。
「正直、人にものを教えるなんて…
何をどうしたら良いのか……」
ああ、私が言ったんじゃないかと思うくらい共感します。明石家さん。
「「マイナス思考」ダヨネ」
「「思慮深いって言って」!」
互いにハモったことに、若干私たちは笑った。
少なくとも、リーダー組の関係は良好だなぁと染々思う。
「そんなに気負うことないと思うヨ
だって、先生は本職が居るんだしネ」
あー、懸憐さんとか泰芽さんとかのこと?
確かにそうだけどさ…。
「でもみんなは研修生じゃないんだよ?
俺たちは習ったけど…」
「それでもオレ達は先生じゃない、リーダーだ。
気になったことがありゃ言えば良いし、なけりゃ言わなきゃいい。
初めから教えようと思うから疲れるんだ」
そうなのかな…?
そうなのかなぁ…??
「まあ、確かに教えられることなんて、そんなにないかなぁ…?」
私がみんなに教えられるのって、戦い方くらい。
でもそれもあんまり教えてあげられないんだよねぇ。
パッとやってシュバッとしかさぁ…。
「言われたままに対応すれば良いんじゃね」
うわ。雑。
そんな感じで反省会(殆ど雑談)を続けていると、突然小隊室の扉が開いた。
「陽灯ちゃん居…居た!
ってかごめん澤田くん来て!」
あれ…、噂をすればなんとやら。
研修組のエッカートさんじゃなくですか、やつれてますね。
どうやら情報部は会計より忙しいらしい。
「オレ?」
「あのプログラミング言語、見たことないんだよ!
君、そういうの詳しいんでしょ?」
そうなの?
初耳だ。
っていうか、ぷろぐらみんぐ言語ってなに?
古語の一種ですか?
「…なら私も行きたいヨ!」
と、イーサンが言うと、ついでとばかりに明石家さんが口を開く。
「じゃあ俺も」
え、え?三人とも行っちゃうの?
「じゃあ私も」
何となく行こう。
「何でも良いから速く!」
何か珍しく焦ってるねエッカートさん?
「これは…少なくとも今朝の時点では、この世にないプログラミング言語だ。
コイツが自分で作ったと考えるのが自然だな。」
礼人がジッと見つめるモニターには、よく解らない英語とか棒とか記号の羅列が映されている。
「ええっ?!
ホントに?!
何とか解けないかなぁ」
エッカートさん言葉に、礼人は渋い顔をした。
「……コンピューターでも使えば解けるだろうが…」
そう言う礼人の顔は、文字の羅列を目で追うごとにどんどん渋くなっていく。
どうやら難しいらしい。
「いや……、コンピューター解析しても、これ解けないヨ。」
イーサンの言葉に、礼人以外の全員は眉を潜めた。
驚かないってことは、どうやら礼人も、解けないかもしれない…と思ってるみたいだ。
「これは暗号ダヨ。
正しいプログラミング言語に、有っても意味のない文字をいれている。
正しいプログラミング言語が解らない以上、私達にこの暗号は解けないヨ。」
「そして、意味のない文字が入っている以上、
解析するのは…難しいだろう。」
要するに…、解けないってこと?
駄目じゃん!
「……」
すると、イーサンが目を見開きながら前へ進み、画面をジッと見つめた。
その目はスルスルと下に進んでいく…。
まるで…、見覚えがあるような。
そしてたまに
「AN」
とか、単語を呟いていた。
私は閃いて、それを聞き逃さないよう全部覚えた。
やがてイーサンが全部読み終わったのを確認して、私はそれを文にした。
「angel ten」
そして…日付。
「…なるほどね。」
…天使 10 あと日付?
どゆこと。
「これは…あの工場地帯に居た悪魔教宛のものか。」
……あ!
有栖さんが捕まってたところ?!
「えぇぇ?
あのとき、人数も日付もバレてたってこと?」
解ってた上で堂々と待ってたって言うの?
「その人達は囮だったのか…
それともアンゲルス隊員を倒せると、本当に思っていたのか…」
「どっちにしても、お前が襲われたのはそのせいか」
お前って私?
…ああ、なるほど。
人数が解ってたから、あの場に居たのは私だけと踏んで…。
ああ。
「だから人質があんなところに。」
別に全員倒すつもりは端からなかったんだ。
市民を助けるために、一人だけ溢れた隊員を殺すのか、それとも拉致するのか。
あの状況なら…どっちだろう。
殺してGEMだけも有り得る…、けど、誘拐の方が利用価値は高いかな。
確かなのは、ジニアさんと言う人がいなければ、私は無事では居られなかったということ。
すると、エッカートさんはフッ…とモニターを消した。
「過去を気にしても仕方がない。
それより、どうして君はこれが解読できたんだい?
今、ここで解いているのを見た以上、
解析した内容が偽物とは思わないけどねぇ?
どう考えたって…怪しすぎるよ」
イーサンが怪しいってことはないけど。
確かに、礼人がこの世にないって言う、そのぷろぐらみんぐ言語を、どうしてイーサンが知ってるのは気になる。
「これ作ったの私だ」
な…、なんか急にキリってしたねイーサン。
ヨ。がないだけなんだけど。
まあ知っている理由なんてそれしかないよね。
「はぁ?!!」
「えぇ?!!」
…礼人とエッカートさんの驚きっぷりから見ると、ぷろぐらみんぐ言語って言うのを作るのは難しいらしい。
ってことは…
「…世界でこれを知っているのは私と……」
これはイーサン一人で作った訳じゃないんだ。
「この犯人、私に探させてくれヨ!」




