『愛をうたって』
まず私たちの班の自己紹介を終わらせた。
次に、私と同じ分隊のリーさん班。
何でリーさんが分隊長じゃないんだろう…、不服だ。
「李 イーサン、イーサン班の班長ダヨ。
通信部だからオペレーションは任せてネ!
今年から大学院に入るから、私が一番お姉ちゃんだネ!
みんな、どーんと頼ってくれていいヨ!」
ちなみにその大学院は文系と理系どっちなんだろう。
…文系かな。何となく。
「同じくイーサン班の、五十嵐 風護です。
普通部で、中学二年生です。
よろしくお願いします。」
爽やかで穏やかそうな雰囲気イケメンの少年は、第玖期。
部下でありながら先輩だ。
関係ないけど。
次は言わずもがな!
我らが弟子!じゃなくて、我が弟子!
「火砕 綾雅。普通部。中一。」
んっ…んんっ。
そうだ。
綾雅って他ではそういう子なんだった。
…しかも何でこっちに来るの?
あ、私の横で落ち着いた。
貴方の班長はあっちだよ!可愛いけど!
はい。次。
「オレだな。
えーっと?礼人班班長で澤田分隊の分隊長の澤田礼人だ
狙撃部で大学2年。
あ、あと、オレはロリコンじゃない。」
お兄さんねぇ…、そうやって言う人ほどロリコンなんですよぉ…。
でも今のところ、礼人をロリコンだと思ったことはまだないよ。
ストーカー気質だとは何度も思ったけど。
あ、なるほど。
自分の班の隊員が幼女しかいないのね。やーいロリコン。
「笠原 心結。普通部で小学6年。
それなりによろしく。」
…あ………。
ココロちゃんかぁ……。
同じ小隊だった笠原心助さんの妹さんだ。
兄妹でアンゲルス隊員とは…。
なんか知り合いばっかりだなぁ。
次の子も。
「一樹 伊菜褒!
普通部の小学四年生!
しょーがないから、よろしくしてあげる!」
いつもながら小さいけど大きい…。
アンゲルスに入れる最小年齢な彼女だけど、その態度は海より大きい…。
いや、本当に態度だけ。
愛雅さんと泰芽さんのご友人の娘さん。
お金持ちな上に、有名人の知り合いと言うことで、こんな風に態度がでかい…。
っていうのは、強ち間違いではないけど…。
「俺は明石家 瀧。
澤田分隊、瀧班の班長だよ。
大学三年生で工学部。
戦闘には明るくないけど、GEMとかの事なら任せて!」
多喜本さんが居なければ普通に良いお兄さんですよね。
好きな子はいじめたくなっちゃうタイプですか?
嫌われますよ。
次の人みたいに
「岩瀬 永徳。
高校2年の狙撃部…………」
………あ、終わり?!
何を言おうか考えたものの、特に思い浮かばなかったらしい。
とりあえずよろしくって言って置けば良いんだよ。
「水野 天莉愛!
将来は五十嵐 天莉愛になります!」
え、五十嵐って綾雅と同じ班の…?
「ならないよ。」
あ、ならないんだ。
変わらぬ微笑みを見せながら、五十嵐さんはそう言った。
でも天莉愛さんはそれをまるで意に介さず、続けた。
「中学一年生で、普通部です!
結婚式には招待しますね!」
「しないよ。」
それは結婚式を?招待を?
「千々輪 D アルフレッドです。
小学6年生で普通部です。
よろしくお願いしますね」
最後にしてやっとの常識人…。
ごめんね。
あんまり手を掛けてあげられそうにない…!
小隊ともなると自己紹介だけでこんなに時間が掛かるのね…。
考えてみれば、去年は同じ分隊だけで自己紹介してた。
「あと、小隊長に弥扇 神夜さんだな。
見掛けたら挨拶くらいはしとけ。」
ああ、そうだね。
隊によっては、小隊長自ら指揮することもある。
けど、神夜さんは基本的に放牧だから…。
そのくらいで良いかな。
シフトの管理は最初は予め貰ってあるらしい紙で、あとで佐久間さんのところに行けば良いとして…。
「えっと、まずGEMの扱いと、訓練室を案内しますね」
私がそう言うと、明石家さんが微笑んだ。
「GEMの説明なら俺に任せて」
あ、そうですね。
工学部って主にGEMを扱ってるんだよね…。
それなら、任せよう。
「オペレーションルーム借りるから
そこから教えるヨ。」
あ、訓練室まで…。
山積みかと思っていた仕事が一気に減った。
「じゃ、俺と愛本で佐久間んとこ行くか?」
ああ、シフトのことだね。
確かにそれでも良いんだけど…
「…交代の方が良いんじゃないかな?
一応」
私も多少なりとも皆の実力をみたいし、形式上分隊長一人は居た方が良いと思う。
何か不測の事態が起こるかもしれないし。
「解った。」
と言うわけで、私が先に佐久間さんのところに行くことになった。
シフトは会計部の人たちが、それぞれ小隊毎に考えてくれている。
佐久間さんは神夜小隊と、あと煌小隊って言う所の担当。
「失礼します」
部屋に入ると、山積みの書類とにらめっこする佐久間さんが居た。
会計部は情報守秘のために、基本一人部屋だ。
すると、佐久間さんはぬっ…と顔をあげた。
お疲れ気味のようですね…。
「…ああ、陽灯ちゃん。
シフトだよね、ちょっと待ってて貰える…?」
と言いながら佐久間さんが指したのは佐久間さんがいる机横の、キャスター付きの椅子だ。
そこまで急いでもないので、私はお言葉に甘えて座った。
会計部って忙しいんだなぁ。
他の所はどうなんだろう。
エッカートさんの居る情報部とかは想像つかないなぁ
「アイツは?」
話し掛けれて、驚いて佐久間さんを見たけど、全くこちらを見ていない。
どうやら話ながら手を動かせるらしい。
佐久間さんがアイツ何て言う言い方をするのは、私が知る限りでは一人。
「私と交代で来ますよ」
礼人しか居ない。
「ああ…、君の差し金だね」
と、佐久間さんはちょっと困ったような顔で言った。
私にそれを答えるつもりはない。
私は作業スピードが落ちてないのを確認して、今度は自分から話しかけた。
「そう言えばこの前、
佐久間さんや礼人より、将棋が上手い人に会いましたよ」
会いました…と少し濁すようにいったけど、もう何度も会っている。
将棋はもちろんのこと、何故か一緒に出掛けたりもする。
甘いものを食べに行ったり、アクセサリーだの服だのを買いに。
乙女か。
佐久間さんはふと手を止め…そしてまた動かした。
「それは興味深い。
是非一度、手合わせ願いたいものだね。」
佐久間さんが少し興味を示したようなので、私はニヤッと笑った。
「ストーカー1号です。」
私の言葉に、佐久間さんは吹き出して、慌てて書類が汚れてないか確認した。
汚れてないことを確認し、佐久間さんは私へ向き直った。
「前言撤回。
君も大概危なっかしいなぁ…」
そう言いながら、佐久間さんは私の頭を撫でた。
心地い大きな手を受けながら、私は少し眉を曲げた。
私の信用が失われてしまいました?
けど永徳も人畜無害そうって言ってたから、少なくとも樋口さん本人は好い人だと思う。
…うん。間違いないな。
何てったって自他共に認めるヘタレ、そして乙女なんだから。
「よぉ」
礼人の少し不機嫌そうな声に、涼は少し嬉しそうに笑った。
「やぁ」
礼人は山積みの書類と疲れた顔をしている涼を見て、深く眉を潜めた。
「会計ってのは、んなに忙しいのかよ。」
そう言いながら礼人は、勧められても居ない椅子に座った。
「あはは。
そんなに疲れてるように見えるのかい?」
「ああ。」
礼人は短く、そう断言した。
あまりにハッキリした返答に返す言葉が見つからず、涼は少し目を泳がせてから憂い気味に口を開いた。
「…心配事が有ってね」
礼人は椅子から身を乗り出して、厳しい顔をした。
「心配事?なんだ?」
涼は悲しげな溜め息を吐いてから、言葉を紡いだ。
「実はね…、僕の大切な人が全然自衛をしてくれないんだ。
自衛どころか、自ら危ない方に向かっているような気すらする。
酷いと思わないかい?
僕はこんなに心配をしているのに…」
涼は悲しげに眉を曲げ、また溜め息を吐いた。
その悲壮感溢れる雰囲気は、さながら未亡人だ。謎の色気がある。
すると礼人は深く頷いた。
「ああ、全くその通りだ!
しかもアイツは、オレが心配してるの解った上でそうするんだ!」
礼人の思い浮かべる相手は完全に愛本陽灯。
「はぁ……」
そうなるだろうとは思ったが、本当にそうなったことに、涼は呆れて溜め息を吐いた。
「ちょっと耳貸してくれる?
その相手はね…」
愛本に決まっているだろう?と礼人は眉を潜めたが、涼がしつこく手招きするので、礼人は仕方なく耳を貸した。
涼はまた深く溜め息をついてから、
「君だよ!」
と、デコピンを喰らわせた。
あんまりにも礼人が呆けた顔をするものだから、涼はまたしても吹き出してしまっていた。




