『最初で最後の最高な小隊』
2031年。
今年もまた新入生がこのアンゲルスへ入る。
すると私たちもアンゲルス二年目に。
更に幹部候補の私たちともなれば…
「第十回昇級試験。
筆記テスト始め!」
C級からB級へ昇給するためのテストがある。
入隊試験のときは、ほぼ一般常識さえ解っていれば合格できた。
満点となると、大分コアな事まで知ってないと無理だけど…。
昇級試験からは一般常識は既に持っているものとして、アンゲルス特有の呼称や制度。
そして法律。これが何より重要。
B級隊員になると、ひとつの隊を持てるようになる。
だから基本的な法律くらい覚えてなきゃいけない。
あとは…サービス問題でアンゲルスに関する歴史とかもあるね。
解らない人にとっては難問過ぎると思うけど。
能力が初めて人に現れたのは何年か…これなんかは難問だろうね。
普通なら、血桜月下戦災の2014年かな?と思うけど、違う。
それはあくまで世間が認識した年であって、人に現れた年じゃない。
人に現れたのは、もうずっとずっと前。
大体1500年くらい前で、1018年の3月18日。
これだけ前のことなのに日にちまで残っているのは、何代目かの神皇が即位した日だかららしい。
(というわけで、1018年…っと
日付も解るけど、蛇足でバツ打たれたくないし。)
あと察しのいい人なら気づいたと思うけど、2031引く1500年じゃ、どう考えても1018年にはならない。
むかーし、今から100年くらい前。
1900年以前の人類は、まるで機能していなかった。
500年前に、大陸をも殺す大きな大きな戦争があったから。
その戦争が大きすぎて、その頃に芽生えていたはずの文化がほとんど潰れた。
昔は民族とか国ごとに容姿の違いとかがあったらしいけど…。
今はそんなもの全くない。
何故起きたかも解らない、その大きな戦争が残したのは…。
いや、何も残さなかったのか。
「どーせまた満点なんだろ?」
テストが終わると、まるで疲れが見えない礼人にそうニヤニヤしながら言われた。
…最近気づいたんだけど、私以外の研修生のメンバー。
一人たりとも勉強してない。
そんな暇があるのなら、自分の好きなことに没頭したいらしい…。
暇なときにパラパラ読むだけで、あの人たちは合格してしまうのだ…。
恐ろしい子…!!!!
「まあ、間違ってはないと思います。
……一問ずつズレてないでしょうか。」
漢字のボンミスとか?
あっ、もしかして名前書いてなかった?
隊員番号間違え
「お前変なとこでマイナス思考だなぁ…」
「思慮深いって言って!」
あとは、それぞれにあった実技試験。
私は普通部だから仮想の敵を仮想世界で倒すだけ。
普通部は敵を全部倒せばいいだけだからともかく、狙撃部とか暗殺部は大変そう。
狙撃部はどこまで遠くの敵を狙えるのか。
暗殺部は隠れている相手をバレないうちに倒さなきゃいけないらしい。
他の部隊もそんなかんじ。
………あ、嘘です。違いました。
「うわぁぁぁぁあ」
普通部も大変でした!!!!!
あ…、死んだ。
訓練室の個室ベッドで目を覚まし、私は深い溜め息を吐いた。
途中まではともかく、後半の敵はおかしい。
並みの悪魔より強い…っていうかあれ、ほぼ能力者じゃん!
明らかに戦略あった!可笑しい!
それでもなるべく粘ったけどさぁ!
最後のはどう考えたって勝てない!
能力が強すぎる!!!
にも関わらず、判定はS。
しかも君たちの世代は前代未聞だ!って、なんか褒められたしまった。
あそこまで行った人はかなり少ないらしく。
全世界のアンゲルスでも、この10年で百人も行ってないらしい。
この国の本部だけでも、毎年二万人くらいの応募が来ているはずなのに…
そんなこんなで礼人も…っていうか、同じ研修生だったみんなも軒並みSをかっさらって見事B級に昇格できました。
普通、判定はAAまでのはずなんだけど。
…高いならいっか!
その後、あんまり大袈裟にされても困るだろう…、と言う愛美さんからの気遣いにより、二人の隊長から頑張ってね!と、いつでも頼っていいからね!という言葉だけを貰った。
まあ、その気遣いもむなしく、結局個別で皆から似たようなことを言われた。
だったら一気に来てくれた方が楽…ではあるけど、凄く嬉しかった。
けれど、甘えてはいられない。
私はこれから隊長になるかもしれないんだから!
かもじゃなかった。
しかも、分隊長!
いきなり藤木さんと同じ場所に……。
いや、さっき覚悟を決めたばかりだ!
私は自分の隊に入るという、二人の男の子…ではなく男女を前に気合いを入れ直した。
「槌居 友姫だよ。
これからよろしくね、隊長さん。」
槌居友姫さん。
中学三年生で、今年入隊した新入生。普通部だそうだ。
ベリーショートと二重の格好いい見た目をしているけど、歴とした女の子らしい。
「駄目だよ友姫ちゃん…年上で隊長なんだから敬語使わなきゃ…」
「苑、煩い。」
そう友姫さんに煩わしそうに言われ、涙目になりながら私に向き直った。
苑…ちゃんと呼びたくなるくらい可愛い。
「えっと…坂井 苑…です。
よろしくおねがいします!」
坂井宛さん。
高校一年生で、私の一年後輩。同じく新入生で、狙撃部だそうだ。
友姫さんとは正反対の男の娘。
二人は知り合いだったみたいだね。
あまり仲は良さそう…、戦えるかどうかは見ないと解らないね。
初っぱなから大変そうな部隊だなぁと思いながら、私は二人へ笑顔を向けた。
「これから貴方達の班長かつ分隊長になります。
愛本陽灯です。
こちらこそ、よろしくお願いしますわ」
まあ、それは相手にとっても同じだと思う。
初っぱなから私が班長になるなんて、大変だね!強く生きろ!
しかし、本当のてんやわんやは此所からだった…。
班長、分隊長という地位になったことで、私たちには隊員室が与えられるようになった。
木寺班のときにもあったけど、あの班で活用されることは少なかった。
けど、せっかく貰った部屋だからね!
一年で私に色に染めてやる!!
というのも、隊員室は、それぞれの班の部屋と小隊の部屋二種類ある。
分隊長の部屋はないよ。
分隊単位での話し合いは、どちらかの班の部屋か、会議室で行う。
長方形の空間の壁側に班の部屋があって、中央に4つ、小隊用の部屋がある。
それが掛ける4で、16小隊分の部屋が一階につきあるのだ。
班の部屋は良いんだ。
けど、小隊室が……既にてんやわんや。
わーきゃーわーきゃー騒がしいったらありゃしない!
そりゃ人数も人数だからそうなるのも仕方ないけども!!
でも問題なのは、一番騒いでるのが
「澤田礼人分隊長…?」
なのが悪い!
アルコール入ってるんじゃないでしょうね?!っていうくらい楽しそうよ!
「おお、愛本!
何だよ遅かったじゃないか!」
本当に呑んでそうで恐ろしいわ…。
「リーさん、明石家さん…」
同じく研修生の天才共…。
バカと天才は紙一重とはよくいったものだわ。
「良いじゃない!
礼人くんも楽しそうダヨ!」
ああ……、リーさんも共犯なのね……。
「……ごめん」
良かった明石家さんはこちら側だわ。
「礼人!リーさん!
全く良く有りませんわ!
これからやることも、説明しなければならないこともあります!
さぁ、まずは自己紹介からです。」
若干シュン…とする礼人とリーさんを無視して、私は進めた。




