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アルカナの戦慄  作者: 三古谷
第三章 『Disciple』
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『氷のカルディア』

愛美班の自己紹介も済むと、全員GEMを出すように言われた。

そうは言われても、みんな胸元辺りに着いているし、私も耳に着いてるからGEMに視線を移すだけ。


「「「“発動”」」」

藤木さん、佐野さん、木寺さんが同時に唱えるとそれぞれのGEMが光を帯び、その光が全身を包んだ…!


やがてその光が止むと、隊員服に変わっていた。

元々隊員服だった人も居るので、見た目には解りにくいけど戦闘体へ換装したのだ。

アニマが全身を包むことで、身体能力や防御力がアップされる。


戦闘体はアニマが一定まで減るか、重大な損傷を受けることで自動的に解除される。

そうする前に迅速に撤退することが鉄則。

例え市民が居たとしても、自分が死ねば、その数も犠牲者に含まれるから。


すると、残りの三人…咲來さんと穂憐さん、そして…小河さんが何故か集まり…

「「「“変☆身”」」」

と謎のポーズを決めた。

例のごとく換装(変身って言った方が良いのかな?)はされるけど、なんか…。

いや、何でもない。良いと思うよ。

かっこいい!かわいいよ!!


「ん"んん!!」

と、礼人は大袈裟な咳払いをしてチラッと佐野さんを見た。

その視線を追って佐野さんを見てみると、満面の笑みだった。

…何で怖く見えるんだろう。


礼人はげんなりした顔をしながら、佐野さんと同じように笑う斉賀さんと並び

「「変身」!」

と、斉賀さんだけ元気に言った。

なんかすっごいやさられた感…。

ななみ班じゃなくて良かった………、と言いたいところだけど私なら元気一杯やれる自信がある。


もっとも、それは必要に迫られたらだけど

「“発動”」

礼人をニヤニヤした顔で見つめながらドヤ顔で唱えてやった。

するとイヤリングが強い光を放って私を包んだ。

あまりの光に揺れたイヤリングを押さえながら、私はやっぱり違和感を覚えた。


何でこんなに光るの…?

前までは…もっと。

淡いとまでは言わないけど…。


違和感を感じながらも、考えてもわかるわけではないのでスルーする。

気を取り直して、あとは岩瀬さんだけ…と見てみたけど、既に換装してたらしい。無言で。


あと礼人に突然蹴りをかまされた。

理不尽だね!


「それじゃあ、狙撃チームは狙撃チームでよろしく~」

藤木さんは眠そうな顔をして礼人にひらひらと手を降りながら去っていこうとした。


言われた礼人はハッと我に帰って藤木さんの肩を掴んだ。

「…いや、投げ遣りすぎないか?!

 オレも新入生なんだが!」

…あ、そっか。

狙撃部スナイパーって礼人と岩瀬さんしか居ないんだ。

当然のごとく、二人とも新入生。


「って言われても私ら普通部ナイフだもん。

 狙撃部スナイパーの勝手なんて礼人よりずっと知らないよ。

 ってことで…信じてるよ」

と、何故かイケボで礼人に囁き去っていってしまった。

木寺さんもそれに続いたので、本当に二人だけでやるらしい…。


「マジかよ…」

藤木さんの言う通り、狙撃部スナイパーについて一番知ってるのは礼人だ。

研修生のときに習ってるはずだから。

私も礼人なら何だかんだ言いつつ大丈夫だと思うよ。

ファイト!


そう心の中だけで応援しながら、愕然とする礼人を横目に木寺さんへ付いていった。

心配なのは岩瀬さんだ。

礼人が教えるしかないだろうけど…大丈夫かな。



『侵入者です。』



GEMから聞こえたこの中の誰でもない声に驚いたけど、それがĀryaだと解って納得した…

と、同時に緊張が走った。

おそらく、全員。


いち速く声を出したのは藤木さんでも木寺さんでもなく、礼人だった。

「岩瀬…だったか?

 行くぞ!」

名指しで呼ばれた岩瀬さんは、礼人の顔を見て驚いた顔をしながらも、すぐに頷いた。

そのまま二人で近く廃墟へ走っていった。


アンゲルス敷地内には今はもう使われていない、ビルや建物が多くある。

多分、建物や物陰から狙うつもりなんだろう。


「態々、正門から来たみたいよ。

 どうする?ななみさん。」

どうやら木寺さんは真っ先に敵の現在地を探していたらしい。

アンゲルス敷地内全体が柊家の結界の中だから大体の位置は特定できる。

場所によっては防犯カメラもちゃんとあるし。


藤木さんは腰元にある鞘を持ち上げたり放したりしながら口を開いた。

「そうね…

 二手に別れて挟みましょうか。」


「了解。」

二人の班長から結論が出ると、全員は早々に動き出した。

私と斉賀さんもそれに遅れないよう、それぞれの班に付いていった。











戦闘体に換装しているせいなのか、体がかなり軽く思える。

実際に軽くなっているのかもしれないけど、筋力や体力が上がってるのが一番の理由だと思う。

そのお陰で息切れすることなく走り続けられる。

「この先、敵6名。

 三手に別れ、うち2名来ます。」

咲來さんは走りながら木寺さんに向かって告げた。


「陽灯 穂憐、残って」

木寺さんの指示に、私は勢いを殺すために軽く跳んでから足を止めた。

穂憐さんもザッと音を立てながら足を止める。


木寺さんと咲來さんはそのまま走り去り…

その向こうから敵二人が迫っている。

「―氷よ、行く手を阻む障壁となれ―」

穂憐さんがそう唱えると大きな氷のつぶてが出現し、先に見える対象と走り去る木寺さん達との間にドンッッと大きな音を立て壁を作った。


私は先に見える対象を見据え、鞘から細剣を抜こうとして…自分が僅かに震えているのに気づいた。

相手は悪魔ではなく人間。

悪…じゃない、人間だ。

だとしてもアンゲルスの敵であることには違いない。


「前も言った通り、血を見ることはない。

 僕らと同じさ。」

驚いて振り向くと、穂憐さんは自分のGEM…水色のチョーカーを指差した。

再び前を見据え、私は対象二人にそれぞれ色の異なる腕輪が付いているのを見つけた。


「なるほど…」

私はゆっくりと…そして冷静に鞘から剣を抜き取った。

要するに彼らを傷付けたところで血は出ず…生身に戻るだけ。


あの二人が着ける腕輪…、GEMのような宝石はリリィー・カリスが入手してしまったものか。

それとも自ら造ってしまったのか。


どちらにしても…

「あれを壊せられれば一番良いん…で、すわよね?」

言っておいてちょっと不安になってしまった。

壊すと枷さんに何かあったり?

持ち主に何かあったり?

回収した方が?


「壊すのが一番良いよ。

 壊せなくても仕方ないけどね。

 捕縛とかは他の隊がやるから…、僕らの任務は撃破さ。」

分かりやすいな説明ありがとうございます…、小学五年生…。

まあ、要するに戦えば良いわけか。

血もでないから。


…どうやら相手もやる気みたいだしね。

片方の人がGEMを剣に変えた。

剣士と…何だろう銃なのかマターなのか…。

GEMの色からして剣士は木で、もう一人は………ん?

解らない。

あの色は異端でもない。

それに良く良く見たら剣士のGEMの色も…アンゲルスの物より深いようにも…くすんでいるようにも見える。


チラッと穂憐さんを見た

「僕にも解らない。」

うーん…、穂憐さんも解らないそうだ。


でも解らないからといって、いつまでも睨み合ってるわけにはいかない。

まだ四人は敵がいるはずだから。

「…では先に行きます。」

私は右手に持った剣の先を後ろへ向けたまま、剣士の方へ走り出した。

横のもう一人の敵にも注意しつつ、剣士の元まで辿りつくと

「ふッ…」

右下からそのまま剣を振り上げた。

想定外の角度の攻撃だったのか、剣士は足と腕に傷を負った。

致命傷は避けたものの普通なら大きな傷。

…が、確かに血は出ない。


その代わりに光のようなもが宙へ舞っていっている。

アニマだ。


中々に幻想的な見た目で、私だけでなく相手も見惚れていた…。

だが私はすぐ我に返り、剣を構え直した。


「…」

そして私より反応が遅れてしまった敵を見て。

私は知った。

これを見るのは初めてなのだと。

実戦に関して彼らは初心者なのだと。

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