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アルカナの戦慄  作者: 三古谷
第三章 『Disciple』
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『藤木分隊』

「言うまでもなく、俺は戦える。

 戦えない兵士なんて有り得ない。」

木寺さんの問いに岩瀬さんは固く、鋭い表情でそう言いきった。

その言葉の深さまでは解らないけど、言ってる内容事態は正しい。正論。

戦わずして、何が戦闘員だろうか。

背後の守るべき誰かを守れなくては意味がない。


けれど、その目の前に立っている相手を…血の通う…生きている相手を…命を、奪えるだろうか。

到底、恐ろしくて出来ない。

想像するだけでも…恐ろしい。

剣が触れた肉の感触、その肉に剣が沈み込んでいき、やがて赤い血を流す。

相手は当然痛がる。

痛い。痛いと叫ぶ相手。

その声を聞きながら、なおも剣を沈める。


ああ……、立場は逆だが痛くて仕方がない。

結子さんもこうだったのかな…。

「単純な話だ。

 無抵抗で自分が、市民が、家族が殺されるのを待つか。

 それとも、剣を取って戦って相手を殺すのか。」

果たして…本当にそんな単純な話なんだろうか…。

現時点でさえも、敵と味方の2つだけではないというのに……。


でも、岩瀬さんの言う通り、今の私は1、隊員、兵士。

何かを考えることは出来ても、実力も権力もない私には選択することはできない。

なら…今は隊員としての答えを導きだそう。


そこまで考えて、フッ…と笑みが浮かんだ。

そんなことは最初から決まっていた。

このGEMを着けたときから、

アンゲルスに足を踏み入れたときから

帆凪様に命を助けられたときから…


待ってなんてやるものか。

少しでも強くなる。

後ろに居る人も…、そして前に居る人のことも少しでも思えるように。


「よく解ったわ。」

木寺さんは笑みを浮かべていた。











アンゲルス建物内から外へ出て少し歩いた先の…平原。

後ろにはアンゲルスが、前には放棄された家々が見える。

その更に先の門の向こうに市民たちは居る。

「さて、早速だけど武器を出してもらえる?

 ……解るかしら」

私はもう慣れているので、耳にあるイヤリングに手を翳し、小声で『“発動”』と唱えた。

するとGEMは瞬く間に強い輝きを放った。

あまりに強い光に戸惑ったが、剣へ変形していくGEMを追って左手で掴んで右手へパスした。

イヤリングの時はとても軽いGEMだが、武器へ変換されると途端に重さを持つ。

この方がやり易いから良いんだけど、重さはどこから来てるんだろう。


…っていうか、さっきの光なに?


「……発動?」

何故か疑問系で唱えた岩瀬さん。

GEMは光も纏わなければ変形もしない。


「…………壊れてんのか。」

なわけない。

そもそもGEMに壊れるとかあるのか。


「言葉は関係ないのよ。

 重要なのは意思。

 変形させたい形を強く思いながら言ってみて。」

木寺さんの言う通り。

マターを使うときと同じように、言葉は安定させるための補助にすぎない。

大切なのは意思。考え。感情。

重さはそこら辺から来てるのかな。


「………」

岩瀬さんが無言のままでGEMを睨み続けていると、次第にGEMに光が点り…

次の瞬間、GEMは光輝きスナイパー銃へ姿を変えた。


「…そういうことか。」

何かに納得した岩瀬さんは銃のスコープを覗き込んで家の方に向けた。


「試し撃ちして良いか」


「どうぞ」

木寺さんは笑みを浮かべていった。

建物内でのGEMや能力の使用は基本的に禁止だけど、外でなら一向に構わない。

むしろ、外で訓練をする人も居る。

もっとも、あまりに壊されても困るからセカイの訓練室があるのだけど。


ふぅー…と岩瀬さんは深く息を息を吐いた。

そして再び息を吸うと……、呼吸が止まった。


バンッッッ!!!!


重く煩い音を鳴らしながら、弾丸は飛び出した。

その弾丸は一軒の家の…窓を貫いた。

「惜しい。

 外れですね。」

と、咲來さんは言った。


「チッ…」

恐らく岩瀬さんは窓の向こうにある“何か”を狙っていて、咲來さんはそこから弾丸が外れたのが見えたんだと思う。

さすが、千里家の血を引くもの。


「ガラスで軌道が変わってしまったようです。

 それがなければ当たってましたよ。」

咲來さんが言うのなら間違いない。

どうやら岩瀬さんって結構強いらしい。

…今日入ったんだよね?


「何を狙っていたの?」

木寺さんは咲來さんに向かって聞いた。

確かにそれは気になる。

この距離からなら大きめの人形とか狙えていればかなりすごいと思う。

何せ、人形が有るような部屋なのかすら見えない。


「ピア…あ、イヤリングですね

 先の宝石を狙ってました。

 …このくらいの」

と言いながら咲來さんが指と指で示した大きさ…。

一センチもあるかないかくらいだ。

確かにイヤリングならそのくらいの大きさだと思う…。


けど

「え、それを狙ってたんですか??」

馬鹿なんですか?とちょっと言いかけた。

何でそれが当たると思ったの?

え?何が凄いとそうなるのか解らないけど、一周回って頭可笑しい。

何でそれ狙おうとしたの???


「凄いわね」


「うん。凄い。」

と、木寺さんと穂憐さんは岩瀬さんを褒めた。

うん。そうだね。凄い。

ただただ凄い!

私じゃ絶対に無理だ。

…今日入ったんだよね??


「何処が凄い。

 当たってなければ意味がない。」

そこは素直に受け取ろうよ。


確かに大幅に外れていたら、それは凄くはない。

けれど、ガラスがなければ…つまりは障害物がなければ当てられると言うことだ。

普通に凄い。

普通、障害物がある状況じゃ打たない。

ガラスはレアケースだけど、相手が射程範囲内に来るのを待ち続け、“その機”を逃さないのがスナイパーだと思う。

少なくとも私の仲間はそうあって欲しい。


何て言うか、岩瀬さんの考えはあまりに合理的で論理的で単独思考ね。

別に悪いことでは決してない。

むしろ時と場合に依ってはとても良いことだ。

良いこと………なんだけど…


合わないわぁ……。


「そうかしら?」

木寺さんがそう言った直後、腕時計…型の端末が鳴った。


木寺さんは腕時計をタップしてから、そのまま画面を見つめながら口を開いた。

「ま、私はスナイパーじゃないから確かなことは言えないけど…。

 当てるだけが射手の戦い方ではないと思うわ。

 そうよね?」

木寺さんは私達以外の“誰か”へ同意を求めた。


「オレもそうだと思うよ」

聞きなれた声に吃驚しながら振り向くと、そこには案の定礼人と…複数人の別の姿があった。


「あれっ?!

 二人とも知り合いなのぉ?」

そのうちの一人がニコッと笑みを浮かべながらそう言った。


すると何故か礼人はビクッと震え

「えっ…え、えぇ……まあ…」

と、その人から全力で目を反らそうとしながら答えた。

…けど、その人は追いかけ回している。

女…いや、男……いや、女の子?ん?解らん。

女の子だと思っておこう。


「ああ、みかんちゃん。うちらは大学が一緒なの。

 さてさて~、ななみ班の皆さん。

 新しく入った愛本陽灯ちゃん。普通部ナイフ

 岩瀬永徳くん。狙撃部スナイパー

木寺さんに紹介され、私は慌てて頭を下げた。

岩瀬さんも軽く会釈をしていた。


木寺さんと礼人は大学が一緒。

ってことは、同い年なんだ。わぁ先輩が二人も。


「うちからは斉賀サイガ 遊戯ユウギ普通部ナイフ

 澤田礼人。狙撃部スナイパー

 小学生と、大学生ね」

と、一人の女性が二人を紹介した。

ってことはたぶん、その女性が藤木さんっていう人だと思う。


「いや、違う藤木さん。

 …俺もう中学生……。」


「あっ…、ごめん」

えっと、斉賀さんは小学生じゃなくて、中学生だったんだね。

まだ成長期だもんね!

強く生きろ!


「私は藤木フジキ ななみ。一応、藤木分隊の隊長で普通部ナイフ

 こっちの女男が佐野サノ みかん。みかんくんとか呼ぶと鬼のように怒る看護部ナース

 こっちの明るいノッポが小河オガワ 大陽タイヨウ。暑苦しい、大きい普通部ナイフ

 この五人でななみ班をやってるわ

 よろしくね」

微笑んだ藤木さんに私はちょっと安心しながら、会釈をした。


それから木寺班からの礼人や斉賀さんに対する自己紹介を一通り終え…私はあることに気がついた。


……………あれっ?!

私と礼人って同じ分隊なの?!

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