『2030年4月1日』
そうして、2年前の4月1日へ戻る。
私は首席で最終試験…そしてアンゲルス入隊試験に合格できた。
…まあ、首席だからと言って他のみんなより頭が良い訳じゃないのは解ってるけど、でも一位!っていうのは、やっぱり嬉しい。
ちなみに、受けていない天都さん以外も全員合格。
まあ、合格見込みがあるなかで、更に優秀な人が入るのがAクラスだからね。
当たり前と言えば当たり前なんだけど、安心した。
夜明け前、礼人と共にアンゲルスへ来た私は、アンゲルス本部…ではなく、同じ土地にあるマンションのような大きな建物を見上げていた。
そこまで着いてから、やっと私は礼人を見た
「…礼人も寮暮らし?なの?」
このマンションはアンゲルス隊員の寮。
とんでもなく大きい。縦もそうだけど横が…。
更に目に見えるだけではなく地下もあったりして…ヤバイね。
まあ、隊員のための寮だけど、市民のシェルター的な役割もあるから、解らなくもない。
そんなだだっ広い寮に私が住むのは当たり前。
それが目的ってとこもあるから。
けど…、礼人まで寮暮らしなのは意外。
アンゲルスは聖真市以内に住んでれば寮暮らししなくても良い。
それに支部もあるから市内に居なくても支部所属なら許可される。
「ああ…。
まあ、もう大学生だしな。」
………そうでした先輩。
今年からやっと私が高校生になったと言うのに、礼人も晶にぃも大学生になってしまった。
全く。
何故待つことができないのか。やれやれだぜ。
とか考えてたらまたデコピンされた。もう突っ込むのも飽きたよ。
さて、5つもあるエレベーターの一つに乗り込み、4階のボタンを押す。
ポーンと、音がなり4階に着く。
出る。
礼人も出る。
…気にせず進む。
部屋に着く。
何故か礼人は隣の扉の前で止まる。
「……え、寮ってもっと男女別れてるもんじゃないの?」
何で隣同士なの??
実際に入ったことはないけど、学校の寮とかもそういうイメージだよ?!
他の寮ってあんま知らないけど…。
普通は男女別れてるよね!?
「まあ…、仮にマターが遺伝するとして
アンゲルスの能力者不足を考えたら…」
「え?何か言った?」
ボソボソと礼人がなんかいった。
新手の病気かな?
咲空さんなら何とか治せるんじゃないかな。
礼人は何故かシラーっとした目で私を見て、
「……いや、何も。」
とフイッと目をそらした。
いつも私の考えてることが礼人にバレるのは、こう言うとこかな。
嘘付いてるのだけは解る。
そういえば……、私も訓練室で、礼人から目をそらしたな…。
あの日、訓練室から出たとき、何ですぐ出てこなかったと怒鳴れて…
私はとても驚いた。
礼人が叫んだからじゃない。
“すぐに出たはずだった”からだ。
私が思い違いをしてたのか
システム異常なのか
それとも礼人が…
そこまで考えて、私は苦笑いを浮かべた。
また怒られる気がしたけど、問い詰められても困るので、前を向く。
さぁ、ここから始まる新生活!って奴だ。
横目にチラッと礼人も、扉に向くのが見えた。
意を決し、私はドアノブに手をかけたー
「だぁーからぁ!!!!
何度言ったら解るんですか!」
叫び声がしたと共に、私の体は後ろへ退いていた。
次の瞬間バンッ!!!と案の定、勢いよく開けられた扉に、私は深く溜め息をついた。
もう少しでペラペラになるところだった。危ない危ない…。
「って、うわ!
え?え?
……侵入者!!!!」
目の前の女の子がそう言うと、親指に嵌められた指輪が青色に瞬き、一瞬で…スナイパー銃に?!
すると、女の子の後ろから、私と同い年くらいの女の子が来て、年下の女の子にチョップした。
「ッ!
何するんですか!」
「近距離に居る敵にスナイパー銃で戦うとするなんて有り得ない。
まずは下がって近距離の味方…この場合は私かニコを呼ぶべき。
あと、そいつは侵入者じゃなくて新入生。」
何か、私が敵か味方かは、ついでとばかりに言われてしまった。
…ま、まあ、本当に私が敵だったら命の危機だもんね…ウン。
すると女の子は混乱したように首をかしげてから、驚愕を目に表した。
「新…入生……?
聞いてないんですけど?!?!!」
聞いてないんですか?!!
アンゲルスの寮では、C級隊員とB級隊員は共同で暮らし、そしてA級とS級には個室を、また望めば共同で住むのも許可される。
C級とB級が共同なのは先輩が後輩に色々教えるためだ。
そしてアンゲルスにおける級とは、普通の軍の階級を解りやすく4つに別けたもの。
本当はもっと細かくあるけれど、ここは殆ど学生なので、簡易になってる。
まず私達
C級隊員。共通呼称は士で、アンゲルスでは異士。
B級隊員。共通呼称は曹と准尉で、アンゲルスどは異曹と准異尉。准尉異は“い”が並んで呼びにくい上に、微妙な立場でA級とされることもある。
A級隊員。共通呼称は尉官で、アンゲルスでは異尉。いい。呼びにくい。一般人がなれる最上の階級。
最後に
S級隊員。共通呼称は佐官で、アンゲルスでは異佐。いさ。全部言いにくいわ。これはレジティーマや、カルディアと言った能力者の中でも更に強いものにしかなれない。
故に私の目の前にいる人たちの誰かは必ず先輩のB級かC級だ。
「聞いてないって…。
言ってないもの。当たり前じゃない。」
「いっっ……てくださいよ!!!!」
うん。そうだね。まずはそこ。
当たり前って。当たり前てて。
確かに言われてないなら、聞いてないのは当たり前だけども。
名前が解るまでは不憫ちゃんと呼ぼうか。
「愛本陽灯と申します。
今日から、お世話になりますわ」
と、笑みを浮かべお辞儀した。
「あっ…、これは御丁寧に…。
百瀬 律と申します…」
あら、不憫ちゃんと呼ぶ機会はなかった。
不憫ちゃんの名前は百瀬さんというそうだ。覚えた。
よろしくね、不憫ちゃ…百瀬さん!!!!
「天宮ジゼル。B級。
よろしく」
手を差し出されたので、反射的に握手かな、と手を握るとそのまま手を引かれ、何故か抱きしめられた。
軽くパニックになっていると、後ろからバタンという音が聞こえた。
多分、ジゼルさんが閉めたんだ。
「アンタ、狙われてたりする?」
突飛な言葉に私は驚いた。
狙われてる…?
え?私が?
誰に…なんで?
いや、何も心当たりはない。
「じゃ、逆か。なるほどね。」
一人で納得してしまった天宮さんは私を放した。
狙われる、その逆?
無視される…?ん?違うか。
「あ、新入生さん?
初めまして!萩生 ニコです!」
おお、小さい女の子2号。
萩生さんね。
「愛本陽灯ですわ」
「私は香川 紅。
早めに来てくれて助かった。私達はこれから入隊式の準備とか護衛とかあって出るから、その間に荷解きしておいて。
陽灯のスペースは一番奥の二段ベッド。
下が寝るとこで、上が荷物置くとこね。逆でも良い。
あと横に棚もあるから良い感じにしといて。
以上。」
香川さんは早口で言いながら着替えていた。
下着姿から黒のシャツとスカート、白のジャケットを着、袖は通さずコートを羽織り、肩のボタンをプチっと押した。
そして襟を止めるように青いリボンを結んだ。
腕と肩には一つの横筋と、六芒星が描かれている。
アンゲルスの隊服だ。かっこかわいい。
これが理由で入る人も、少なからず居るんじゃないだろうか。
「…解りましたわ。」
私は頷いて、入り口から避けた。
香川さんが満足げに目を細めると、他の三人がほぼ同時にそれぞれのGEMへ手を掛けた。
すると一瞬で姿が変わり、服装もそれぞれの隊服へ変わった。
天宮さんは香川さんと大方同じだけど、着方が少し違って上着が六つのボタンでキチンと閉められている。
あとの二人はリボンの色が黄色なのと、上着がない。
私が着るものと同じだろう。
3人は再び扉を開けて外へ出た。
「それじゃあ、またあとで。」
そう良いながら、香川さんもそれに続き外へ出ると扉は閉められた。
私はしばらく扉の向こうを眺めた。
そして言われた通り、一番向こうの二段ベッドに荷物を下ろした。
方を軽く回してから、また荷物を持ってはしごで上に登ると、隊服が2着と紙が二枚置いてあった。
見るからに片方はアンゲルスから、もう片方は寮のものだと思う。
とりあえず隊服を棚に描けてから、アンゲルスの方に目を通した。
どうやら、入隊式はこの隊服を着て出席するらしい。
端から見ると可愛いんだけど、いざ着るとなると若干恥ずかしいね。
着るけど。
トントントン
丁寧にも、3回のノック音が聞こえた。
トイレは2回。
地域にもよるけど、この辺では3回がそれ以外の部屋。
西の方では3回が慕い強い相手で、4回が丁寧なノックらしい。
でもここは東なんだから、そこまでする必要はない。
香川さん達か、そのお知り合いかなと思いながら扉を開けると…そこには誰も居なかった…。
え…、ピンポンダッシュならぬ、ノックダッシュ…?
閉めようとすると
「あぁぁ………
やっばりそうなるのね。」
何処からか可愛らしい女の子の声がした。




