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アルカナの戦慄  作者: 瑞希
第二章 『Narcotic human』
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『Āryaの義理』

副作用とも、後遺症とも、…そして“呪い”とも言われる、それ。

多くの能力者の副作用は、殆どの場合“短命”であることが多い。

もしくは咲空の実家、千里家のように遠視のような症状など、目に何らかの障害。

アンゲルス創立者の一人である柊家のように、一般的に悪と言われる老いや、病などが一切無効化される。

神氷家のように、一度見たものは記憶できる絶対記憶能力。

数え出すと切りがない。

そんなに多くありつつも、能力のように悪魔を倒すものではないため、正確に認識されたこともない。

能力の延長なのか、それとは無関係な病の一種なのか、それとも本人の特殊能力なのか…。


兎に角そう言った“特殊能力”が存在することだけは間違いない。


「それが内匠さんに……」

能力はなしに、特殊能力だけ現れた。

その“呪い”と呼んだ特殊能力は麻薬のような効果。

本人が近くに居れば気分が良くなり元気にもなるが、離れるとその逆になる。

恐らく彼女の両親も…。


クラスのみんなや、礼人はGEMを持っていたことで、エネルギーの混乱に対してある程度の免疫のようなものがあった。

けれど、礼人は必要以上に近寄っていたため、その免疫も少しずつ越え

…そして能力者である私が触れたことが、最大の引き金(トリガー)に…。

もしかしたら、あの時の私の精神状態も一因だったのかもしれない。


「礼人くんの中に、不思議なアニマも混じってたわ。

 恐らくあれのせいね。

 それに…」

咲空さんの紫色の瞳が一瞬で真っ赤に染まった。


始めて見たものだから、驚いてしまった。

見た目が、中でも目の色が変わるっていうのはすごく珍しいと思う。

若干怖い。

「陽灯ちゃんにも付着してる。

 けど…中には入れないみたいね。」

そう微笑むと、咲空さんの瞳の色は元に戻った。


「恐らくだけど、能力者はアニマのコントロール能力に長けてるから、入っても意味ないんだと思う。

 っていうか、むしろ元気になるだけなんじゃないかしら?

 混乱症状がないんだから。」

………あれ、呪いどころか…


どうやら、内匠さんの特殊能力は使いようによっては、かなり有益…。


それに気づいた私はホッと胸を撫で下ろした。

これなら何とでもなると思う!

それに、内匠さん本人がアニマのコントロール能力を高められれば、もっと…。


唐突に、ノックの音が聞こえた。

「良いかしら?

 澤田 礼人が目を覚ましたわ」

懸憐さんの言葉に、思わず立ち上がってしまった。

咲空さんをチラッと見ると、微笑んで頷いてくれた。

それを確認し、私は懸憐さんを避けて礼人の居る部屋に勢いよく入った。


「…お前、顔色悪いんじゃないか?」

そうバカみたいな顔で言った礼人を見て、なんか色んな意味で力が抜けてしまった。


「…オレの目の前に居たのは」


「え?何か言った?」

なんかボソボソ聞こえた気がしたけど。

すると礼人はフッ…と笑って私の頭をクシャクシャッと撫でてきた。


「お前はお前のまんまだと思い出しただけ。

 …ってかオレ、何で倒れてたんだ?」

もしかして倒れたときに頭ぶつけたんだろうか。

うん。きっとそうだ。頭がちょっとお釈迦になってる。


「意識はハッキリしてる。」

そしてデコピンを食らわされた。

何でいつもいつも心を読むのかな?特殊能力か!


「礼人がまだまだ未熟だから倒れたんだよ。」

礼人のコントロール能力が高ければ良かったのだ。

…まあ、この理論でいくと人類の殆どか未熟になっちゃうんだけど…。


「澤田くん!起きてるね!

 緊急なんだ!今すぐ来てくれ!!!

 あと先生達も!!!」

叫びながら必死の形相で現れたのは佐久間さんだった。








「……どうなってるんだ」

訓練室の制御室に入った礼人はそう呟いた。

セカイの中には内匠さんが入っているようだけど…でも、対戦相手は居ない。


「…まさか」

そう呟いたのは懸憐さん。

一緒に来てくれた咲空さんは何故かそれを見て崩れ落ちた。


何が起きたのか全く解らない私は、戸惑うばかりだった。

すると、それを見た懸憐さんが口を開いた。

「5年前…似たような事があったわ。


この訓練システムを作った人物のうち、3人が私達の世界で初めて仮想セカイへ入った。

水野みずの夫妻と千葉ちば 克己かつきという人物が。


しかし、その後、システムは異常を来し

3人は二度とセカイから出ることは叶わなかった。


永遠に…、永遠に。


 それと似てるのよ、今の状況が…」

千葉…?

辻褄があったように理解し、一気に血の気が引くのを感じた。

本当に、世界とは狭い。

その事件は、おそらく礼人が以前に言っていたもの。

そして―


けど、何で…何で内匠さんが……?

私は緩く首を振った。

何でなんて、解ってるでしょう?

あのとき、ちゃんと内匠さんを探して、何か、一言でも言っていたら…。

ちゃんとみんなで教室に帰っていてもらえば…。


「システム異常?

 いいや、違う。」

確かに礼人がそう呟くのが聞こえた。

礼人の顔を見たけれど、それ以上何か言うことはなかったし、私以外の誰も聞いてはいなかった。

「佐久間、あの権限は今でも有効なのか…」


「…んー……」

礼人の言葉に、佐久間さんはチラッと懸憐さんや咲空さんを見た。

「佐久間。」


「彼女には悪いけど、僕にはその権限とは何の事だか解らないよ。」

解らないはずがない。

佐久間さんはその権限が、制御室には入れる権限であることを解ってる。

それでも言わないは、佐久間さんにとって不都合があるから…。

佐久間さんの秩序ルールに、異常を来たすから。


けれど、佐久間さんはその秩序ルールに異常を来さない限りは、ただの優しい人なのを、私は知ってる。

「懸憐先生。

 貴方は教官だから、制御室に入れますよね?

 緊急事態です。

 僕たちも入れてもらえますよね?」

佐久間さんは有無をいわさゆような冷静な声で言った。


すると、懸憐さんの目が見開かれ

「…貴方…、なるほどね。

 確かに緊急事態なのは間違いないわ。」

そういうと、懸憐さんは中央に向かった。

みんなもそれについて行くのを見て、私もついていった。

もし、その千葉さんが私の思う千葉さんなら…なら、私は内匠さんこそは絶対に助けたい。


家族同然の人物の本当の家族。

その人と同じ状況となった、彼女を。













『5人の入室を確認しました。』

響いた声にビクッとしてしまった。

その少し聞きなれた声は…


「また会ったな、Āryaアーヤ。」

また…?

ああ、この前も制御室に入ったんだっけ…。

それ以前に個人ならいつも会ってるか。

『はい。』


制御室のたくさんあるモニターのうちの十数個のモニターが一つの画面のようになって黒い目の黒い髪を持ち、白いワンピースを着た少女が現れた。

『問いが解っているので先に答えます。

 内匠 エナは自ら意思で入りました。

 今回は理解した上で。』

礼人に向かって早口にそう言うと、画面の中の少女は何故か私の方に向いた。


すると、ガバッと地面は見当たらないけど、そこに正座し…土下座?!

日本古来にあった最大謝罪方法…DO・GE・ZAだ。

貴方は武士か何かですか。

『以前の件に関して、本当に申し訳ありませんでした。

 謝罪しようとも決して許されぬことです。

 今後は必ず貴方の理解を促し、また貴方の要求には出きる限り答えます。』


「…え、え……え?」

駄目だ。

訳わからん。早速理解できずに申し訳ない。

人工知能の土下座も驚くけど…、いや、それか。

Āryaさんに謝られることがビックリだ。

本当に人工知能なんだな…そういうシステムなんだから…と思うけど、うーん。

ちゃんと考えて行動できる頭があるんだね…不思議だ。


ハッ!

感動している場合じゃない!

「土下座なんて止めてください!

 怒ってませんから!」

むしろ私がちょっと怒られた!礼人とかに!


「Ārya…?!

 貴方、姿があったの…?」

と、懸憐さんも流石に驚いていた。

つい素通りしてしまってたけど、確かにビックリだ。

咲空さん以外の全員は驚いてる。

…っていうか、咲空さんはどうして驚いてないの?


『言うまでもなく無い。

 陽灯が見やすいだろうからと、さっき創りました。』

あ…、確かに見やすいです。

いつも視線が迷子になっていたので、有り難いです。


『この目と髪は畏れ多くもある。

 どうでしょうか。』

そう、画面のĀryaさんは少し頬を赤らめ、微笑みを浮かべた。


「めちゃくちゃ可愛いです。」

白いワンピースとのコントラストがまた最高だ。

ウルトラ可愛い。

ほっぺ赤らめるとかアザトかわ…

「そうではなくて!

 内匠さんはどうなってるんですか?!

 永遠に出られないとか…」


するとĀryaさんは立ち上がって私を見つめた。

『出られない、というのは違います。

 内匠 エナは自らソチラの世界へ戻るのを放棄しました。』

ソチラ…?

あ、そっか、Āryaさんにとっては此方が異世界になるんだ。


「な…、何とか、ならないんですか…?!」


『貴方の場合とは違い、今回は本人の意思によるものです。』

本人の意思…?

やっぱり、内匠さんは礼人のことに責任を感じて…?

…あの時、手を離してしまったから……


「Ārya、お前は陽灯に負い目があるんだろ?

 なら通信を繋げるくらい良いんじゃないのか?」

そう言ったのは礼人だ。


…確かに、通信を繋げてさえくれれば、話せさえすれば、内匠さんの誤解を解くことが出来る。

「お願いします!」

私はすぐさまĀryaさんに頭を下げた。


『…もし貴方に何かをするとするならば、その回数やできる範囲は限られます。

 そして、私が貴方の為に何か出来るのは今ではない。』

ど…、どういうこと?

私のためにĀryaさんが出来ること…?

いや、どう考えてもそれが今だよ!!

人名第一!OK?!


すると何故か礼人は納得したように頷いた。

「…なるほど、そういうことか。

 Ārya、内匠の状況を教えてくれ。」

礼人の言葉に頷き、Āryaさんが持ってきた画面には戦闘訓練とタイトルに書かれ、その下には番号の羅列vs―――。となっていた。

左側の番号は、内匠さんのもの。

右側は番号なし。

相手はいないということだ。


「つまり、内匠は戦闘訓練しか知らなかったから、いつも通りそれを選んだんだろう。

 あと一人なら、セカイに入って内匠と直接会話出来る。

 Āryaに異常(エラー)なんて起こらない。

 説得さえ出来れば二人で帰ってこれる。」

態々、無理矢理Āryaさんに繋いで貰わなくても、セカイに入れば直接話せるから…、だからĀryaさんはああ言ったんだ。


「…なら、カウンセラーを呼んできましょう。

 何人か居たはずよ」

そう言って懸憐さんは制御室から出ようとした。


「『待って』!」

それを制したのはĀryaさんと咲空さんだった。


咲空さんはチラッとĀryaを見てから、懸憐さんを見て

「この場合は、内匠さんに近しい人物の方が良いわ。」

咲空さんの言葉に、みんなの視線は自然と私の方へ向いた。

何故、礼人まで…


けど、内匠さんの状況を一番知ってるのは私だと思う。

「…はい。

 でも、そんなに自信があるわけではないので、

 そのカウンセラーの方も呼んで貰えますか?」

懸憐さんは、僅かに笑みを浮かべて頷いてくれた。

その笑みが私を安心させるためだと解って、私は安心するために大きく息を吐いた。


「緊張しなくても大丈夫だと思うよ。

 どれだけ短く見積もっても、数年は余裕があるから」

佐久間さんはそうおどけるように肩を上げ、余裕の笑みを見せた。


数年…?

ああ、体の限界ってことかな。

そうだよね、うん。

焦らず時間を掛けて、ちゃんと内匠さんを連れ戻そう。


私はそう意気込んで、制御室を後にした。



「…で、実際のところはどうなの。」

そう冷たい声で言ったのは佐久間 涼だ。

さっきの声を聞いた次の瞬間、この声を聞けば、誰もが同一人物とは思わないだろう。

だが、制御室に残ったメンバーに驚くものは居なかった。


澤田 礼人は、愛本 陽灯の居なくなった扉を見つめながら口を開いた。

「…持って3日。

 持たなきゃ1日か、数時間か…数十分か。

 Āryaは個室の扉を開けるつもりはないだろうからな。」

そう言い終えてからチラリとĀryaを見たが、彼女に反応するつもりはない。

次期に姿も消すだろう。


「肉体の限界は3日だけど…

 その前にセカイに居る精神が限界を迎えるわ。

 数時間持てば良い方…かな。」

咲空はモニターに写る内匠の姿を見つけ、哀しげに見つめた。


その紫の瞳には過去の三人が重なっていた。

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