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アルカナの戦慄  作者: 三古谷
第二章 『Narcotic human』
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『違和感の行方』

陽灯の考えた通りの事を思ってる人が目の前に。


(羨ましい…。

いや、オレ女じゃねぇけど!

…でも、見た目老いてないってことは多分、肉体も、だろ?

ってことは、パタッて死ぬまで、現役バリバリでいけるってことか!)


礼人はそこまで考えて、心のなかで首を振った。

それよりも聞きたいことがあったからだ。

「お前、あの時のピカーッて何だよ」

結子への目眩ましに使った閃光だ。

結子が、陽灯を殺すために用意した夜のフィールドは、陽灯を逃げにくくするためだったが、陽灯はそれを逆手に取った。

それは礼人も解っていたが、何故光が出たのかが解らないのだ。

アンゲルスの武器に閃光はない。

少なくとも、陽灯はそんな武器を選んではいない。


「雷だよ。」

陽灯は笑みを浮かべながら言った。

陽灯の能力は礼人と同じ雷。

それは支給されたGEMの色で証明されている。

二人とも同じ黄色だ。


故に涼は納得して頷いた。

「ああ、そっか。

 痺れさせるんじゃなくて、それを目眩ましに使ったんだ。」

雷には当然のように光が宿っている。

一般的に能力マターで灯りと言えば火であることが多いが、雷でも十分可能だ。


「そう。

 でも結子さんにそれを当てるのは…」


「気が引けた…のかな」

そのまま雷として結子を攻撃するのは気が引けたために、閃光として雷を使ったのだ。

まだ調整ができない陽灯では、少し痺れさせる…では済まなかったかもしれないし、逆に攻撃として成り立たなかった可能性もある。

懸命な判断だろう。


「前は静電気程度って言ってたよな」

しかし、礼人のなかの何かが、それを否定していた。

強い確信をもって。


「必死だったから」

そう微笑んだ陽灯に、礼人はそれ以上なにかを言うのは止めることにした。

「そうか」


軽く息を吐いて、礼人は涼の方を見た。

「ま、ともかく事情聴取はこれで終わりな。

 悪いが佐久間さん、これ返してきてくれないか?」

“これ”と礼人が涼へ渡したのはスタンドライトだ。

元々ここにはなかったもので、礼人と涼がノリだけで教員室から借りてきたものだ。

教員室はここではなく、本部に近い場所に位置しているため、ここからでは少し遠い。


礼人はだめ押しに、悪いな。と付け加えた。

「構わないよ。

 じゃあね」

涼はそう微笑み、スタンドライトを持って教室から出た。


「さ、オレ達も片付けて戻るぞ」

「え、あ、うん。」

礼人にそう言われた陽灯は戸惑ったような顔をしてから、片付け始めた。

と言っても大したことはない。

机をもとあった場所に戻し、カーテンを開けるのみ。


「こんなもんか」

案の定、片付けばすぐに住んだ。

陽灯はついでに陽灯達がやったものでは間違いなくない消しカスやホコリなどまで片付けていた。


「うん!……っていうかなんで私まで手伝わされたんですの?」 

陽灯は呼ばれただけで、机の位置やカーテンを閉めたりしたのはすべて礼人と涼だ。

陽灯がやらなければならない、ということは特にない。


「細かいこと気にすると禿げるぞ」


「禿げないわよ!!!!」

そう力一杯叫びながら、陽灯は外へ向かう扉を開けた。


礼人もそれについていき、陽灯が開けた扉を…閉じた。

「えっ…?」

陽灯はそう言ったっきり、固まってしまった。

訳がわからず、驚いているのだろう。


しかし、礼人はそれが解っていても、そこを退かない。

「お前さ、雷のカルディアじゃないだろ?」

普通ならば聞こえないような息遣いも、ほぼゼロ距離にいる礼人の耳には届いた。


「お前はオレと同じくらい頭良いだろ。

 あの一瞬で出てくる言葉なら、それそのものの性質を表す言葉のはずだ。」

能力者、特にレジティーマは能力マターを使うとき、何かを唱えることが多い。

実際には何も唱えなくとも、使えることが殆どだがマターの安定のために唱えるのだ。


陽灯も同じで、彼女は“力よ、瞬く閃光になって、迸れ”と唱えた。


あまり雷に対しては使わない言葉だろう。

礼人は陽灯を吐かせるために、それを指摘したのだ。

「お前は光のアークだな。」

アンゲルスの象徴である六芒星。

それぞれ火、水、木、雷、風、土を表しており、中央はそれらどれにも属さない異端ゼノを指している。


光は光であり、火でも雷でもない。

だから陽灯の力はゼノに入る。

それなのにGEMは礼人と同じ黄色だった。


(多分、愛本に肩入れしてる力道さんが何らか力を加えた…

 そもそも、光の能力者だから…と言うのも肩入れする理由のひとつにあったかも知れんな。)


「…ち、違う……」

陽灯は声を震わせて絞り出した。

その言動に、礼人は額に手を当てた。


(嘘が致命的に下手すぎるんだよ…

 こんなんでこれから先大丈夫なのか?

 いや、無理だろう…断言できる。)


礼人は一度溜め息を吐いてから、少し優しい声を出した。

「誰に言われたんだ?

 嘘を吐けって」


間を明け、また陽灯は声を絞り出した。

「…アスター」

Aster。

その人物が陽灯に、自分が光の能力者であることを隠すようにいったのだ。


「よし。」

礼人は一人で頷くと、再び扉を開けて廊下に誰も居ないことを確認してから、陽灯を椅子に座るように促した。


(さっき佐久間さんをスタンドライトを持たせて、オレ達も出る振りをしたのは、完全に佐久間を追い出すためだ。

 佐久間は間違いなく、ここ以外の組織にも属してる。)


案の定、廊下には佐久間の姿はなく、二人の会話が聴かれることはない。


「で、そのアスターは誰だ?

 思い出してみろ。」


「………誰……施設の友達?」

陽灯は額に手を当てながら独り言のように言った。

自分自身、解っていないような言い方だ。


「施設と言ったら、院のか?」

礼人の言葉に、陽灯はすぐに首を振った。

孤児院とはまた別の場所のようだ。

そうなると、アスターの事を知っているのは陽灯本人だけの可能性が高い。


思い出そうとしているのか、陽灯は次第に混乱していようだった。

「施設……あれ…?どうして…?どうして?

 …思い出せない。」


そしていきなり顔をあげ、礼人の肩を掴んだ。

「思い出せない…

 アスターの顔が思い出せない!!!!」

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