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アルカナの戦慄  作者: 三古谷
第二章 『Narcotic human』
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『事情聴取』

療養?とか、セカイの私の復帰?とか何とかしてたらしく、私は1週間お休みになった。


それも明け、元気良く扉を開けると…

「…これは一体……?」

教室の空気が異常に重い。

心なしか息苦しい気さえする…。


「お、愛本。」

と思ったら礼人はふつ…、いや、顔色悪い…?ん?


「これはど、どうしたんです…の?」

思わずそういうと礼人は苦笑いを浮かべた。

「あー…、ちょっとな…」


すると、ヒョコっとエッカートさんが出てきた。

エッカートさんに関しては、この一週間の間にも会っていた。

私の家庭環境がバレたので開き直って孤児院で指輪造りを続行していたからだ。

それにより家族達キョウダイ…特に漢都と仲良くなってしまった。

恨めしい…ズルい……。


そんなズル賢い彼が言いにくそうな礼人に代わって説明してくれるらしい。

「簡単は事だよ。

 裏切り者が出たんだから」

裏切り者……?

あ…、そっか。そうだよね。

結子さんは裏切り者ってことになるんだ…。

リリィーカリス…。

恐らく、アンゲルスの情報を盗もうとしていた。

もしも私がリリィーカリスを知った情報源が帆凪様と口走っていたら…。恐ろしい。

帆凪様が能力者であること事態、知られていないのだ。


けれど、結子さんは消えてしまって…あれから一切音沙汰ない。

今、何処に居るんだろう…。


「知らないけどさ、妙なことは考えない方が良いよ。

 彼女は裏切り者に間違いない。」

その言葉に思わず唇を噛み締めた。

言い返したいけど、ここで言い返してはいけないし

言い返す言葉がない。

結子さんは、アンゲルスからすれば間違いなく裏切り者…。

それで―


腕がまた痛み出した。


「まあ、元々お喋りするようなメンバーでもないしね」

そう。一番話しているのが結子さんだった。

私も話さない訳ではないけど、自ら率先して話すようなタイプでもない。

…でも、一度は結構話してたから、その反動で…少し淋しい。


あー!もう!考えたってしょうがない!戻らない!

まずは挨拶からだ!!!!

「おはっ…」


「入れないんだけど」

不機嫌そうに後ろから聴こえた声に振り返ると、後ろには天都さん……と、内匠さんの姿があった。


「あっ…ご、ごめんなさい…!」

私が壁になって謀らずも“とおせんぼ”してしまっていた。

早急に避けると、二人は無言で入っていった。


「ん…?

 天都は教室に居なかったか?」

礼人が考えるように自分の顎を撫でながら呟いた。


すると、何故か内匠さんの方がビクッとした。

そのあとで天都さんが振り替えって、礼人を睨んだ。

「オレがどうしようが勝手でしょ」


睨まれたはずの礼人は何故か吹き出して、

「ああ。もちろんだ。」

と、かなりの笑みを浮かべて言った。

その笑みが気に食わなかったようで天都さんは更に睨んで、後ろ側にある自分の席に大きな音を立てて座った。

内匠さんも何か言いたげにしてから、礼人に頭を下げて自分の席に着いた。


「どゆこと」

私の思いをエッカートさんが代弁してくれた。


「ハハッ。察してやれよ。」

と、礼人は心底愉快そうに笑いながら、説明もせずに自分の席についてしまった。

聞き耳を立てていたであろう教室のみんなも、私も、誰も察せずに終わった。










「事情聴取を始める!」

「始める!」

空き教室には机に肘ついて手を組、そこに顎を乗せて渋い顔をした礼人と

打って変わって明るい顔で楽しそうに横に立っている佐久間さん。


カーテンを締め切り、電気も付けてない薄暗い部屋。

どっから持ってきたのか解らないスタンドライトを礼人らいと(笑)に当てられ

「まぶしっ」

というと、渋い顔をしている礼人の頬が僅かにピクッとした。

笑ったな…コノヤロウ。


「うん。目に悪い。」

真顔で佐久間さんがそう言うと、確かに。と頷いて礼人はスタンドライトを仕舞った。

そして佐久間さんがいそいそと教室の電気をつけた。


「なにさっきの山門芝居!」

バンッ!と私は机を叩く音で不満を主張した。


「本当はカツ丼も用意したかったんだけどね」

「これだけの為にってのは流石にな~」


馬鹿かアンタらはと真顔でいい放ってやりたい。


「用がないなら帰りますけど」

その代わりに仏頂面で言ってやった。

用があるのは重々解ってる。


「あるある

 ってか、佐久間さんもそっち側だ!」

と言われ佐久間さんはシュンとして、私の横の席に着いた。


「まず、結子さんは何者だ」

「「黙秘!」」

私達は声を合わせて元気よく言った。

結子さんの正体はつまり、リリィーカリス。

普通はそんな組織すら知らされない。

おそらく、裏切り者っていうのは個人としてアンゲルスを裏切ったということになっているのだろう。


「「いてっ…」」

すると以前宣言していた通り、本当にデコピンを食らわされた。

これが、地味に痛い。

だがこれもサダメ…!

ってか、こういう事情聴取(もっとちゃんとした奴)はもう既にやったんだよね。

そこでの担当は帆凪様だから、大したことは聞かれなかったけど。

リリィーカリスの情報源は言うまでもなく、帆凪様だから。


「次に佐久間さん、なんで制御室が空いたんだ。」

え、なにそれ初耳~

あー、そこに入ったから礼人の声が聞こえてきたのかな。


「それは能力者レジティーマに知り合いが居るからだよ」

佐久間さんはにこやかに答えた。

カルディアじゃなくて、レジティーマっていうことは代々続く能力者。

アンゲルスの関係者だ。


「嘘だろ。

 いくら能力者レジティーマの知り合いでも許可がなきゃ入れない。」

まあ、確かに似たような立場っぽい私は存在すら知らなかったし。


「許可されてるんだよ。」

「………幹部か?」

「柊」


「ひっ…」

完全に休憩タイムだった私は不意打ちを食らってしまった。

もしお茶が出されてたら間違いなく吹き出してたね!

だって、柊って…柊って言ったら!

「木?」


「違うよ!」

思わず突っ込んでしまった。

まあ、確かに木の種類ではあるけども。


「アンゲルスで一番偉い人だよ!」

テストにも出てたでしょ!というと、突然礼人の顔が変形した。

「オレが唯一取り逃したとこだぁ!!!!」

…ああ、だから二位になっちゃったんだね。ぷふー。

私はそこもちゃんと正解したからね!えっへん!


「創立者の名前なんて知らねぇよ!!!

 絶対100点取らせないための策略だと思ったわ!!!」

……まあ、そうかもね。確かに。

そこの悔しさもあって話し掛けてきたのかな。どんまい。

私は普通に”知ってた“からね。勉強うんぬん関係なし。

多分、策略じゃなくて、能力者レジティーマ関係者への慈悲だと思うよ。


「ってそうじゃない!お婆ちゃんさんと知り合いなんですか?!」

お婆ちゃんって帆凪様が呼ぶその人はアンゲルスで一番偉い人であり、能力者レジティーマをまとめあげている人…と、言いたいところだが、そのくらい偉い人がもう一人居る。

柊家は表側のリーダーで、もう一人は裏番長っぽいって帆凪様が言ってた。

よく解んないけどそうらしい。


悔しがってる礼人のことは放っといて佐久間さんの方を見た。

「それもそうだし、志保さんともね。

 もう志野さんは九十近いよね…」

えーっと…確か、来年88歳~って帆凪様が言ってたかな。

恐らく、もうそろそろアンゲルスの主導権は志保さんへ移るだろう。

それと共に能力者レジティーマのまとめ役も…。

そうなると本格的にお世継ぎ問題だね。大変。志保さん。


「そんな老人がやってるのか?」

まあ、確かに年齢だけ聞いたらそうも思うだろうけど


佐久間さんと目を見合わせ、私は携帯に表示した志野さんの写真を見せた。

「……?

 ああ、これが志保さんか?」

写真に写っているのは精々30代前半の美しい女性だ。

しかし…

その写真を少しスクールすると、そこに書いてあるのは


「柊 志野………え?え?

 え、どっちが嘘ついてんの?え?」

どっちも嘘なんて吐いてませーん。

柊家まるごと、ロリババ家系なだけです!

まあ、ロリではないけど。


「嘘だろ?!」

「まあ、年齢は非公開になってるけどね」

日頃は年寄りに見えるように、厚化粧をしているらしい。

90歳近くでここまでだと、流石に不気味…という域だろう。

それも仕方がない。

帆凪様によれば、これは柊家の能力の副作用…後遺症……呪い。

そういうものだ。

能力者は全体的に短命になりやすく、柊家は逆に長生きらしい。

呪いとも言われるけど、必ずしも悪いものではなくて、能力の一部として”特殊能力“って言われることもある。


まあ、柊家のものも旗から見たら羨ましいしかないよね。

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