『Two liar』
結果、私達は1ヶ月かけて容疑者5人の身辺調査を行った。
結果、怪しいと思われる人が更に絞れた。
私達はまずそこから探ることにした。
私の質問に、エッカートさんは作業する手を止め、こちらを向いた。
「え?桜庭とアリーセは同じ学校に居るか?」
ま…まあ、要するにそういうこと。と私は頷いた。
怪しいと思われているのは、エッカートさんと桜庭さんと結子さん。
この三人は同じ学校に在籍していたのだ。
怪しいと言っても、三人を疑っているのではない。
三人が三人とも互いのことを認識していれば、残りの二人に絞れる。という訳だ。その逆も然りだが。
「何でそんなことを?」
「えっ…と」
聞き返されて、何と返そうかと迷っていると
「それよりさ、愛本は何でアンゲルスに入ったの?」
理由には大して興味がなかったのか、すぐに別の質問をされた。
答えられる質問にホッと胸を撫で下ろした。
「生活費のためですわ」
するとエッカートさんは少し怪訝そうな顔をした。
「生活費?
キミはまだ中学生じゃなかった?」
私は思わず苦笑いしてしまった。
確かに中学生のうちから、生活費…なんて可笑しな話だろう。
「でも来年は高校生ですから…」
そうとしか答えられない。
「まさか高校生から独り暮らし?
仕送りもしてくれないのか?キミの両親は。」
「あっ…ち、違うんです」
居もしない両親のことを悪く言われてしまった私は慌てて首を振った。
思い入れが有るわけではないが、おそらく亡くなって居るであろう人が謂れの無いことで悪く言われてしまうのは…ちょっと心苦しい。
「…その、……私には両親が居ないので…」
するとエッカートさんは軽く目を見開いてから、ああ…と溜め息のような声を漏らした。
「そういうことね。」
今の孤児院で保護を義務付けられている期間は、中学生まで。そのあとはそれぞれの孤児院に任せられている。
「でも違うんです。うちは成人まで面倒見てくれるので…出ていくのは私の意思です。」
私の居る愛本孤児院は非常に寛大で、高校どころか、2年制なら大学まで面倒を見てくれる。
戦災の影響で寄付があることも理由のひとつではあるだろうが…何より、院長先生の人柄だろう。
「じゃあ例えばさ、ここよりずーっと給料が良いとこ紹介するよって言われたら?」
エッカートさんの目が怪しく光った気がした。
「…怪しい仕事ならお断りです。」
私は即答した。
「院長先生に顔向けできません。
家族達にも。」
生きていければ何でも良いなんてそれは大間違いだ。
問題なのは、いかにまともに生きられるかということだろう。
院長先生を悲しませたくはないし、家族の見本になるよう生きるのだ。
「ふーん…、そう。
因みにさっきの質問だけど、桜庭は違う学校だよ。
じゃーねー。」
それだけ捲し立てるように言うと、エッカートさんはさっさと帰ってしまった。
取り残された私は
「え…えぇ??」
と困惑するしかなかった。
俺は端末を開いて愛本さんと共同のメモを見た。
そこに書かれたものを見て何度目かの溜め息を吐いた。
―
エッカート 秀とベルナール 結子 アリーセは二人とも同じ学校か、二人とも違う学校かのどちらか。
俺が聞きに行った桜庭 辰弥が答えた言葉だ。
愛本さんのはまだ記載されてないけど…
要するに桜庭 辰弥は、二人は必ずセットだと言いたいのだ。
何でそう思ったのか…俺ともあろうものが聞きそびれた。
一生の不覚だ。
二人は同じ組織なのか…いやしかし、リリィーカリスは一人だけのはず…。
ならば、辰弥がリリィーカリスなのか…
悩んでいると、愛本さんから更新があった。
エッカート 秀に聞いてきたようだ。
―
桜庭さんは違う学校だそうです
…てことは、やっぱり桜庭 辰弥がリリィーカリスか?
いや、もうそうだろう。
証言が怪しいにもほどがある。
愛本さんも、同じことを思っているはずだ。
桜庭 辰弥がリリィーカリスなら、上手く避けられたことも頷ける。
桜庭 辰弥がリリィーカリスだ…!
次に質問するのは結子さん!
「お昼ご飯何にしよっかな~」
決まって結子さんと話すのはお昼ご飯の時だ。
結子さんは学校の話とか、あとファッションとか、若い女の子がするような話をしてくれる。
…そうそう、貸してくれたファッション雑誌も返そう。
あれから色んなファッション誌を貸してくれた。
そうでもないかなと思ってたけど、可愛い女の子を見るのは単純に楽しかった。
やっぱり自分が買うほどではないけど、見ていて楽しい。
ファッション誌を忘れていないか探るついでに、私は佐久間さんとのメモ帳を読み返してみた。
「…あ」
溜め息のような、声のような音が勝手に漏れた。
その口を手で覆いながら、私は呆然と画面を見つめていた。
【メモ帳】
これは3人が本当の事とその逆の事、どちらかしか言わないという前提によるものである。
さて、ここにある証言で嘘つきを一人だけ見つけられる。
それは3人のうち誰だろう。
秀「桜庭は違う学校だ。」
辰弥「秀くんと結子ちゃんは、二人とも同じ学校か、二人も違う学校かのどちらかだよ」
【ヒント】
辰弥の言ってることは若干解りにくいですが、佐久間の言う通り、
要するに二人はセットだと言っています。
また、嘘つきは一人とは限りません。




