↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/29

剣術獲得 スキル進化!?

 俺が騎士団の訓練場に通い始めてから、半年ほどが経った。


 そして、つい先日。


 俺は六歳になった。


「……せいっ!」


 ぶんっ!


 木剣が空気を切る。


「……はっ!」


 続けて、もう一振り。


 右足を踏み込み、腰を回し、剣を振り下ろす。


 以前の俺なら、この時点で身体がふらついていただろう。


 でも、今は違う。


 《平衡感覚》のおかげもあって、しっかりと姿勢を保てている。


「……ふぅ」


 俺は一度、木剣を下ろした。


 うん。


 悪くない。


 少なくとも、半年前とは比べものにならないくらい動けるようになっている。


 もちろん、ガルドさんや兄さんには遠く及ばない。


 でも、少しずつ成長している実感はあった。


「レオン坊ちゃん。今日も調子がよさそうですね」


「うん! 最近、剣が軽く感じるんだ!」


「はっはっは! それは腕の力だけで振らなくなってきた証拠でしょう」


 ガルドさんは笑いながら頷いた。


「剣は腕だけで振るものではありません。足から腰、腰から肩、そして腕へと力を伝えるんです」


「……なるほど」


 そう言われてみれば、最近はそんな感覚が少し分かってきた気がする。


 前世で見たスポーツの解説でも、似たような話があった。


 身体を連動させることが大切だ、と。


 あの頃は何となく聞いていただけだけど、実際にやってみるとよく分かる。


「じゃあ、もう一回やってみる!」


「ええ。今度は力を抜いて振ってみてください」


「うん!」


 俺は木剣を構え直した。


 足を開く。


 重心を落とす。


 肩の力を抜く。


 それから、ゆっくりと息を吐いた。


 ……よし。


「……せいっ!」


 ぶんっ!


 その瞬間だった。


「……あれ?」


 妙な感覚がした。


 剣が軽い。


 いや、それだけじゃない。


 身体全体が、急に動かしやすくなったような気がする。


 さっきまで意識しなければできなかった動きが、自然にできている。


 足の踏み込み。


 腰の回転。


 剣を振り下ろす角度。


 全部が、ぴたりとつながった。


「……なんだ、これ?」


 俺が首をかしげた、そのとき。


 ぽんっ。


 頭の中で、聞き慣れた音が響いた。


【特定の習得条件を達成しました】


【新しいスキルを獲得しました】


【《剣術 Lv.1》】


「…………え?」


 俺は思わず固まった。


 剣術?


 ……剣術!?


「うおおおっ!?」


「ど、どうしました、坊ちゃん!?」


 ガルドさんが驚いて駆け寄ってくる。


「剣術! 剣術が!」


「……剣術?」


「あっ!」


 しまった。


 思わず叫んでしまった。


 俺は慌てて口を押さえる。


「えっと……剣が、すごく振りやすくなったんだ!」


「……ほう?」


 ガルドさんは俺の手元を見た。


「では、もう一度振ってみてください」


「う、うん!」


 俺は木剣を構え直した。


 そして、振り下ろす。


 ぶんっ!


 ……おお。


 やっぱり違う。


 今までより、明らかに動きが滑らかだ。


 剣の軌道も安定している。


「……これは」


 ガルドさんが少し驚いた顔をした。


「坊ちゃん。今の動き、もう一度できますか?」


「うん!」


 ぶんっ!


「……なるほど」


 ガルドさんは腕を組んだ。


「もしかすると、剣術の基礎が身体に馴染んできたのかもしれませんね」


「……そうなの?」


「ええ。長い間、同じ動きを繰り返していると、ある日突然、動きが変わることがあります」


 ……なるほど。


 この世界では、それがスキルの習得につながることもあるわけか。


「レオン坊ちゃん。後でステータスを確認してみるといいですよ」


「……うん!」


 俺は大きく頷いた。


 確認するまでもない。


 だって、もう見えているんだから。


 でも、ガルドさんにはまだ内緒にしておこう。


     ◇


 訓練を終えた俺は、自分の部屋でステータスを開いた。


【レオン・グランフェルト】


【年齢:6】


【Lv.2】


【HP:44/44】

【MP:4,186/4,186】


【筋力:10】

【耐久:10】

【敏捷:12】

【器用:13】

【知力:14】

【精神:16】


【保有スキル】

《収集 Lv.1》

《聴覚強化 Lv.1》

《平衡感覚 Lv.1》

《跳躍 Lv.1》

《剣術 Lv.1》


「……ふふふ」


 思わず笑みがこぼれる。


 とうとう手に入れた。


 《剣術 Lv.1》。


 これまで何か月も訓練を続けてきた成果だ。


 もちろん、まだLv.1。


 ガルドさんや兄さんのように剣を扱えるわけじゃない。


 でも、今までとは大違いだ。


「……よし!」


 俺は拳を握った。


 スキルを自然習得するには、とにかく時間がかかる。


 《平衡感覚》は比較的早く手に入ったけれど、《剣術》は半年近く練習して、ようやくだ。


 それでも、前世の知識を使って練習方法を工夫したことには意味があったと思う。


 それに、俺はまだ六歳。


 兄さんの話では、幼い頃ほど新しいスキルを習得しやすいらしい。


 成長するにつれて、身体や魔力の性質が少しずつ固まっていくのだとか。


 だったら、今のうちにいろいろ試した方がいい。


「……ふふふ。忙しくなりそうだな」


 俺は机の上に置いた訓練ノートを開いた。


 最近は、毎日の訓練内容とステータスの変化を記録するのが習慣になっている。


 今日は、そこに大きく書き込んだ。


『六歳。剣術スキル獲得!』


 ……うん。


 なかなかいい感じだ。


     ◇


 それから数日後。


 俺は屋敷の裏手にある小道を歩いていた。


 腰には、小さな木剣。


 もちろん、訓練用のものだ。


 今日はガルドさんとの稽古が休みなので、一人で軽く身体を動かすつもりだった。


 ……それにしても。


 《剣術》を獲得してから、剣を振るのがますます楽しくなった。


 以前は、何となく振っていた木剣。


 でも、今は違う。


 どうすれば無駄なく振れるのか。


 どこに重心を置けばいいのか。


 そういうことが、少しだけ分かるようになった気がする。


「……やっぱり、スキルってすごいな」


 俺は小さく呟いた。


 そのときだった。


 がさっ。


「……ん?」


 草むらの向こうで、何かが動いた。


 俺は足を止めた。


 がさがさっ。


 ……この音。


 覚えがある。


「……聴覚強化」


 耳を澄ませる。


 小さな足音。


 地面を引っかく音。


 それから、草をかき分ける音。


「……まさか」


 俺はゆっくりと草むらを覗き込んだ。


 そこにいたのは。


「……ホーンラビット!」


 額に一本の角を持つ、小さな魔物。


 以前、俺が初めて倒した相手だ。


 あのときは本当に大変だった。


 何度も突進を避け、最後は柵に角を突き刺させて、ようやく倒した。


 でも、今はどうだろう。


 あれから半年。


 訓練を続け、《平衡感覚》を獲得し、《跳躍》も手に入れた。


 そして、ついに《剣術》まで習得した。


 ……試してみたい。


 今の俺が、どれくらい戦えるようになったのか。


 俺は周囲を見渡した。


 幸い、ここは屋敷の敷地内。


 近くには訓練場もある。


 それに、ホーンラビットなら攻撃の特徴も分かっている。


「……よし」


 俺は木剣を握り直した。


 もちろん、無理はしない。


 危ないと思ったら、すぐに逃げるつもりだ。


 でも。


「……今度は、もっと上手くやれるはずだ」


 俺はホーンラビットへ向き直った。


     ◇


 ホーンラビットがこちらに気づいた。


 低く身体を沈める。


 ……来る!


 俺は《聴覚強化》を発動したまま、相手の動きを観察した。


 後ろ足に力が入る。


 地面を蹴る音。


 そして。


 ざっ!


 ホーンラビットが突進してきた。


 速い!


 ……いや。


 前より、動きが分かる。


 俺は少しだけ身体を横へずらした。


 ぶんっ!


 角が目の前を通り過ぎる。


「……よし!」


 避けられた。


 しかも、前みたいに大きく跳ぶ必要もなかった。


 相手の進む方向を見極め、必要な分だけ動く。


 ガルドさんが何度も教えてくれたことだ。


 ホーンラビットが振り返る。


 もう一度、身体を低くした。


 ……今度はこっちからいく!


 俺は木剣を構えた。


 相手が飛び出す瞬間。


「……跳躍!」


 ぴょんっ!


 身体が少しだけ高く浮く。


 そのまま横へ移動。


 《平衡感覚》のおかげで、着地も安定している。


 そして。


「……せいっ!」


 ごつんっ!


 木剣がホーンラビットの側頭部に命中した。


 ホーンラビットが地面を転がる。


「……おおっ!」


 当たった!


 しかも、前よりずっと手応えがある。


 ただし、まだ倒れていない。


 ホーンラビットはよろよろと立ち上がった。


 ……なるほど。


 さすが魔物。


 これくらいじゃ倒れないか。


 でも、今度は慌てない。


 俺は木剣を構え直した。


 ホーンラビットが突進してくる。


 その瞬間、俺は小さく横へ動いた。


 そして、すれ違いざまに木剣を振り下ろす。


 ごつんっ!


 二撃目。


 ホーンラビットが大きくよろめいた。


「……もう一発!」


 俺は踏み込んだ。


 腰を回し、剣を振る。


 ごつんっ!


 三撃目。


 ホーンラビットはその場に倒れ、動かなくなった。


「……よし!」


 俺は大きく息を吐いた。


 倒せた。


 しかも、前よりずっと楽に。


 もちろん、まだ余裕というほどではない。


 でも、あのときのように必死に逃げ回ることはなかった。


 訓練してきたことが、ちゃんと実戦で役立ったのだ。


「……ふふふ」


 これは嬉しい。


 ものすごく嬉しい!


 俺はステータスを開いた。


【レオン・グランフェルト】


【年齢:6】


【Lv.2】


【HP:44/44】

【MP:3,972/4,186】


【筋力:10】

【耐久:10】

【敏捷:12】

【器用:13】

【知力:14】

【精神:16】


【保有スキル】

《収集 Lv.1》

《聴覚強化 Lv.1》

《平衡感覚 Lv.1》

《跳躍 Lv.1》

《剣術 Lv.1》


 ……あれ?


 レベルは上がっていない。


 どうやら、魔物を一匹倒したくらいでは、毎回レベルアップするわけではないらしい。


 まあ、当然か。


 そんなに簡単に強くなれたら、誰も苦労しないよな。


 でも、経験値は入っているはずだ。


 きっと、少しずつ蓄積されていくのだろう。


「……さて」


 俺は倒れたホーンラビットへ目を向けた。


 そして、思わず笑った。


 そうだ。


 忘れちゃいけない。


 俺には、もう一つの目的がある。


「……収集!」


 目の前に、半透明の文字が浮かんだ。


【対象:ホーンラビット】


【スキル収集を開始します】


【必要MPを自動投入します】


【投入MP:2,431】


【収集成功率:100%】


【収集成功】


【獲得スキル:《聴覚強化 Lv.1》】


「……あっ」


 聴覚強化?


 それ、もう持ってるんだけど。


 俺は思わず首をかしげた。


 前回のホーンラビットからは《跳躍》を手に入れた。


 でも、今回は《聴覚強化》。


 どうやら、同じ種類の魔物でも、毎回同じスキルが手に入るわけではないらしい。


 ……それはいい。


 問題は、すでに持っているスキルをもう一度獲得した場合だ。


「……どうなるんだ?」


 俺は慌ててステータスを開いた。


【レオン・グランフェルト】


【年齢:6】


【Lv.2】


【HP:44/44】

【MP:1,541/4,186】


【筋力:10】

【耐久:10】

【敏捷:12】

【器用:13】

【知力:14】

【精神:16】


【保有スキル】

《収集 Lv.1》

《聴覚強化 Lv.2》

《平衡感覚 Lv.1》

《跳躍 Lv.1》

《剣術 Lv.1》


「…………ん?」


 あれ?


 俺は目をこすった。


 そして、もう一度見た。


【《聴覚強化 Lv.2》】


「…………ええっ!?」


 レベル、二!?


 ちょっと待て!


 さっきまでLv.1だったよな!?


 俺は何度もステータスを確認した。


 でも、表示は変わらない。


 《聴覚強化 Lv.2》。


 確かに、そう書かれている。


「……どういうこと?」


 俺はしばらく考え込んだ。


 もしかして。


 同じスキルをもう一度収集すると、レベルが上がる?


 ……いや、そんな説明は聞いたことがない。


 そもそも、《収集》自体がほとんど使われていないスキルだ。


 誰も詳しい仕組みを知らないのかもしれない。


「……試してみるか」


 俺は《聴覚強化》を発動した。


 その瞬間。


「……おおっ!?」


 音が違う。


 明らかに、今までよりもはっきり聞こえる。


 遠くの木々が揺れる音。


 小鳥が羽ばたく音。


 そして、少し離れた場所を誰かが歩いている足音。


 今までなら、ここまでは聞き取れなかったはずだ。


「……すごい!」


 俺は思わず笑ってしまった。


 同じスキルを手に入れたら、レベルが上がった。


 これって、ものすごい発見じゃないか?


 もし、この仕組みがほかのスキルにも当てはまるなら。


 同じ魔物を何度も倒して、同じスキルを収集すれば……。


「……ふふふ」


 俺はにやりと笑った。


 そうか。


 スキルは、集めるだけじゃない。


 強くすることもできるのか!


 もちろん、まだ分からないことは多い。


 Lv.2のスキルをさらに強くできるのか。


 どこまでレベルを上げられるのか。


 そして、違うスキルでも同じことが起こるのか。


「……これは、調べるしかないな!」


 俺はわくわくしながら、訓練ノートを取り出した。


 そして、新しい発見を書き込む。


『同じスキルを収集すると、レベルが上がる?』


 最後に、大きく疑問符をつけた。


 まだ一回しか確認していない。


 決めつけるのは早いだろう。


 でも。


 もし本当なら。


 俺の《収集》には、まだまだ知らない可能性が眠っているのかもしれない。


「……ふふふ。面白くなってきた!」


 俺はノートを閉じた。


 六歳になったばかりの俺には、まだまだ知らないことがたくさんある。


 そして、それを一つずつ確かめていく時間も、たっぷりある。


 次は、どんな発見が待っているんだろう。


 そんなことを考えながら、俺は屋敷へと戻っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。