↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
18/42

蒼雷の魔狼

 ――ドンッ!


 突然の衝撃に、俺はベッドから飛び起きた。


「……何だ!?」


 窓の外が青白く光る。


 続いて、何かが砕けるような音が響いた。


 ……雷?


 いや、違う。


 この音、屋敷のすぐ近くだ!


「レオン坊ちゃん!」


 扉が勢いよく開き、マリアが飛び込んできた。


「起きていらっしゃいますか!?」


「うん! 何があったの!?」


「魔物が現れました! すぐに避難します!」


 ……魔物?


 ここは屋敷だぞ!?


 俺は急いで服を着替え、木剣を手に取った。


「マリア、セラは!?」


「警備隊の方がお迎えに向かっています!」


「分かった!」


 俺たちは廊下へ飛び出した。


     ◇


「レオン!」


 階段のところで、セラと合流した。


「セラ! 無事だった!?」


「ええ。でも、外が……!」


 そのとき。


 ――バリバリバリッ!


 耳をつんざく轟音が響いた。


 窓の向こうを、青い稲妻が走る。


 そして、中庭の外壁が一瞬で吹き飛んだ。


「……っ!?」


 崩れた壁の向こうに、巨大な影が立っていた。


 黒い毛並み。


 銀色のたてがみ。


 そして、暗闇の中で光る青い瞳。


 狼だ。


 ただし、普通の狼とは比べものにならない。


 屋敷の門よりも大きな身体。


 その周囲には、青白い稲妻がまとわりついている。


「……何、あれ……」


 セラが小さく呟いた。


 俺も答えられなかった。


 あんな魔物、見たことがない。


「お二人とも、こちらへ!」


 警備隊長が叫んだ。


「裏手の避難路へ向かいます! 急いで!」


「はい!」


 俺はセラの手を取った。


「行こう!」


「……ええ!」


 走り出す。


 今は戦うときじゃない。


 まずは逃げる!


     ◇


 屋敷の裏手へ続く廊下。


 俺たちは警備隊長と数人の騎士に守られながら、避難路へ向かっていた。


「……あの魔物、何者なんですか!?」


 俺が尋ねると、隊長は険しい顔で答えた。


「分かりません。ただ、尋常な魔物ではない!」


 そのとき。


 ――グオオオオッ!!


 凄まじい咆哮が響いた。


 身体が震える。


 床まで揺れた気がした。


「……っ!」


 セラが俺の手を強く握った。


「大丈夫!」


 俺はそう言った。


 ……大丈夫。


 絶対に、一緒に帰るんだ。


 だが、その直後だった。


 ――バチッ!


 天井を青い光が走った。


「……まずい! 伏せろ!」


 警備隊長が叫ぶ。


 次の瞬間。


 ――ドガァァァン!!


 廊下の一部が爆発した。


 俺はセラを抱えるようにして床へ倒れ込んだ。


 飛び散った破片が頬をかすめる。


「……くっ!」


 耳がきんきんする。


 顔を上げると、通路の向こうは瓦礫に塞がれていた。


「……避難路が!」


 警備隊長が舌打ちした。


「別の道へ回る! 急げ!」


 だが。


 ――ズシン。


 重い足音が響いた。


 崩れた壁の向こう。


 青い光が、ゆっくりと近づいてくる。


「……嘘だろ」


 狼だ。


 さっき外にいたはずの巨大な狼が、もうここまで来ている。


「お二人を下がらせろ!」


 警備隊長が剣を抜いた。


「我々が食い止める!」


「でも……!」


「レオン様! ここは我々にお任せください!」


 隊長の声に、俺は歯を食いしばった。


 ……分かった。


 今、俺がやるべきことは一つだ。


「セラ! こっち!」


 俺は彼女の手を引き、残された通路へ走った。


     ◇


 ――ギィン!


 背後で剣がぶつかる音がした。


 続いて、騎士たちの叫び声。


 振り返りたくなる。


 でも、今は止まれない。


「レオン……!」


「大丈夫! まだ道はある!」


 俺は《観察》で周囲を見渡した。


 左の通路は崩れている。


 正面には階段。


 右には中庭へ続く扉。


 ……階段は駄目だ。


 上へ逃げたら、行き止まりになるかもしれない。


「中庭から回ろう!」


「ええ!」


 扉を開ける。


 冷たい夜風が吹き込んできた。


 だが、そこで俺は足を止めた。


 中庭の向こうに、青白い光が見えたのだ。


「……まさか」


 ――バリッ!


 稲妻が走る。


 巨大な黒い影が、崩れた壁を飛び越えてきた。


 ……速すぎる!


 さっきまで騎士たちが食い止めていたはずなのに!


「……レオン!」


 セラが叫んだ。


 狼がこちらを見た。


 その青い瞳が、まっすぐ俺たちを捉える。


 ……まずい。


 逃げろ!


 頭では分かっている。


 でも、身体が動かない。


 あまりにも強烈な殺気だった。


 狼が一歩、踏み出す。


 バチッ!


 青い稲妻が地面を走った。


「……っ!」


 その瞬間。


「《影縛り》!」


 セラが叫んだ。


 地面から黒い影が伸び、狼の脚に絡みつく。


 ――グルルッ!?


 狼の動きが、一瞬止まった。


「レオン! 今よ!」


「……っ! うん!」


 俺たちは再び走り出した。


 だが。


 ――バリバリバリッ!


 狼の身体から放たれた稲妻が、影を吹き飛ばした。


「……嘘!」


 セラが息を呑む。


 狼がこちらへ跳躍した。


 ……速い!


 俺は咄嗟にセラを突き飛ばした。


「セラ、避けろ!」


 次の瞬間。


 ――ドォン!


 巨大な前脚が、俺たちの間に叩きつけられた。


 地面が砕け散る。


「……ぐっ!」


 俺は転がりながら距離を取った。


 セラも何とか立ち上がる。


「レオン!」


「大丈夫!」


 ……いや。


 大丈夫じゃない。


 狼は俺たちを見下ろしている。


 あの巨体。


 あの速さ。


 あの雷。


 今の俺じゃ、まともに戦って勝てる相手じゃない。


 それでも。


 俺は木剣を握り直した。


 ……考えろ。


 どうすれば、二人で逃げられる?


     ◇


 セラが俺の隣に立った。


「……レオン」


「何?」


「私、戦えるわ」


 彼女の手のひらに、炎が灯った。


「……分かってる」


 俺は頷いた。


 セラは強い。


 炎魔法も、黒魔法もLv.5。


 俺なんかより、ずっと強力な攻撃ができる。


「でも、倒すことが目的じゃない」


「……え?」


「逃げるために、少しだけ時間を稼ごう」


 俺は周囲を見渡した。


 壊れた外壁。


 中庭の樹木。


 そして、屋敷の裏門へ続く細い道。


 ……あそこだ!


「セラ、影で足止めできる?」


「……長くは無理よ」


「一瞬でいい!」


 俺は裏門を指さした。


「あそこまで走れれば、外に出られる!」


 セラは頷いた。


「……分かった!」


 狼が低く唸った。


 青白い稲妻が、全身を包み込む。


「……いくぞ!」


「ええ!」


 二人は同時に動き出した。


 ――しかし、その瞬間。


 狼の青い瞳が、ひときわ強く輝いた。


 その口元に、青白い雷が集まり始める。


 ……まずい。


 あれは、今までの雷とは違う!


 俺は叫んだ。


「セラ! 伏せろ!!」


 次の瞬間。


 夜の中庭が、青い閃光に包まれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。