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二人だけの時間

「レオン! そこ、足の向きが違うわ!」


「えっ!? こう?」


「違う! もっと右!」


「……こう?」


「それは左!」


「……難しいな、魔法って!」


 翌日の午後。


 俺はセラに、魔力操作を教わっていた。


 だが、相変わらず何もできない。


「……そもそも、足の向きって関係あるの?」


「集中しやすい姿勢の方がいいでしょう?」


「なるほど!」


 俺が頷くと、セラはため息をついた。


「……本当に分かってる?」


「たぶん!」


「たぶんって……!」


 ……いやぁ。


 魔法って難しい。


 剣なら、動かすべき場所が分かる。


 でも魔力は、そもそもどこにあるのか分からない。


「……まあ、いいか」


 俺は手を下ろした。


「今日はここまで!」


「……もう諦めるの?」


「違うよ。今日は終わりにするだけ!」


 セラは一瞬きょとんとした。


 そして、小さく笑った。


「……そうだったわね」


     ◇


「じゃあ、今度は俺の番!」


「……何をするの?」


「剣の練習!」


 俺は木剣を一本、セラに渡した。


「まずは、構えてみて!」


「……こう?」


 セラは木剣を持ち上げた。


 だが、肩に力が入っている。


「もっと力抜いていいよ!」


「……これくらい?」


「そうそう!」


 セラは少し不満そうな顔をした。


「……魔法なら、もっと簡単に的を壊せるわ」


「うん。でも、今日は剣の練習だから!」


「……そうね」


 彼女は小さく頷いた。


 それから、俺の動きを真似して木剣を振った。


 ぶんっ!


「……おっ!」


 思ったより、きれいに振れている。


「セラ、結構上手いじゃん!」


「……当然よ」


 そう言いながらも、少し嬉しそうだった。


 俺たちは何度か交代しながら練習した。


 すると、セラがふと口を開いた。


「……ねえ、レオン」


「ん?」


「あなたは、私が魔法を失敗しても気にしないのに、剣が上手くできると褒めるのね」


「……え? 普通じゃない?」


「……そうかしら」


「うん。できたことは嬉しいし、できないことは練習すればいいだけだし」


 セラは少し考えてから、頷いた。


「……そうね」


     ◇


 訓練を終えた俺たちは、庭園のベンチで休んでいた。


 マリアが用意してくれた果実水を飲みながら、他愛もない話をする。


「ねえ、セラ。王都ってどんなところ?」


「人が多いわ。大きな店もたくさんあるし、劇場や図書館もあるの」


「おお! 行ってみたい!」


「……あなた、本当に冒険が好きなのね」


「うん! まだ行ったことない場所がいっぱいあるから!」


 俺がそう言うと、セラは少し考え込んだ。


「……私は、あまり自由に出かけたことがないわ」


「そうなの?」


「公爵家の娘だから、護衛も必要だし、予定も決められているもの」


「……そっか」


 俺は少し考えた。


「じゃあ、今度この辺を案内しようか?」


「……この辺?」


「うん! 屋敷の庭とか、近くの林とか!」


 セラは少し驚いた顔をした。


「……いいの?」


「もちろん! ガルドさんにも一緒に来てもらえば安心だし!」


 セラはしばらく俺を見つめていた。


 そして、小さく微笑んだ。


「……楽しみにしているわ」


     ◇


 夕方。


 俺たちは屋敷へ戻る道を歩いていた。


「……ねえ、レオン」


「ん?」


「私、あなたといると、少し不思議な気持ちになるの」


「……不思議?」


「ええ。何だか、無理をしなくてもいい気がするの」


 俺は首をかしげた。


「……無理?」


「いつもは、きちんとしていなくちゃって思うの。でも、あなたといると……」


 セラは少し言葉を探した。


「失敗しても、笑っていられる気がするわ」


「……そっか」


 俺は笑った。


「じゃあ、もっといっぱい失敗できるな!」


「……それは違うでしょう!」


 セラが思わず声を上げた。


 俺は笑った。


「冗談だって!」


「もう……!」


 そう言いながら、セラも笑っていた。


 ……うん。


 何だか、いい友達ができた気がする。


 そして、俺は思った。


 いつか冒険者になったら、こんなふうに一緒に笑える仲間がいたらいいな。


 そんなことを考えながら、俺たちは屋敷へ戻った。

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