一年後…7歳の俺
あれから、一年が経った。
「……はっ!」
踏み込んだ足から腰へ、そして肩、腕へ。
身体全体を使って木剣を振り抜く。
かんっ!
ガルドさんの木剣とぶつかり、乾いた音が響いた。
「いい踏み込みです!」
「まだまだ!」
俺は素早く剣を引き、横へ回り込む。
ガルドさんの右足がわずかに動いた。
肩の向きも変わる。
……来る!
俺は一歩下がって攻撃をかわし、そのまま踏み込んだ。
「……せいっ!」
こんっ!
木剣の先が、ガルドさんの脇腹に軽く触れた。
「……おおっ!」
「はっはっは! 一本です、坊ちゃん!」
「やったぁ!」
俺は思わず飛び跳ねた。
もちろん、ガルドさんは本気じゃない。
それどころか、俺に合わせて相当手加減してくれている。
それでも、一本取れたことは嬉しかった。
「いやぁ、見事でした。剣筋もずいぶん安定してきましたね」
「へへっ!」
「特に、足から腰へ力を伝える動きがよくなりました」
そう言って、ガルドさんは俺の頭を撫でた。
「一年間、よく頑張りましたね」
……そう。
俺は七歳になった。
◇
一年前。
俺はガルドさんと大切な約束をした。
無茶をしないこと。
危険なときは逃げること。
そして、自分の帰りを待っている人たちのことを忘れないこと。
あれから、勝手に森へ入るのはやめた。
その代わり、ガルドさんと一緒に野外訓練をしたり、騎士たちの監督のもとで小型魔物との戦闘を経験したりしてきた。
最初は少し物足りなかったけれど、今では分かる。
魔物を倒す技術と、無事に帰ってくる技術は、どちらも必要なんだ。
そして、その一年間で。
俺のスキルにも、大きな変化があった。
◇
「……ステータス」
部屋に戻った俺は、いつもの画面を開いた。
【レオン・グランフェルト】
【年齢:7】
【Lv.3】
【HP:58/58】
【MP:5,920/5,920】
【筋力:13】
【耐久:13】
【敏捷:16】
【器用:17】
【知力:15】
【精神:18】
【保有スキル】
《収集 Lv.1》
《聴覚強化 Lv.3》
《平衡感覚 Lv.3》
《跳躍 Lv.3》
《剣術 Lv.2》
《観察 Lv.3》
《視覚強化 Lv.3》
「……ふふふ」
何度見ても嬉しい。
この一年でレベルは3になった。
さらに、《収集》以外のスキルはすべて成長している。
特に《剣術》がLv.2になったときは嬉しかった。
何百回、何千回と繰り返してきた素振り。
ガルドさんとの模擬戦。
足運びや力の伝え方。
その積み重ねが、ようやく形になった気がしたからだ。
もっとも、相変わらず《収集》だけはLv.1のまま。
「……こいつ、どうすれば上がるんだろうな?」
何度使っても、今のところ変化はない。
まあ、焦っても仕方ないか。
俺は画面を閉じた。
◇
その日の午後。
ガルドさんと一緒に屋敷近くの林を歩いていると、草むらからグラスウィーゼルが姿を現した。
「……あっ!」
以前、苦戦したイタチ型の魔物だ。
俺がガルドさんを見ると、彼は周囲を確認してから頷いた。
「一匹ですね。俺が見ています。やってみますか?」
「うん!」
俺は剣を構えた。
魔物が身体を低くする。
右へ、左へ。
……見える。
《視覚強化》《観察》《聴覚強化》。
三つの能力が、相手の動きを捉える助けになってくれる。
魔物が飛びかかってきた。
俺は半歩横へ動く。
爪が空を切った。
すれ違いざまに剣を振る。
「……はっ!」
ごつんっ!
魔物が地面を転がった。
すぐに起き上がったが、今度は右足をかばっている。
……次は左から来る。
予測どおりだった。
俺は攻撃をかわし、踏み込む。
一撃。
そして、もう一撃。
【グラスウィーゼルを討伐しました】
【経験値を獲得しました】
「……よし!」
以前ほど苦戦せずに倒せた。
「見事でした、坊ちゃん」
ガルドさんが近づいてくる。
「ですが、最後に少し前へ出すぎましたね」
「……あっ」
「もし別の魔物が潜んでいたら、危なかったでしょう」
……確かに。
俺は慌てて周囲を確認した。
「……うん。次は気をつける」
「ええ。それでいいんです」
ガルドさんは嬉しそうに笑った。
「失敗したところを直していけば、もっと強くなれますよ」
「うん!」
俺は剣を収めた。
「じゃあ、帰ろう!」
「おや、今日はもう終わりですか?」
「うん! 兄さんに今日のことを話したいから!」
「はっはっは! それはいいですね!」
俺たちは並んで屋敷へ向かった。
まだまだ、俺は強くなれる。
そして、いつか。
この屋敷を飛び出して、世界中を冒険するんだ。
もちろん、最後はちゃんと帰ってくる。
……約束だからな。




