xX-13 ラファにぃ。
観測者
[あ〜あ、携帯奪われたな。]
ソファーに座る少佐の隣でくつろぐ少年。
徐ろにガラケーをポケットから出した。
直樹
〈なにそれ…〉
相田
《チャット》
少佐にガラケーを奪われる。
相田
《な!なにするんだよ!返せ!》
ラファルサ少佐
《命を晒すな》
相田
《は?》
ラファルサ少佐
《晒されたらどうするつもりだ》
《お前と真彩の命が…》
相田
《……呼び捨てか》
ラファルサ少佐
《没収する》
相田
《随分と仲良くなったようで》
真彩
「直樹〜!手伝って〜!」
相田
「はーい!」
少年は立ち上がる。
去り際に少佐を睨みつけた。
真彩
「ご飯よそって」
相田
「”おじさん”のどれくらい入れればいい?」
ラファルサ少佐
《……ほう》
真彩・Dovira
「ぶっ!」
【ぶふっ!】
吹き出して笑った。
少佐は肩を跳ねらせる。
ラファルサ少佐
《何だ?》
少佐は思わずキッチンの方へ視線を向けた。
真彩
《ソファーから視線が…》
Dovira
【無理ですっ!(笑)】
真彩は咳払いした。
真彩
「名前で呼んであげなさい」
相田
「呼び方わからないんだもん」
《どうだっ》
ラファルサ少佐
《くだらん》
少佐はテレビへ視線を戻した。
真彩は息子へ歩み寄る。
少年はビクッと体を硬直させた。
真彩
「貸してみ」
皿を受け取りご飯をよそう。
真彩
「ラファルサ」
ラファルサ少佐
「何だ」
少佐はテレビから視線を外す。
チラッと真彩を見た。
真彩
「ご飯。この量、食べられるかい?」
ラファルサ少佐
《……》
皿の白米を覗き込む。
ラファルサ
「…ああ」
《飯か》
相田
《鼻詰まってるのか?》
天使はクスクス笑っている。
ラファルサ少佐
《黙れ》
少佐はチラッと少年を見た。
真彩
「OK」
真彩はキッチンへ戻って行った。
少佐はテレビへ視線を戻す。
ラファルサ少佐
《うわっ懐かしい!老けたな…》
相田
《…わかるーシワ増えたよなー》
真彩はテーブルにカレーライスを並べる。
真彩
「直樹、スプーン出して〜」
ラファルサ少佐
《さっきから忙しないなあいつ…》
相田
「おじ…」
直樹
〈おにぃ違う!ラファにぃだよ!〉
相田
「ラファにぃ…ご飯できたよ」
少佐は天使へ視線を向けた。
ラファルサ少佐
《お兄ちゃんっていいたかったのか?……》
少佐はゆっくり立ち上がった。
相田
「ここだよ」
少年は椅子を引く。
少佐は静かに席に座った。
ラファルサ少佐
「ありがとう」
少年も席に座る。
少年は危なっかしくコップへ麦茶を注ぐ。
相田
「どうぞ」
ラファルサ
「あ…ああ」
真彩も席に座った。
真彩
「さて、食べますか」
相田
《真彩の手料理旨そうだぜ!》
直樹
〈せーので“いただきます”だよ〉
少佐はスプーンを持ったまま戸惑い固まる。
相田
「せーの」
真彩・相田
「「いただきます!」」
ラファルサ少佐
「………いただきます」
少佐は恥ずかしそうに呟いた。
Dovira
【少佐、声ちいさーい。かわいーい!】
真彩
《ドヴィラ?》
Dovira
【はい。なんでしょう?】
真彩
《録画出来る?》
Dovira
【何を録画するの?】
真彩の視線は少佐へ。
Dovira
【あ…お察し。フフッ。記念すべき瞬間収めます!】
相田
《うめ〜》
ラファルサ少佐
《……》
《黙って食え…》
真彩の視線に気づく。
ラファルサ少佐
《なんだ?》
《そんなに見つめられると食いづらい…》
不快そうに視線を合わせてきた。
ラファルサ少佐
「なんだ…」
真彩
「お…お口にあいましたか?」
ラファルサ少佐
《……》
《…その聞き方やめろ》
嫌そうな表情。
視線を逸らした。
ラファルサ少佐
「………悪くない」
真彩
「よかった…」
食べ始める。
真彩
《今夜から忙しいぞー…》
大地
「ただいまー」
《ら…ラファルサ少佐》
背後から中佐の声。
食べるのをやめる。
真彩
「おかえりなさい」
大地
「真彩?」
大地は目を見開く。
大地
「おまえ!!」
《ズルい!俺の席!俺のカレー!》
真彩は夫へ駆け寄る。
ラファルサ少佐
《覚悟はできている》
相田
《あ?……なんの?》
少年は口を開けたまま少佐へ視線を向けた。
真彩
「ストップ!!ストップ。ね?」
相田
《だから…なにが……》
中佐は妻を抱く。
真彩
「うわっ!」
大地
「心配したんだからな…」
床に雫が落ちる。
真彩
「ただいま」
大地
「おかえり」
ラファルサ少佐
《………居た堪れない》
相田
《だから…なんで》
少年は少佐を覗き込む。
少佐は肩越しに視線を合わせた。
相田
「ラファにぃ。お腹いっぱいなの?」
ラファルサ少佐
《……》
少年は呆れながら見る。
ラファルサ少佐
「いや…。少しだけな」
相田
「無理しなくていいよ?」
ラファルサ少佐
《……おまえ…》
ため息をついた。
ラファルサ少佐
《子どもに心配されるとは》
少佐は少し表情を緩めた。
相田
《中身は子どもじゃねーけどな!》
少年は無邪気に微笑む。
ラファルサ少佐
《残すのは悪い》
スプーンを口へ運ぶ。
ラファルサ少佐
《美味しい…》
相田
《だろ!》
天使は少年の背に触れた。
直樹
「ラファにぃ…」
再び少年の視線を感じる。
ラファルサ少佐
「どうした」
少年は静かに涙を流す。
ラファルサ少佐
《……え。どうした》
相田
《直樹…俺になにを…》
直樹
「あ…ありがとうございます」
眉をひそめる。
ラファルサ少佐
「ん?」
《なにが…?》
直樹
「ママ…をっ…」
相田
《直樹…おい…》
少佐は息を飲む。
ラファルサ少佐
《……どうすればいいんだ》
無意識にそっと少年の頭を撫でた。
直樹
「ラファにぃ…」
少年は椅子から降りる。
相田
《か…体が勝手に》
強く少佐へ抱きついてきた。
少佐は一瞬、体を硬直させる。
小さく息を吐き、優しく少年の背を撫でた。
ラファルサ少佐
《辛かったな…よしよし》
相田
《つ…辛かったって……いまも辛いし》
ラファルサ少佐
《…何をやっているんだ。俺は……》
真彩
「直樹。どうしたの?」
背後から声。
少年は顔を隠したまま黙る。
真彩
「ラファルサ、食事中にごめんなさい」
ラファルサ少佐
「いや…平気だ」
相田
《………俺…なにやってるんだ?》
ラファルサ少佐
《お前らのよりマシだ》
「このままでいい」
大地
「直樹」
背後から声。
少年は顔を隠したまま首を振る。
ラファルサ少佐
「そっとしといてやれ」
大地
「お前…」
ラファルサ少佐
《この状況で来るのか…?》
大地
「……好かれたな」
少佐は拍子抜けした。
ラファルサ少佐
《…だそうだ》
相田
《直樹に好かれてるんだな》
《俺はどうだろうな?》
ラファルサ少佐
《好かれた?》
天使へ視線を向ける。
天使は微笑む。
ラファルサ少佐
《ラファにぃ…か》
「一人っ子か…」
ぼそっと独り言。
ラファルサ少佐
《弟…いや…》
背後で沈黙。
ラファルサ少佐
《なんかまずいこと言ったか?》
きょとんとする。
直樹
「ラファにぃ…」
ラファルサ少佐
「どうした」
少年の頭を撫でる。
相田
「…お兄ちゃん」
ラファルサ少佐
《…》
《やれやれ。お兄ちゃん…か》
少年は不敵に笑む。
真彩
「あ!」
背後から大声。
少佐は少年の頭を撫でながら声の方へ振り向いた。
真彩と視線が合う。
ラファルサ少佐
「なんだ」
小さく首を傾げる。
真彩
「大地、疲れてるところ悪いんだけど。買い物頼んでいい??」
ラファルサ少佐
《そっちか》
《ややこしい…》
大地
「いいけど、なに買うの?」
真彩
「ああ。ちょっと来て」
夫婦は別室へ消えて行った。
ラファルサ少佐
「直樹だったか?」
少年は顔を上げる。
視線が重なる。
直樹
「そうだよ。ラファにぃ」
涙目で微笑む。
少佐は瞬いた。
少し気恥ずかしくなった。
肩の力を抜き優しく微笑み返した。
夫婦が別室から戻ってきた。
二人へ振り向く。
大地
「ラファルサ。付き合ってもらえないか?」
ラファルサ少佐
「何を…です?」
大地
「買い出し」
ラファルサ少佐
《…中佐と…》
「なぜ俺」
大地
「男同士の話し合い」
ラファルサ少佐
《断りづらい》
「承知した」
大地
「すぐ行くぞ」
ラファルサ少佐
《え…いま?》
真彩
「直樹。食べたならお風呂入りなよ」
相田
「えー!行きたい!」
真彩
「お留守番。明日学校でしょうが」
少年は悔しそうな顔。
ラファルサ少佐
《かわいいやつだな》
少佐は席を立つ。
大地から上着を渡される。
大地
「行ってくる」
ラファルサ少佐
《…留守番してろ》
相田
《ちぇ…》
ラファルサ少佐
《連行されてくる》
真彩
「気を付けてね。いってらっしゃい」
相田
《行ってこい》
少年は少佐へ手を振った。
相田
《さて…風呂だ……れ?》
《直樹?》
部屋中を見渡す。
相田
《おーい》
《……まさか…あいつ》
《ズリーぞ!!》
少年は鼻息荒くしながら浴室へ向かった。
Next Time Hint
――試着室。
観測者
[最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。]




