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俺、“なんで”消えた?〜幼き手は、俺に託された〜  作者: しろ兎
主婦から“平和な”転職できますか?-外伝 Episode I-
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13/18

xX-12 疑いの目。

観測者

[…………。]

[…………ん?]

【20xx年 5月27日 午前7時58分】


児童

「おはようございます」


旗当番

「おはよー」


朝の登校時間。

元気な話し声が通路を満たす。


「ねー聞いた?」


そんな女子の声が聞こえてくる。


――カランッカランッ…


水筒の氷が歩く度に響く。


後ろから誰かが走ってくる。

ランドセル越しに抱きつかれる。


???

「おはよう!!」


少年は二度見した。


大越

「お…おはよう?」


見知らぬ顔。

同年代に見える。


相田

《誰だこいつ?》


天使へ視線を向ける。


直樹

〈知らない…〉


相田

《えっ……》


息を呑む。

立ち止まった。


ゆっくりとその人物へ視線を向ける。

にっこり微笑んでいる。

物凄く嬉しそうに…


大越

「ど…どちら様ですか?」


その人物に強く抱き寄せられた。

耳元に息が掛かる。


???

「私だよ…」


大越

「いや…誰!?」


???

「やだな〜」

「…まあ、いいや……」


少し寂しそうに離れた。


???

「後でね〜」


その人物は通学路を走り出した。


大越

「…あっ」


相田

《不安しかない》


直樹

〈僕もそう思う〉


少年はのんびり歩き出した。


相田

《携帯いじる時間ね―んだけど》


直樹

〈…中休み秘密の隠れ家教えてあげようか?〉


相田

《マジで!?是非是非!》


少年はスキップしだした。


 

◇◆◇



昇降口。


大越

「おはよう」


複数の「おはよう」が返ってきた。

下駄箱に群がる児童。


少年は首を傾げた。


クラスの女子児童

(かおる)?誰だろう…」


大越

「ねぇ…ちょっといい?」


クラスの女子児童

「あっ…ごめん」


「どこう」

「ごめんね」

「邪魔だね」


児童が次々と呟く。


上履きを取り出す。


――トンッ


靴を下駄箱へ入れた。

さっさと立ち去る。


「ねぇねぇ大越くん」


女子児童に呼び止められる。


相田

《めんどくせー》


大越

「なに?」


顔を引きつらせる。


女子児童

「さっき、男子に熱く抱きつかれてたけど…」

「もしかして、こっち派だったの?」


大越

「こっち派?」


眉をひそめる。


女子同士が見つめ合う。


「男が好きなの?」

「BL?」

「男子同士がぁーキャッ」


次々と勝手に盛り上がっている。


大越

「知らん…」


少年は真顔で白けた。

その場を走って逃げた。


「ぁあー!逃げた!!」

「怪しい〜」


勝手にまた騒いでいる。


相田

《だりー…誰が男を好きに…クソッ!》


直樹

〈どんまい〉


相田

《お前喧嘩売ってんのか!?》

《こっちの身にもなれ……》

《悪かった…》


直樹

〈え?なにが?〉


教室へ入る。

机にランドセルを置く。


隣に新しい机がある。


相田

《中山…が転校してくるって本当なのか……》


《ん?》

《え?》


大越

「ええーー!!!」


新しい机を見つめながら大声で叫ぶ。

教室中に響く。


「なになに?」

「どうしたの」

「直樹うるせーよ」

「なんだ?」


教室が騒然とした。


藤田さんが教室へ登校してきた。


藤田

「直樹くんおはよう」

「すごい声だったね」


クスクスと笑われた。


藤田

「あ!この机」

「転校生のだよね?」


「どんな子だろう」


大越

「ああ…ろくでもないから」


藤田

「え?ふっふふふ…」


また、笑われた。


藤田

風来人(ふゆと)さんから聞いてるよ」

「根はすごく優しくて…」


大越

「待った!」


その言葉を遮った。


大越

「なんかの勘違いだ。うん。以上!解散!」


藤田

「……っ…くぅ…ハハハハハ…」


少年は目を見開いて驚いた。


直樹

〈藤田さんって…そういう笑い方するんだ……びっくり〉


相田

《俺も…びっくり。おしとやかだったから…意外》


直樹

〈うん〉


大越

「い…息切れしてない?てか、笑いすぎ」


藤田

「うん…ふっ…ははっ…はぁ……ごめん」


相田

《か…可愛いやつ》


直樹

〈……可愛い……ね〉


――キーンコーンカーンコーン


チャイムが鳴る。


それぞれ自分の席に座る。


藤田

「またね…」


息切れしながら席へ戻って行った。


相田

《大丈夫か?あいつ》


視線で追った。


教室へ北野先生が入ってきた。

その後ろに…


大越

「ああっ!」


思わず立ち上がる。

また、大声出してしまった。


北野先生

「大越くんどうしたの?」


大越

「い…いいえ」


顔を真っ赤にする。

席へ座った。


そいつはこちらを見てニヤニヤする。


北野先生

「おはようございます」

「出席取る前に…見ての通り転校生です」


「名前は…」


黒板へチョークで書き出す。


「なかやま かおるくんです」


先生は中山へ屈む。


北野先生

「自己紹介お願いします」


中山

「はい!」

「私は中山 薫と申します!」

「趣味は人間観察です!」


教室に小さな笑い。


中山

「どうぞ、よろしくお願いします!」


北野先生

「一番後ろ。あそこ」


先生が指を差す。


北野先生

「席空いてるでしょ?」


中山は頷く。


北野先生

「そこが中山くんの席」


中山

「わかりました!」


相田

《すんげー元気だなあいつ》


中山

《だって〜お前に会えるんだもんさ!》


大越

「なっ…」


相田

《能力使うのずりーぞ》


席に近づいてくる。

少年の前で立ち止まる。


中山

「よろしく!」


直樹

〈僕の声は聞こえるの?〉


大越

「話しかけんな…」


小声で言った。


中山

《なんだよ…意地悪〜》


席へ座った。


相田

《可哀想…》


中山

《なにが?》


相田

《お前じゃねーよ》


天使へ視線を向ける。


相田

《視えねーし、聞こえねーってよ》


直樹

〈そうか…ちょっと面倒になったね〉


相田

《ああ…》



◇◆◇



放課後、下校中。


中山

「なぁ、家行きたい」


大越

「嫌だ!」


「お前と居ると変な誤解が生まれるんだよ」


中山

「え…どういうこと?」


大越

「ベタベタしすぎだ」


中山

「私はただ…」


大越

「距離感をな…」


藤田

「ねぇってば」


二人は藤田さんへ振り向く。


藤田

「何度呼んでも反応ないから…」


大越

「ごめん」


中山

「ごめんなさい」


大越

「どうしたの?」


藤田

「直樹くん、今日家行っていい?」


大越

「ごめん…今日はちょっと……」


藤田

「そうか…ごめんね」


大越

「ん?なんで謝るの?」


藤田

「ううん。なんでもないの」


藤田さんは駆けて行った。


大越

「ん?」

「ちょっと…」


中山

「あ〜あ。女を泣かせちゃったな」


大越

「お前の問題だぞ」


中山

「はい?」


大越

「帰る!」


中山

「カエルだけに?」


大越

「うっせ!」


エレベーターのボタンを押す。


[ドアが開きます。]


――バッコン


大越

「直樹…ごめんな」


直樹

〈いいよ。楽しいから〉


大越

「今日は静かに直樹と話してたい」


直樹

〈…ありがとう〉


[ドアが開きます。]


――バッコン


通路を歩く。

ランドセルから鍵を取り出す。


――チリン


牛鈴(ぎゅうれい)()

玄関の鍵を開ける。


靴を脱ぎ揃える。


大越

「ただいまーって誰も居ねーってな」


ランドセルを部屋に置く。

水筒に残った麦茶を飲む。


布団を敷いた。


大越

「めっちゃ疲れた…」


直樹

〈お疲れ様〉


大越

「少し寝ていい?」


直樹

〈いいよ。じゃあ…僕も一緒に寝る〜〉


大越

「おいで」


天使を抱く。

そっと直樹の髪を撫でる。


直樹

〈お兄ちゃんだけだ…僕に触れられるの〉


小さな雫が落ちる。


大越

「俺が護る」


小さな寝息が二つ。

抱き合いながら西日が二人を包みこんだ。



◇◆◇



【20xx年 5月27日 午後5時11分】


宿題をしていた。


――チリンッ


牛鈴(ぎゅうれい)()


直樹

〈ママの音!〉


相田

「なんだって!?」


玄関の鍵が開く。


少年は玄関へ歩み寄る。


ラファルサ

《出迎えか》


相田

真彩(ママ)…」


姿が見えた瞬間、裸足で駆け寄った。

真彩に抱き寄せられる。


真彩

「直樹、ただいま。怖かったよね…」


相田

「……っ…」


泣き出す。


そっと息子の背を撫でた。

真彩は背後へ振り向く。


真彩

「少佐、中へ入って」


ラファルサ少佐

「………ああ」


ゆっくり扉を閉め施錠する。

少佐は少年へ視線を向ける。


視線が重なる。


相田

「…誰」


真彩

「だってさ。ラファルサ少佐」


ラファルサ少佐

《どう説明すれば…》

《……お前…わざとだろ》


相田

《そりゃそうだろ!》


相田

「少佐?」


ラファルサ少佐

《腹立つ…》

《…あ。休暇中だった》


眉をひそめる。


相田

《こいつ抜けてんだろ…》


直樹

〈なのかな?〉


ラファルサ少佐

「ラファルサでいい」


相田

「ラファルサ…不審者…」


ラファルサ

《なぜそうなる》


ため息。


Dovira(ドヴィラ)

【少佐、たじたじに見えますよ(笑)】


真彩

《やめてやれ》

「ラファルサ遠慮なく、中入って」


ラファルサ

《………》

《俺がいるべき場所じゃないだろうに》


相田

「え…?」


ラファルサ

《こいつも引いてるし…》


相田

《は?》


ラファルサ少佐

「帰る」

《送り届けた、これでいいだろ》


真彩

「ここが家だが」


ラファルサ少佐

「帰らせてもらう」


真彩

「じゃあ、どうやって?」

《ただ気まずくなったんだろうな》


ラファルサ少佐

《それなんだよな……》


相田

《なに一人漫才してんだよ》


Dovira

【少佐!可愛いですよー!って聞こえてないか。】


真彩

《ドヴィラ?》


Dovira

【何でしょう】


真彩

《ちくったろうか?》


Dovira

【いいですけど。知りませんよ】


真彩

「ラファルサ」


ラファルサ少佐

「何だ」


真彩

「ドヴィラが可愛い〜!ですって」


ラファルサ少佐

「……Dovira。後で覚えておけ」

《復帰したら覚悟しとけよ》


Dovira

【嫌な予感しかしません】


真彩

《知らん》


直樹

〈なんかママたち楽しそうだね〉


相田

《だな…》


二人は靴を脱ぎ、リビングへ向かった。


ラファルサ少佐

《遅くなってすまなかった》


天使へ視線を向けた。


直樹

〈全然!ありがとう!ラファにぃ〉


相田

《ラファにぃ?》


真彩

「ソファーに座ってくつろいでて。疲れたでしょう」


ラファルサ少佐

《確かに疲れた。お言葉に甘えて…》


《モニター?いや…テレビなのか…》


相田

《やっぱ抜けてるだろ》


直樹

〈学校のプリント渡さないと!〉


相田

《確かに!》


ランドセルから提出物を取り出す。


相田

「ママー」


学校からの手紙とプログラム。


真彩

「………」

「運動会!!!」


相田

「明々後日だよ。ママ来るでしょ??」


真彩

「そりゃ、いくに決まってるでしょう!」


真彩は急いで手紙を開ける。


真彩

《運動会前日準備。当日見回り。面倒だけどやらねば》


Dovira

【可愛い字だね。】


プログラムの空白に

”ソーラン節見てね。”

――生前の直樹の字。


真彩

《うん。癒される》

《ラファルサどうしよう。大地と話し合いかな》


Dovira

【少佐を連れてくの?】


真彩

《もちろん!》


Dovira

【ぶはっ!想像したら吹き出しちゃいました。】


真彩

《ドヴィラ?》


Dovira

【はい!】


真彩

《私もだ》


真彩は突然吹き出す様に笑い出した。

少佐は思わずソファーから振り返る。


ラファルサ少佐

《変なやつ》


相田

《あいつ連れてくのか…》

《…って……は?》


直樹

〈ラファにぃが…〉


直樹・相田

〈《お泊り!?》〉


Next Time Hint

――ママのカレー。

観測者

[最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。]

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