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俺、“なんで”消えた?〜幼き手は、俺に託された〜  作者: しろ兎
主婦から“平和な”転職できますか?-外伝 Episode I-
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10/18

xX-09 父の温もり。

観測者

[主婦から“平和な”転職できますか?]

[wW-15の裏側です。]

――コンッコンッ


医務室の入口を叩く音。


医療班

「どうぞ」


ラファルサ少佐

風来人(ふゆと)…」


風来人は声の方へ振り向く。

少佐は、少年へ視線を向ける。


ラファルサ少佐

「具合は大丈夫か?」


相田

《俺なら「おう」って言うが…》


直樹

〈僕なら「うん」だよ〉


相田(直樹の姿)

「うん」


吉草(よしぐさ)

「……この子が」


ジィは直樹の前へ屈んだ。


吉草

「ボク、名前は?」


相田

《大越 直樹って答えればいいのか?》


直樹

〈そうだね〉


相田(直樹の姿)

「大越 直樹です」


ジィは首を振った。


吉草

「違う。お前の名前だ」


相田(直樹の姿)

「え…」


「ぼ…僕は…」


言葉が詰まった。


吉草

「父親が戻ってくる前に教えてくれないか」


相田(直樹の姿)

「あ…相田 (ひかる)…です」


吉草

「相田 輝。…忘れるな。絶対だぞ!」


少年は頷いた。


吉草

風来人(ふゆと)。犯人を追うぞ」


風来人

「よっし!任せろ!」


気合を入れた。


相田(直樹の姿)

「僕がわかるの?」


吉草

「天使の姿は視えない。だがっ」


両肩を掴まれる。


「お前が誰だかわかる」


揺すられた。


風来人

「味方が増えたね」


ラファルサ少佐

「気を付けて…」


吉草

「そっちもな!」


ラファルサ少佐

「はい!」


吉草

「風来人、行くぞ!」


風来人

「もう行くの!?」


吉草

「もう一匹、放置できんだろう」

「聴き込むぞ!」


風来人

「りょーかい!」


汐川(しおかわ)さん」

「ケロちゃんのこと、よろしくお願いします!」


頭を下げた。


ラファルサ少佐

「ああ」


風来人はジィの肩に触れ、静かに姿を消した。

少年と少佐は二人を見送った。


ラファルサ少佐

「相田」


静かにベッドに座る少年へ屈んだ。


相田(直樹の姿)

「……なに?」


少佐は、少年の目の前にガラケーを差し出した。


ラファルサ少佐

「お前のだろ」


少年は息を呑んだ。


相田(直樹の姿)

「おっ…ぼ…僕のだ」


ラファルサ少佐

「……相田」

「俺の前では演技しなくていい」


相田(直樹の姿)

「でも!」


少佐は少年の体を抱き寄せた。


ラファルサ少佐

「|お前はここで生きている《・・・・・・・・・・・》」


耳元で囁いた。


相田(直樹の姿)

「…っ…!!」


少佐を突き放した。


相田(直樹の姿)

「おっ…僕は!直樹を!」


大声を張り上げた。

――瞬間


???

「どうした!?」


中佐の姿。

早足で駆け寄ってくる。


少年は瞬時にガラケーを隠した。


相田(直樹の姿)

「ぱ…パパ!」


ふわっと抱き寄せられる。


大地

「体調は大丈夫か?どこか痛くないか?怖くなかったか?」


相田(直樹の姿)

「うん。大丈夫」

《苦しい…》


直樹

〈あはは!いつものパパだっ〉


ラファルサ少佐

「チャーリー中佐。対象は…」


大地

「峠を越えた。目覚めるのを待つだけだ」


直樹

〈よかった…ママ生きてる〉


相田

《死にかけたってことか………えっ!?》

真彩(ママ)が死にかけたの!?」


中佐は驚き、少年の顔を覗き込んだ。


大地

「なにをっ!……もうわかる歳か…」


「ああ…でも、もう大丈夫だ」

「すぐに目が覚めるよ」


少年の頭を撫でる。


大地

「ラファルサ。対象の様子を看ててもらえないか?」


ラファルサ少佐

「…はい」


大地

「私は息子を…」


ラファルサ少佐

「念の為、そちらへ偵察部隊を派遣します」


大地

「……すまない」


少年の背を撫でる。


相田

《ちょっとこいつ抜けてるからな…》


直樹

〈……そうかな?〉


天使は首を傾げた。


大地

「直樹。帰ろう」


相田(直樹の姿)

「ま…ママは!」


大地

「帰ろう…」


相田(直樹の姿)

「でも!」


大地

「……帰る」


少年と中佐は音もなく姿を消した。


ラファルサ少佐

「………」


直樹

〈…あ〜あ〉

〈やっぱりね!行っちゃったっ!〉


天使は翼を羽ばたかせて呆れている。


直樹

〈ねぇ…〉


ちらっと天使へ視線を向けた。


ラファルサ少佐

『なんだ』


直樹

〈僕、ママに会いたい〉


ラファルサ少佐

『ついて来い』


医務室から出る直前で振り返る。


ラファルサ少佐

「おいっ」


医療班と視線が合う。


医療班

「はい!!」


ラファルサ少佐

「会話聞いていたのだろう?」


医療班

「はっはい…」


ラファルサ少佐

「内密に頼む」

「特に中佐に漏れたら…わかってるだろうな」


鋭く光る視線。


医療班

「ひぃ!はい!!わかってます!!」


少佐は医務室を去って行った。



◇◆◇



監視塔。


スライドドアを開く。

足音はしない。


――ポッ ポッ ポッ ポッ… 


規則正しく心電図のモニター音が部屋に響く。

ベッドに静かに寝息を立てている、真彩。


直樹

〈ママ!!〉


天使はふわりと真彩の傍へ降り立つ。

母親の頬を撫でる。


ラファルサ少佐

『触れられるのか?』


天使は首を横に振った。


直樹

〈感触はないよ…でも〉

〈ありがとうございます〉


ラファルサ少佐

「……」


少佐は目頭を押さえた。

小さくため息。

パイプ椅子を取り出し座った。


しばらく二人は黙り込んだ。


少佐は俯く。


???

【ねぇねぇ、なにやってるの?】

【少佐。この子だあれ?】


ラファルサ少佐

Dovira(ドヴィラ)黙ってろ』

『幽霊に話しかけるな。真彩が怖がるだろ』


Dovira(ドヴィラ)

【幽霊さん?】

【いま、マヤはノンレム睡眠中だよ。】


【幽霊さんこんばんは!】


直樹

〈僕のことわかるの?〉


Dovira

【子どもっぽいですね。】

【喋れないようです。】


ラファルサ少佐

『お前が聞こえていないだけだ』


Naparnik(ナパルニク)

【Dovira。黙っていられないのですか?】


Dovira

【先輩。会話するのお久しぶりですね!】


Naparnik

【だから…。】


ラファルサ少佐

『黙れ!』


Dovira・Naparnik

【【……。】】


直樹

〈僕には聞こえるのに…この声なに?〉


ラファルサ少佐

『AIだ。主に仕事で使う…これでわかるか?』


直樹

〈うん。ありがとう〉


〈ねぇ…ラファ…ラファ…〉

〈ラファにぃ…〉


天使は顔を赤くした。

少佐も少し頬を赤くする。


ラファルサ少佐

『なんだ…』


直樹

〈ママを助けてくれて、ありがとう〉


ラファルサ少佐

『……ど…どういたしまして』


ふさっと小さな体が少佐を包み込む。


直樹

〈僕のこと見捨てないでくれて、ありがとう〉


ラファルサ少佐

『っ…!』


少佐の頬から雫が落ちた。


Naparnik

【レム睡眠に入りました。】


ラファルサ少佐

『父親の元へ一旦帰れ…』

『必ず俺が、母親を無事に連れて帰る』

『だから、向こうで待っててくれないか?』


天使は言葉に詰まった。

強く頷いた。


ラファルサ少佐

『Dovira。無言対決だ。ひとことでも、喋ったら負けだ。いいな?』


Dovira

【面白そう!やりますっ!】


ラファルサは天使へ強く頷く。


天使は母親へ振り返る。

そっと頬へキスをした。


翼を羽ばたかせ姿を消した。



◇◆◇



大越家。

直樹の寝室。


――僕の体

パパの腕の中で、眠ってる

気持ちよさそうだな…

僕って…寝相悪かったの?


布団の端を摘もうと試みる。

できなかった。


天使は小さく体を丸めて相田の隣で眠りについた。



◇◆◇



隣に少佐。

彼は俯いている。


真彩

《そんな顔するのか》

《なあ、ドヴィラ》


応対がない。

少佐と視線が重なる。


真彩

「何があった」


視線を外された。


真彩

《聞こえない。あいつの声が…》

《こいつ、ガチで無口なのか》

「ドヴィラどうした」


「だんまりか」


静寂。


真彩

「答えろよ」


「返してくれるのか?」

「……家族の元へ」


《お前…》


ため息。


真彩

「だから…そんな顔するな」


少佐は視線を合わせてくれない。


真彩

《なんとなく、なんとなくだが…》

「ドヴィラ…」


俯く。


Dovira

【ふふふっ。あはははっ!!】


真彩

「え??」


Dovira

【無理です!私…耐えられません!!】


隣から大きなため息。


Dovira

【おはようございますっ!!マヤ!!さっきは、ごめんなさい。】


真彩

『どういうことだ』


ラファルサ

『ドヴィラに聞け』


Dovira

【無言対決です!!】


真彩

《ドヤるな…。》


Dovira

【楽しかったです。】

【少佐。私のわがままにお付き合いいただき、ありがとうございました。】


真彩

《私で遊んでたのか?》


Dovira

【Ping回復したので、つい…。てへっ。】


真彩

《何が…”てへっ”だよ。》

「ラファルサ少佐」


ラファルサ

「……ん。…よく戻った。新人」


静かに口角だけ少し動いた気がした。


Next Time Hint

――担任教師。

観測者

[泣いてないもん……。]

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