恋せよ、姉ちゃん⑥
「次男くんのお兄さんってどんな人なの?」
美園の可愛い瞳がこちらを見ている。
こんな幸せがあっていいのだろうか。
「兄は…」
一歩家の外に出ればクールなイケメンだ。
ただ家では…ウサ耳がついたパーカーを着て、「つーちゃん」と呼ぶ姿はまるで別人だ。
「うーん・・・。ギャップがあるタイプかな」
「ギャップがあるんだ!次男くんと似てるね」
「え?!俺なんて見たまんまだと思うけど」
「そんなことないよ。次男くんってあまり派手に騒いだりするタイプじゃないでしょ?グループワークの時もみんなの意見を静かに聞いてることが多いなって思ってたんだけど、お姉さんを手伝うために自らお姉さんの職場でバイトしたり、京都旅行も考えてくれたり、行動力あるなって思って」
美園に褒められるなんて嬉しすぎる。
他にも登る思いとはこういうことをいうのだろうか。
姉のためにアルバイトしてるわけではないが、美園に褒められるならそういうことにしておくべきだろう。
「ありがとう」
「どういたしまして」
ニコッと笑うと、少し膨らむ頬がまた可愛い。
本当にこんな幸せでいいのだろうか。
「お兄さんはどんな物が好きなの?」
「兄ちゃん?可愛いものが、この世で一番好きだね」
「可愛いもの?なんだか意外だね」
兄の可愛い物好きは外では隠していたのを忘れていた。
マズイとは思ったが、言ってしまったのは仕方ない。
「うん、ウサギとかクマとか動物のキャラもんが好きそうなんだよね」
「じゃあ、これはどう?」
可愛らしいマスコットが新選組の服をきたぬいぐるみをもって微笑む。
「すごく可愛いよね?」
(君が一番かわいいよ)
なんて口が裂けても言えない。
その後も次男は美園とああでもない、こうでもないと言いながら、お土産を選んだ。
歩夢は、自分だけお留守番と知って相当いじけていたので、お土産をたっぷり買って帰らなくてはならない。
そう言い訳しながら、次男は美園が勧めるものをどんどん買い漁っていった。
17時になって清水寺に行くと、かなりの人がすでに並んでいる。
「すげぇな」
浩太は感嘆の声をあげた。
「この時期だけの期間限定ですからね」
桃子はそう言いながら一眼レフカメラを取り出した。
「気合いがすごいですね」
「この時期だけだと思うと絶対綺麗に撮りたくて」
照れくさそうに笑う桃子に「いいと思います」とグッドのサインを作ると、嬉しそうに笑った。
神原に「さぁ、並ぼう」と促されて、列に向かって歩き始めた。
ゆっくり、ゆっくり列が進んでいく。
その間も6人でいると、色んな話題がでて会話はつきない。
「あ、綺麗・・・」
叶夢の声で空を見上げると、満月が出ている。
「本当だ。綺麗ですね、叶夢さん」
神原が叶夢に微笑みかけると、「えぇ」そういって叶夢はまた満月を見上げた。
その横顔は次男の見たことのない顔だった。
やっとのことで清水寺に辿り着くと、想像以上に幻想的で綺麗な景色が広がっていた。
こういった寺社仏閣に来ると、厳かな気持ちになる。
「写真撮ってやるよ」
浩太に言われて、美園と2人で並ぶ。
肩が触れそうなほど近い。
美園のふわふわな髪がすぐそこにある。
なんとか笑顔を作って写ろうとすると、「私達も入るわ」「悪いねー」と強引に叶夢、神原が入ってきた。
ツーショットではなくなったが、あれ以上美園の近くにいると、好きなのがバレそうな気がしたので少しホッとしていた。
近くの旅館に着くと、男子と女子で部屋をわけて一旦それぞれの部屋に荷物を置くことにした。
夕飯は男子の部屋で一緒に食べる予定だ。
叶夢が美園に何かしないか心配ではあったが、女子部屋に行くわけにはいかない。
「ねぇ、次男くんって美園ちゃんが好きなの?」
部屋に着くなり、神原に聞かれて、答えに戸惑っていると、「そうっすよ」と浩太が返事をした。
「おい!なんでお前が答えるんだよ」
「別に隠すことじゃないだろ?」
「そうだけど・・・」
「神原さんは、次男の姉ちゃんのことどう思います?」
まさかの核心をつく質問に奏汰が息をのむ。
「そうだね、素敵な人だと思うよ」
「素敵な人っていうのは恋人にしたいなってくらいですか?」
浩太がさらに質問を重ねる。
「僕みたいな人間は無理だよ」
神原はそう言うと、「さぁ女子が来るまでに荷物を端に寄せて」と言って話を終わらせた。
旅館の夕食は豪勢で、かなり美味しかった。
アルバイト代のほとんどが飛んでいったが、これだけ美味しい料理なら後悔はない。
そして何より美味しい料理を食べて、嬉しそうに笑う美園が見れればそれでいいのだ。
次男はビールを飲みながら、旅行に来てよかったなぁと改めて思っていた。
夕食後はそれぞれお風呂に入って、また22時ごろに男子部屋に集合してお酒でも飲みながら翌日の予定を確認することになった。
「神原さん行かないんですか?」
旅館の温泉に入ろうと、神原を誘ったが「僕はあとではいるよ」と断られてしまった。
仕方なく2人で温泉に入って、しっかり温まった後、お風呂上りにお土産でも見るかとロビーに向かうと、桃子が座っていた。
「白井さん?」
次男が声をかけると、「お風呂上がりですか?」と聞かれたので、なんとなく二人は桃子の向かい側のソファーに座った。




