恋せよ、姉ちゃん⑤
「なんでこうなった?」
次男は目の前のメンバーを見ながら、ため息をついた。
浩太、美園、叶夢、桃子、そして―
「次男くんのお友達かー!よろしくね〜」
神原が元気よく、浩太と美園に声をかけている。
「私まで来てしまってもらってすいません」
桃子が小さくなっている。
「いいのよ、皆で楽しみましょ」
叶夢はそう言って新幹線のホームに向かって歩いていく。
人数が増えて宿の変更や新幹線の予約などどれだけ大変だったかー
ため息をつきながら、前を向くと神原と美園が楽しそうに横に並んで話している。
「嘘だろぉ・・・」
美園の可愛い笑顔が神原の方を向いている。
悔しいが神原は背も高く、かわいい美園とお似合いだ。
「はぁ・・・」
「おい、次男」
浩太が周りに気づかれないように小さな声で声をかけてくる。
「そう落ち込むなよ。俺がちゃんと蛯名と上手く行くように手伝ってやるし、それにあっちも上手くいくんじゃないか」
浩太の視線の先には、楽しそうに神原と美園の間に叶夢が入って話をしている。
「ってことだから、楽しむぞ」
浩太に促されて、新幹線に乗り込んだ。
車内は自己紹介やら最近の話題で一通り盛り上がり、無事に京都に辿り着いた。
京都駅は人がかなり多い。
観光客も日本人だけじゃなく、海外の人も多く、ここは日本なのかと思うほどにいろんな言語が飛び交っている。
「じゃあ早速観光に行きますか!」
浩太の一言で、一同はまず八坂神社へ向かうことになった。
桃子が大学生の女の子が来るならおすすめだと選んでくれていた。
「縁結びの神様がいるんですね」
美園は嬉しそうにそう言い、本殿に着くと隣で手を合わせて、熱心に祈っている。
次男は祈るふりをしながら、横目で美園を見てみる。
閉じた目のまつ毛がすごく長い。
寒さでほんのりピンクになった頬が可愛らしい。
(何祈ってんのかな…)
そんなことを思ってると、後ろから小突かれた。
「次男、終わったならすぐ変わりなさい。周りに迷惑でしょう」
叶夢に睨まれて、仕方なく離れた。
叶夢と神原が並んで拝んでいる。
身長差も少しだけ神原が高くていい感じだ。
案外お似合いなのかもしれない。
注意してきたくせに姉はしっかりお願いをしている。
内心腹を立てながらも、神様に姉がうまくいくようにと、心の中で祈った。
「何これ、やばい」
浩太が絵馬を読んでは、はしゃいでいる。
誰と誰が別れますように、不倫をやめさせてほしい、奥さんと別れてほしいとか人間の暗い感情が込められていて、ぶらっと体が震える。
「ここは縁切寺で有名な神社らしいぞ」
次男がネット記事を読みながら説明をした。
安井金毘羅宮。
関西では有名な縁切り寺だ。
良縁を結び、悪縁を経つというのが本来の目的なわけだが、悪縁を切る方ばかりが注目されている。
そのせいで夫がおどろおどろしい願いがたくさん絵馬に書かれている。
「ねぇねぇ、縁切り縁結び碑だって」
美園に呼ばれて近づくと、大きな石に穴が開いている。
人が一人ぎりぎり通れるサイズだ。
「願いを書いた形代をもって、表からくぐって悪縁を切って、裏からくぐって良縁を結ぶそうですよ」
桃子が石碑の説明を読むと、「やろうぜ」と浩太が早速形代を書きだした。
それぞれがキャッキャ言いながら通り抜けると、最後に碑に形代を貼り付ける。
姉ちゃん何を書いたんだ?と次男が覗き込もうとすると、「痛っ」叶夢が見えないところで足を思いっきり踏んでくる。
「次男、早く去りなさい」
顔を赤らめながらシッシっとやられて、願いは見れなかった。
折角だから結婚したいとか書いておいてくれたらいいけど、と思いながら、次の目的地である清水寺に向かった。
この時期、清水寺ではライトアップがされる。
その中に佇む美園を想像するだけで、ドキドキしてくる。
清水寺が近づくと、二年坂、三年坂という場所があり、両サイドに店があって、見ているだけで楽しい。
「白井さん、彼女にプレゼント買いたいので、一緒に選んでくれません?」
浩太が桃子に声をかけて、少し離れていく。
浩太はアイコンタクトで「頑張れ」と言っている。
(よし・・・!)
「あの、美園ちゃん、僕も兄さんのお土産選びたいんだけど、一緒にいい?」
「いいよ!」
美園が満面の笑みで返事をしてくれる。
これだけで、京都に来たかいがあったというものだ。
「それぞれ買うものがあるなら、17時に清水寺の前に集合ね」
叶夢に言われてそれぞれ分かれていく。
叶夢も神原と店に入っていくのが見えた。
(最高じゃん)
美園と2人でお土産店に入る。
その様子を神原がじっと見ていることに次男は気づかなかった。




