第39話 白と黒、再び
地図で決めた合流地点は、魔法の国へ続く古い平原道だった。
アルブたちは東から、マブロたちは西から、同じ道へ向かっていた。
砂煙が見えた。
砂漠の端ではなかった。港町を出た平原の道で、前方から砂煙が来た。荷を積んだ一行の砂煙だった。
ウラが「人が来る」と言った。
ソウダが目を細めた。
アルブは、砂煙の前に立っている人間を見た。
黒かった。
砂まみれの黒が、前から歩いてきた。
「遅い、白」
マブロが言った。
「黒こそ、砂まみれだ」
アルブが答えた。
それだけだった。
二人はそのまま並んで歩き始めた。同じ方向へ。どちらが合わせたとも言えない歩き方で、自然に並んだ。
仲間たちが後ろでやりとりしていた。
「あれで再会なの?」とウラが言った。
「そういうものだ」とセンが答えた。初めて会ったはずのウラに、センが答えた。
初めて会った者同士なのに、四人は不思議と遠慮が少なかった。
それぞれが、自分の土地で同じようなものを見てきたからかもしれない
「知ってるみたいに言う」
「なんとなく分かる」
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互いの仲間を紹介したのは、昼の休憩のときだった。
アルブがウラとソウダを紹介した。マブロがニルとセンを紹介した。
「水の国の舟守と、土の国の農師か」
マブロはウラを見た。
「アルブが詰まるたびに言葉を補うやつか」
「詰まるって言い方はしてない」
ウラが言った。
「でも合ってる」
「……まあ」
「俺も似たことをされたことがある。ただ、俺が詰まるのとは違う。アルブが詰まるのは言葉が足りないからで、俺が止まるのは考えが追いつかないからだ」
「それを今、追いついて言えてる」
ウラがマブロに言った。
マブロが少し黙った。
「……そういうことか」
センがソウダに近づいていた。
「あなたが土を読む人ですか」
「読む、というより、覚えてる」
「足の裏で?」
「足の裏と、鼻と、手のひら。三箇所で同時に読む。だいたい合ってる」
「風も同じだ」
センがソウダに言った。
「首の後ろと、耳の後ろと、手の甲で読む。全部合わせると、三日後の風まで分かる」
「若いのに知ってるな」
「土と風、似てますか」
「似てる」
ソウダが素足で地面を踏んだ。
「どちらも、運ぶものが消えると死ぬ」
センが目を細めた。二人が何か話し続けているのを、アルブは少し離れて見ていた。
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二日後。
魔法の国の境界が見えてきた。
境界に魔法の灯台があった。灯台の光が、昼間でも輝いていた。
砂漠の夜に灯台の光を見たときを、アルブは思い出した。あのときの光は優しかった。
ばーちゃんの思念が宿っていた。この灯台の光は違った。強く、均一で、揺れない光だった。
マブロが横に来た。
「変わったな」
アルブが言った。
「何が」
「待てるようになってる」
マブロは少し黙った。
「……言うな」
「本当のことだから言う」
「お前こそ」
「俺も変わった」
「言い返す速度が上がった」
「そうかもしれない」
マブロが灯台の光を見た。
「ニルが教えてくれた。強くあることより、届けることの方が難しいって。俺はずっと、強くあることしか考えてなかった。届けることを、初めて考えた」
「俺はずっと、受け止めることしかできないと思ってた」
「今は」
「今も受け止めることが主だ。でも、受け止めながら、少し声が出るようになった」
マブロが鼻を鳴らした。
「成長したな」
「お前もだ」
二人の間を、風が通った。
西から来た風だった。
乾いた風だったが、かすかに水の匂いが混じっていた。
ウラが「水の匂い」と言った。
センが「西の風の中に湿気がある」と言った。
マブロとアルブは何も言わなかった。
ただ、風が通り過ぎるのを、並んで受けた。
魔法の国の門を前に、全員が立った。門の高さは王都の倍はあった。
門の装飾が光っていた。光の橋が、門の上で虹のように架かっていた。
センが
「でかい」
と言った。
ニルが
「炉の規模が想像できる」
と言った。
ソウダが
「土の匂いがしない」
と言った。
ウラが
「水の匂いも違う」
と言った。
アルブとマブロは顔を見合わせた。仲間たちが、もう読んでいた。
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ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第39話では、別々の国を巡っていたアルブとマブロが、ようやく再会しました。
久しぶりに顔を合わせても、大げさな言葉はありません。
遅い、白。
黒こそ、砂まみれだ。
それだけ言って、二人はまた自然に並んで歩き始めます。
離れている間に、アルブはウラとソウダを、マブロはニルとセンを仲間にしました。
二人だけで補い合っていた役目が、今では六人のつながりへ広がっています。
アルブは内向的なまま、以前より声を出せるようになった。
マブロは無鉄砲なまま、立ち止まり、待つことを覚えた。
性格が別人になったのではなく、それぞれの隣に新しいものが増えたのだと思います。
次回、六人は魔法の国へ入ります。
そこには、王都以上に美しく、便利で、豊かな都が待っています。
双子の再会や、新しい仲間同士のやり取りが印象に残りましたら、感想で聞かせていただけると嬉しいです。
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