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屑守の真法拾い 〜魔法は世界の未来を前借りする禁術でした。拾ったガラクタで失われた役目をつなげ返す〜  作者: 妖怪ステーキ


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幕間 四国の仲間紹介

挿絵(By みてみん)


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**砂庭船サニワ 増員記録**

**聞き書き:ガラム**

**記録日:白と黒の二人が旅立ってから、二か月ほど後**


---


風の国から届いた手紙に、見知らぬ名前が三つ書いてあった。

水の国の話をした商人からも、名前を一つ聞いた。

合わせて四人。

あいつらが拾ってきた、らしい。


以下、聞き書きする。

俺は会っていないので、正確ではないかもしれない。

ただ、話を聞く限り、悪い人間ではない。

それだけは分かる。


---


### ウラ 十七歳 水の国・舟守の少女


**見た目**


小柄で、肩幅が広い。水路で竿を使い続けた肩だという。髪が短く、いつも濡れている。乾かす暇がないのではなく、乾いた髪が不快らしい。日に焼けた顔に、薄い傷が一本ある。幼い頃、水路の石に打ちつけた跡だという。


**性格**


即断する。考えないのではなく、考えるのが速い。迷ったときは「とりあえず動く」方を選ぶ。人に言葉を補う才能がある。相手が言えないでいることを、相手の代わりではなく相手の隣で言う。


**役目**


水路での荷運びと案内。水の国の水路ならどこでも渡れる。潮の向き、流れの速さ、季節ごとの水位の変化を体で知っている。


**アルブとの関係**


アルブが「きれいすぎる水に違和感がある」と言ったとき、その違和感の中身を先に言葉にした。アルブが詰まるたびに、隣で補う。補うのが上手いのは、アルブの言いたいことを奪わず、後ろから押すからだという。


アルブが土の国へ向かうと言ったとき、「一緒に来る」と即答した。理由を聞かれたら「あなたが詰まったとき、私が言葉を補う。それだけでいい」と言ったらしい。


**教えたこと**


水が濁ることの意味を、水路で生きてきた言葉で教えた。「清潔な水には命の連鎖がない」という理屈を、「子供のころは水路にもっと生き物がいた」という記憶で言い換えた。理屈より記憶の方が届く、ということをアルブに示した。


補足:アルブが「ウラは喋るのが得意だ」と言ったのに対して、ウラは「あなたが喋るのが苦手なのを知ってるから、自分が速くなっただけ」と答えたという。この二人は合っている。俺にはよく分からんが、たぶんそうだ。


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### ソウダ 七十三歳 土の国・老農師


**見た目**


小柄。背が丸い。素足で畑を歩く。靴を嫌う。「土の感触が靴越しだと分からない」という理由らしいが、七十三年間素足で歩いた結果、足の裏が革のように厚くなっている。手は節が太く、皮が厚く、土の色が染み込んで洗っても落ちない。


白髪だが、眉だけがまだ黒い。眉が黒いままの老人は長生きすると、土の国では言われているらしい。本人は「迷信だ」と言っている。ただし、七十三歳まで生きている。


**性格**


必要なことしか言わない。必要なことは的確に言う。無駄がない。若い頃は口が悪かったらしいが、七十年かけて削ぎ落とされて、今は短く鋭い言葉だけが残っている。


怒ることがほとんどない。ただし、土を粗雑に扱う人間に対してだけは、黙って立ち去る。それがソウダにとっての怒りの表現らしい。


**役目**


土の記憶を経験で知ること。どの畑が疲れているか、どの土が休みを必要としているか、足の裏と手のひらで分かる。真法ではなく、七十年の積み重ねで分かる。


**アルブとの関係**


アルブが「土を休ませる必要がある」と言ったとき、「分かった」と即答した唯一の農民だった。他の農民が怒り、説明を求め、待てないと言う中で、ソウダだけが黙って頷いた。


後で理由を聞かれたら「分かっていたからだ。土が疲れていることは、俺が一番知っていた。ただ選択肢がなかった。お前が選択肢を持ってきた」と答えたという。


アルブが「一緒に来てほしい」と言ったとき、「どこへでも行く」と言った。七十三歳が、どこへでも行くと言った。


**教えたこと**


「実らせるだけが土の仕事じゃねえ。抱いて、眠らせるのも、土の仕事だ」


この言葉を聞いたとき、アルブの喉の奥の何かが緩んだという。アルブ本人はそう言っていたらしい。何が緩んだのか聞いたら「すぐに救えなくていい、という気持ち」だと言った。


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### ニル 二十三歳 火の国・火の巫女


**見た目**


細身で背が高い。赤い布を頭に巻いている。布は百年以上前から火の巫女の代々が受け継いできたものらしいが、洗うたびに少しずつ色が落ちて、今は本来の赤より薄くなっているという。本人は「薄くなった分、次の色を染め直せる」と言っている。


手に炉の管理をしてきた跡がある。熱に触れ続けた跡が、指先に残っている。熱さに強いのではなく、感覚が変わったという。


**性格**


静かで正確。感情を抑えている、のではなく、感情を正確に使う人間だという。怒るときは怒る。悲しいときは悲しむ。ただし、それを行動の理由には使わない。行動の理由は常に「炉のため」か「火の国のため」か「次の世代のため」のどれかだという。


マブロに最初に会ったとき「修理する、というのはどういう意味ですか」と聞いた。マブロが「暴走を止める、火の強さを落とす」と答えたとき、「それでいいと思っているんですか」と返した。


**役目**


中央炉の管理。代々受け継いできた火の巫女の技術。魔法ではなく、炉の構造と火の性質を深く知ることで炉を制御する。真法と近いが、真法ではない。経験と知識で火を読む。


**マブロとの関係**


マブロが「炉を壊さずに変える方法」を探しているとき、方法ではなく情報を提供した。二百年分の炉の歴史を一夜で語った。その情報が、マブロが熱の分散という方向を見つける土台になった。


「壊さない強さ」という概念を、マブロが最初に触れたのはニルを通じてだったという。ニルが「炉を破壊せず変えることを探してきた」と言ったとき、マブロは初めて「壊すことが強さじゃない場合がある」と実感したらしい。マブロの話では、そういうことらしい。


百年守られてきた火種をマブロに渡したとき、「燃やすためじゃない、届けるために持っていけ」と言った。


**教えたこと**


「火は人を集める。燃え広がるのではなく、届けた先に新しい火が生まれる」


この言葉が、風の国での「届けること」とつながった。ニルが火の側から言い、センが風の側から言い、二つが合わさってマブロの中で形になったという。


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### セン 十三歳 風の国・風読みの少年


**見た目**


痩せている。背は低い。ただし、立ち方が違う。風を受けるために、体の向きを常に調整している。意識していないのに、体が自然に一番風を感じやすい角度を向く。


細い骨を糸で繋いだ風読みの道具を持っている。自作した。材料は近くの朽落で拾ってきた鳥の骨だという。風が来ると骨が揺れる。揺れの角度で方向を、速度で強さを読む。


目が速い。動くものを見るのが速い。飛ぶ種を追いかけるとき、落ちた場所を見失わない。


**性格**


率直。回り道をしない。マブロが初めて会ったとき、マブロが畑を壊しかけたことに対して即座に「加減ができてないじゃないか」と言った。


怒るのが速い。だが引きずらない。怒った後で「でも誰かがやらないといけないのは分かる」と言える。それがセンの怒り方だという。


子供だが、扱いが子供向きではない人間だとマブロが言ったらしい。「対等に話す」と言えばいいか。年齢を気にしない、というより、年齢より役目で人を見る。


**役目**


風読み。風の向き、強さ、行き先を読む。種がどこへ飛ぶかを追う。声がどこまで届くかを判断する。風が届けるものの行方を知っている。


畑の管理も兼ねている。風が種を運ぶ場所を記録し、次の季節に何が芽吹くかを予測する。


**マブロとの関係**


「力から入るな、方向から入れ」を教えた。マブロがそれまで「強く吹かせれば届く」と思っていたことを、「吹かせるだけなら嵐と同じだ」と言い切った。


マブロが「お前は子供のくせに」と言いかけたとき、「役目で見ろ」と言い返したらしい。


マブロが一緒に来ないかと聞いたとき「あの畑が無事なら」と条件をつけた。補償は金じゃない、「ちゃんと届けられるようになったら来い」と言った。マブロが届けることを覚えてから迎えに来た。


**教えたこと**


「目を閉じるな。感じると体が反応する。体の反応を見ろ」


それから「風はただ吹くものじゃない、届けるものだ」。


届けることを覚えたマブロが「白も今ごろ拾ってる、だったら俺は届ける」と言った夜、遠くへ向かった風が土の国まで届いたという話を、後から商人経由で聞いた。本当かどうかは分からない。でも、そういうこともあるかもしれないと思っている。


---


**ガラムの書き留め**


以上、四人。


白と黒の二人が旅に出たとき、俺は心配していた。

アルブは一人では外に出られない。マブロは一人では大事なものを見落とす。

二人で補い合ってきたのに、その二人が別れた。


だが考えてみれば、別の補い方を見つけただけだった。


アルブは言葉を補う人間を拾った。

マブロは立ち止まる方法を教える人間を拾った。


二人とも、変わっていない。

アルブは内向きのままだ。マブロは無鉄砲なままだ。

ただ、内向きのまま話せるようになった。無鉄砲なまま、届けることを覚えた。


欠点が消えたわけじゃない。

欠点の隣に、違うものが増えた。


ここまで書いて、俺は名簿を閉じた。


「あいつら、二人だけで旅に出したつもりだったが」


誰に言うでもなく、呟いた。


「ちゃんと、拾って増やしてやがる」


四人はそれぞれの場所で役目を整えてから、集まってくる。


地図の上で、白と黒の旅路が交わる場所が一つある。魔法の国だ。


四人の仲間を連れた白と黒が、そこで再び一つになる。


それまでサニワは砂の上を動き続ける。


ダウルが採取に出て、リナが火種を守り、風の国からの手紙にあった「まだ風は届く」という一文を、ガラムは毎朝確かめている。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は幕間として、アルブとマブロが四つの国で出会った仲間たちを、ガラムの記録という形で紹介しました。


水の国のウラ。

土の国のソウダ。

火の国のニル。

風の国のセン。


四人は、アルブやマブロと同じ力を持っているわけではありません。


ウラは、アルブが言えないことを隣で言葉にする。

ソウダは、長い年月をかけて土の声を知っている。

ニルは、壊さずに火を変える方法を探してきた。

センは、力より先に行き先を見ることを教える。


真法だけですべてを解決するのではなく、それぞれの土地で生きてきた人の知識や経験があって、初めて役目をつなぎ直すことができます。


アルブとマブロは、離れたことで弱くなったのではありません。


アルブは、内向的なまま誰かと話せるようになった。

マブロは、無鉄砲なまま立ち止まることを覚えた。


欠点を消すのではなく、その隣に別の役目を持つ人が増えていく。


それもまた、この物語における「拾って、つなげ返す」ということなのだと思います。


次回から、白と黒の旅路は魔法の国へ向かっていきます。

それぞれの仲間を連れた双子が、離れてから初めて同じ場所を目指します。


四人の中で特に気になった人物や、今後の活躍を見てみたい人物がいれば、感想で教えていただけると嬉しいです。

評価やブックマークでの応援も、とても励みになります。

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