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屑守の真法拾い 〜魔法は世界の未来を前借りする禁術でした。拾ったガラクタで失われた役目をつなげ返す〜  作者: 妖怪ステーキ


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第2話 砂を渡る仕事

挿絵(By みてみん)


砂漠の読み方は、まず風から入る。


それがガラムの教えだった。ガラムは双子の博守の師匠で、荒っぽくて口が悪くて、でも砂漠のことは誰よりも知っている男だった。去年の春から秋にかけて、双子はガラムと一緒に三度の採取行に出て、砂の歩き方を叩き込まれた。


「砂は平らに見えるが、全部違う」とガラムは言った。「風の通った砂と通らない砂。ワームが掘った砂と掘っていない砂。水を含んだ砂と干からびた砂。足の裏で感じろ。目より先に足が知る」


アルブはその言葉を体で覚えた。


今日の砂は昨日より硬い。風が南から来ている。つまり今夜は冷える。水の消費を少なくしておく必要がある。歩きながらそれだけのことを計算して、アルブは荷袋の水筒の位置を確かめた。


「止まるな」とマブロが後ろから言った。


「止まってない」


「考えてるとき遅くなる」


「考えながら歩いてる」


マブロはそれ以上言わなかった。先へ進む。アルブもついていく。


出発して二日目の午後、夜露甲虫の群れを見つけた。


砂丘の北面、影になる斜面に、黒い粒が点々と並んでいる。夜露甲虫は葉の代わりに夜露を集める虫だ。森が消えて葉がなくなった世界で、霧を集める役目を引き受けた。背中の細かい突起に水滴を集めて、それを口まで流す。採取して絞れば飲み水になる。殻は乾燥させると薬になる素材だ。


「集める」とマブロが言った。


「今は駄目」


「なんで」


「昼に集めたら水が飛ぶ。夕方まで待つ」


マブロは砂を蹴って、不満そうに止まった。でも待った。アルブが言うことには、砂漠のことに関しては、たいてい従ってくれる。それがありがたかった。


夕方になって、アルブとマブロは手分けして夜露甲虫を集めた。薄い布袋に入れて、指でそっと絞る。一匹から出る水は数滴でしかない。でも百匹集めれば一口分になる。それが砂漠の計算だった。


「こんな手間をかけて」とマブロがぼやいた。


「でも水だ」


「そうだけど」


「ばーちゃんが言ってた。砂漠は死んだ世界じゃなくて、別のやり方で生き延びてる世界だって」


マブロはしばらく黙って、虫を絞り続けた。それから言った。「虫が水を集めるのが別のやり方、か」


「川が消えても、水を集める役目は消えてない。虫が引き受けた」


「なるほどな」とマブロは言った。あっさりした返事だったが、ちゃんと理解したときの顔をしていた。


夜、二人は砂丘の陰で眠った。


眠る前に、アルブは遠くに見える光を眺めた。王都の方角に、夜でも消えない白い光がある。魔法の光だ。あの方角では、川が流れていて、緑があって、夜は灯りに満ちているという。王族と貴族と神殿の上層部と、国家が認めた魔導師だけが魔法を使える。民衆は使えない。高貴な血筋の証だと言われている。


アルブはその光がきれいだと思う。でも同時に、あの光を灯すたびに何かが消えているという気がして、うまく言えなかった。


三日目の昼、地図の端に書かれた記号の場所へ来た。


ガラムの地図には、朽落の場所がいくつか印してある。砂漠に沈んだ旧集落、朽落。そこにはむかしの世界の残骸がある。炉の跡、水場の跡、道の跡。役目を失ったものが埋まっている。


「ここはガラムの地図にある」とアルブは言った。


「あっちは」


マブロが指差した方向を見ると、砂丘の向こうに石の欠片が見えた。地図にない。


「行く」とマブロが言った。


「確認してから」


「確認は歩きながら」


アルブは砂を読んだ。踏み固められた跡がある。風が砂を均しているけれど、石の下に道の記憶がある。人が歩いた場所だ。ワームの痕跡はない。危険なくぼみもない。


「行けそう」とアルブは言った。


マブロはもうすでに歩き始めていた。


砂丘を越えると、そこに入り口があった。半分砂に埋まった石組みの門。上の文字は読めないが、石の積み方がていねいだ。ずっとむかし、ちゃんとした職人が積んだ石だ。


「朽落だ」とマブロが言った。


「地図にない朽落」


「入るか」


アルブは入り口を見た。砂が詰まっている。でも奥が暗くて、何があるか分からない。マブロなら何も考えずに入る。アルブは考える。でも考えても答えが出ないときは、マブロについていくしかない。


「入る」


マブロが先に砂をかき分けて入っていった。アルブはその後ろについた。


石の間を抜けると、内側は意外なほど広かった。砂が半分まで積もっているが、それでも天井が見える。むかし建物があった場所だ。柱の跡、炉の跡、水甕の破片。そして、中央に一本、石の柱が残っていた。


井戸だ。


砂漠に沈んだ、古い井戸。


その縁の石は白かった。砂に汚れていなかった。ずっとむかしから、そこだけ白いままだった。


アルブは近づいた。足が止まらなかった。その白い石が、何かを持っている気がした。役目、という言葉が頭に浮かんだ。この石は、何かの役目を覚えている。


手を伸ばした。


「アルブ」


マブロが呼んだが、アルブはもう触れていた。


冷たかった。石なのに、水のように冷たかった。そしてその冷たさの中に、川の音が聞こえた気がした——川などというものを、アルブは生まれてから一度も見たことがないのに。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


第2話では、博守の仕事を描きました。


砂の色を見る。

虫の跡を読む。

枯れた根や風鳴り骨を拾う。


派手な魔法も、強い剣もありません。

けれど、この世界では、そういう地味な仕事だけが、まだ砂漠の中に残っているものを知っています。


次回は、地図にない朽落へ入ります。

ここから、アルブとマブロの力が少しずつ目を覚ましていきます。

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