十一、珍説× 新説 保元の乱
十一、珍説× 新説 保元の乱
保元元年七月十日 白川北殿
猫 保元元年七月十日 白川北殿!
阿 賢君崇徳院は対立する後白河から政権を奪還するために仲間と共に立ち上がった。
吽 崇徳院の陣営には源頼長、源為朝、日本各地より勇猛果敢な武将が集まり、戦に備えていた…!
猫阿吽鶴退出。琵琶がべんべんべべん!といい感じに鳴り終わると武将たちがざわざわと話始める。
崇徳を中心に、源頼長(以下頼長)、その他の兵達が弓兵の練習を見つめている。
庭にて数名の弓兵が並び、順次弓を番えて打つ。軽い音が鳴る。
源為朝(以下為朝)が自分の背丈程ある弓に矢を番えて的に打つ。重々しくガンと鳴る。
頼長 見たか崇徳!あの強肩を!あの者が居れば鬼に金棒!この戦、勝ったも同然よ。
崇徳 慢心するな。足下をすくわれたくはないだろう
頼長 何を言うか!日ノ本一の歌の名手であり、その知力に並ぶ者無しとされた(崇徳を掌で指しながら)賢君崇徳上皇と、悪佐府と呼ばれた私と、あの者が居れば問題なかろう。
崇徳 …ふん。おぬしのそれは誉め言葉ではない。
頼長 なあ、為朝!
為朝 はっ
為朝、崇徳達の前に跪く。
頼長 この戦、勝ったも同然よ。
崇徳 何を申すか頼長。我々は好んで戦をするのではないぞ。それは忘れるな。謀反の意思在りと難癖を付けられ、朝敵として誅伐されそうになった結果……むざむざ討たれまいとして贖っているだけだろう。
頼長 ならばこの戦、勝たねば我々に未来は無いというわけだ。
崇徳 それは…
頼長 相手方に首を垂れ命乞いでもしてみろ。そのまま首を刎ねられて終わりだ。我々には先などない。今の世を変えない限りはな。だから、貴様、賢君と呼ばれる貴様が必要なのだ。我々のような無頼漢が生き永らえる世界を作るには、貴様が帝になるしかあるまい
為朝 無頼漢…破落戸代表として、一言宜しいでしょうか?
頼長 はは、よい。話してみろ。
為朝 この戦、勝てます。
崇徳 …それは真か?
頼長 当然だろう
為朝 勿論
頼長 流石、西海道を一人で平定した益荒男よ。
崇徳 なんと、お主一人で日ノ本のあの巨大な西の島を、九の国を平定したというのか。
為朝 はい。腕っぷしには自信があります。ここにいる誰よりも。まぁ、親父に勘当されて九の国へ追いやられた腹いせに大暴れしただけですがな。(豪快に笑う)
頼長 先ほどの弓の腕をみれば、その力、誰も疑うまい。
崇徳 お主たちはどいつもこいつも嵐のようだな
頼長 褒めているのだろう?
崇徳 好きに取るがよい。して、何故この戦に勝機があると申すのか?
為朝 私には九の国を平定した技が御座います。
崇徳 技、とな。
為朝 夜襲で御座います。
崇徳 夜襲。
頼長 夜襲ときたか! 美意識の欠片もない、野蛮な戦法よ! 天を納める采配を取る高尚な戦だというのに、それで夜襲だと? ふざけるのも大概にしろ!
崇徳 よせ頼長。先ずは話だけでも聞こうではないか。
頼長 しかし
崇徳 (頼長を睨みつける)
頼長 …話してみよ
為朝 後白河陣営の兵数は約千と二百。対する此方は……結果は見えているかと。
崇徳 それで
為朝 はい。私率いる数名の精鋭で闇に乗じ、高松殿へ……敵の中枢を攻めます。日が昇る頃には勝負も付きましょう。
崇徳 一筋縄でいく相手ではなかろう
為朝 だからこそです。素早さが全てなのです。出来ることなら明朝、いいえ、明朝しかありません。即座に敵を落としに掛かりましょう。相手が準備を整えてからでは遅いのです。これが終わり次第、即座に計を練り、兵を整え、出発致しましょう。
頼長 はっ、此方の武装なんざ整っておらぬわ。数日後に大和から援軍が到着する。そこまで待てばよかろう。そこから勢力戦をするというのが、戦というものだ。戦の、美というものだ!
為朝 どうですかな。敵が悠長に待つとでも?
睨み合う頼長と為朝。
崇徳 …後に私が世を治めるとしたら、民は多ければ多いほど良い。その方が面白いではないか。…戦死者が少なく済むのはどちらだ。
為朝 夜襲に御座います。
崇徳 ならば決まりだ。明朝攻めるぞ。
頼長 崇徳院!
崇徳 ……良いな。
崇徳、退出。
頼長、為朝の胸倉をつかむ。
頼長 崇徳院はああ言ったがな、この陣営の将は私だ。私の言うことに従ってもらう。いいな。明朝の夜襲は、無・し、だ。援軍を待つ。
為朝 この戦、負けますよ。
頼長、手を放す。
頼長 九の国を治めたからと期待をしていたものの、ただ腕ばかりが強いだけではないか。この美学も解せぬ田舎者め。ここは九ノ国ではない。京だ。貴様のやり方が通用すると思うなよ。
頼長、退出。
為朝 先んずる時は人を制し後にする時は人に制せらる後にする時は人に制せらる…(☆)
為朝退出。
高松殿
信西と平将門が出てくる。
次の台詞は為朝と同時に言う。
信西 後にする時は人に制せらる…決戦は明朝。
平将門(以降将門とする) 信西殿! みょ、明朝!? な、何故そんなにも急に?
信西 平将門殿。何を驚くことがありましょうか。我々は夜襲を仕掛けます。
将門 夜襲など…そんな……正々堂々と戦ってはどうか。
信西 正々堂々…(笑う)…逆族風情に正々堂々などの言葉が通用するとお思いか。後白河天皇こそ天照大御神の血筋を引かれる正当な後継者。崇徳など不義者よ。父上である鳥羽天皇を謀り、息子だと名乗るだなんて…
将門 お言葉ですが信西様、それが真かどうかもわかりませぬ。現に鳥羽天皇が勘違いをしただけとも…
信西 勘違い?
将門 はい。聞けば御妃様は身の潔白を常に訴えていたとか…私には思えませぬ。あのような見事な歌を詠み、様々な学にも精通している者が不義者だとは思えませぬ…なので一度話し合いを…
信西 たわけたことを。あなた。あなたに、たかだか能力の良し悪しだけでそうだとわかるのですか? 真実がどうあれ、彼は不義の子。世がそうであると認め、そうだと望んでいるのです。だから不義、彼の存在に義など在りません。
将門 ですが!
信西 貴方もそうでしょう? だから此方の陣営にいるのではありませんか? それが自らの利に繋がるから。
将門 …
信西 崇徳院ではなく、後白河天皇こそが真の後継者。世が望むのはこの筋書き。それに、あの者共を滅ぼされなければ、滅ぼされるのは我々。苦渋を味わうのが我々になるだけです。
将門 で、ですが…こんな親族で争うようなこと…
信西 (鼻で笑う)ねぇ…将門殿。私は別に、貴様の首をここで刎ねても良いのです…如何思いますか。将門殿。
将門 それは…
信西 相手は逆族。我々に仇名す蛮族! 此方が悠長に構えていれば、あいつらに先手を打たれて負けるだけではありませんか。そんなこともわからないのですか、将・門・殿。
将門 ……いいえ
信西 貴方が采を振りなさい。明朝、夜襲を白川北殿へ仕掛け、逆族共を滅ぼすのです。討たなければ討たれるのは貴方。いいですね?
将門 ………はっ
将門、信西退出。
阿吽猫が入ってくる。騎馬戦がいつでもできるような状態。阿吽が馬、琵琶を持った猫が将。
猫 ほ、保元元年七月十一日 早朝! こうして戦いの幕が切って下ろされた! ……おろされた! …おろされ…幕を下ろせ!…早くしろ!
吽 (騎馬戦状態なので腰に下げている)法螺に届かねぇよ!
阿 お前なにやってんだよ! 考えとけよ! 口でいけ! 口でなんとかなる!
吽 ぶ、ぶぉ…締まらねぇ!
猫 じゃ、じゃあ俺を一旦下ろせ!
吽 (手が)絡まっちまって取れねぇ!
猫 なんで!
鶴、法螺貝を持って出てくる。
鶴 必要かと思いまして。
阿 流石だ!
吽 一発鳴らしてくれ!
鶴 ……え、ええ。
鶴が吹こうとすると、どこからともなく法螺の音が鳴る。全員、びっくり仰天して退散。
鬨の声が上がる。
白川北殿 殿内
戦装束に身を包んだ崇徳が出てくる。
崇徳 何事だ⁉ 声が上がる場所が近すぎはしないか?
為朝、急ぎ入室し、跪く。
為朝 先手を打たれました。
崇徳 何故⁉
頼長、入ってくる。
頼長 …くそ…真坂、後白河側が姑息な手を使うだなんて思っても…
崇徳、頼長を見て悟る。頼長に掴みかかりそうになった瞬間
為朝 出遅れてしまいましたなぁ! 崇徳院! 今から、その遅れを取り戻しに行ってまいります。
頼長 為朝…
崇徳 私も出よう
為朝 なりませぬ! …貴方さえ生きていれば、いくらでも再起は計れましょう。しかし、貴方に何かあれば、もうどうにもなりませぬ。お任せください。貴方様の分も、この源為朝、我が眼前の敵、そのすべてを打ち滅ぼして見せましょう。 では!
為朝、颯爽と退場。
崇徳 (頼長を見つめる)…
頼長 …崇徳
二人退場。
白川北殿 殿外
乱闘が始まる。後白河側がが押し、崇徳側劣勢。
雑兵A な、なんだよいきなり!
雑兵B 突然現れやがって! 卑怯じゃねぁか!
雑兵Bが切り殺されそうになった瞬間、雑兵Bを殺そうとしていた敵の腹部に矢が刺さる。続々と敵側の兵に矢が刺さり、絶命する。
為朝が現れる。自分の背丈ほどもある弓に矢を番え、次々と敵を滅ぼしていく。
雑兵AB 為朝さま!
為朝 待たせたな! 体制を立て直すぞ!
雑兵AB はいっ!
後白河側優勢から、崇徳側に戦況が傾き始める。
為朝 我が名は源筑紫八郎為朝! 腕に覚えが在る者、功を得たい者からかかってこい! 貴様らどいつもこいつも臆病者ばかりだな! 都人ぶってばかりおるから心が弱るのだ! 雑魚どもめ!
為朝、一際大きく弓を引き、一本の矢で同時に二人を射貫く。(どのタイミングでも良いので二人射抜きは絶対表現してください。) 為朝は次々と敵を倒す。敵陣の一人が、一騎打ちを申し込もうと大声で名乗りを上げる。
源何某 我が名は源の…
相手が言い終わる前に、為朝は矢を打ち込んで殺してしまう。
為朝 ぬぅ、すまない!口上中だったな!
為朝、高笑いをしながら続々と敵を打ち滅ぼしていく。戦局が崇徳側に完全に傾きかけたその時、一人の後白河側の兵が火のついた弓を打った。その弓が屋敷の屋根に当たった音が一段と強く響く。
為朝 …しまった。
屋敷に火が付き燃える。
為朝 最早これまでか…!
為朝、急ぎ退出。
崇徳、頼長出てくる。
崇徳 風向きが変わった?(負けたと悟る)
頼長 なんだと!?(崇徳の言葉の意味を都合よく捉える) 吉報はまだか⁉
為朝、入って来て膝を突く。
為朝 万策尽きました。
頼長 なんだと⁉
崇徳 ……そうか。
為朝 撤退を!
頼長 貴様何を言うのだ!まだ戦えるだろう⁉
頼長は為朝の胸ぐらを掴む。
為朝 貴方が
為朝は頼長を睨みつけて冷静に言う
為朝 美学なんざに囚われず、私の戦略に乗っていればこうはならなかったのです
頼長 …くそっ
頼長、為朝から手を離す。
為朝 私が退路を作りましょう。どうかお二人はお逃げ下され。
崇徳 為朝
為朝 初めてでした。崇徳院。天皇であった人が戦装束に身を包み、共に戦おうとしてくれるなんて。……貴方が納める世界を見たかった。……生きていれば、また会えましょうや! どうか、お元気で!
為朝、弓に矢を番えて、
為朝 サラダバー!(誤字ではない)
去る。屋敷が炎に包まれる。たじろぐ頼長と崇徳の元に雑兵現れる。
雑兵 お二人とも、此方へ!
二人、ごく僅かな兵に連れられて炎上する白川北殿から脱出しようとする。炎に巻かれながら逃げる道中、追手に襲われ雑兵の数が減っていく。
頼長 くそ、こんな所で!俺は!
崇徳 待て!頼長‼
静止する崇徳を振り切り、刀を抜く頼長。
頼長 クソっ‼クソっ‼負けてたまるか‼
頼長、台詞を全て言い終わる前に、後白河側の兵が放った矢を首に受ける。
崇徳 頼長!
間
頼長 崇徳
間
頼長 すまなかった
頼長、燃え盛る炎の中に消える。同時に、屋敷が燃えて崩れる。
雑兵 お逃げください!
雑兵、敵に切られる
雑兵 どうか、ご武運を!
崇徳側の兵士が次々に斬り殺されいく。何人か捕まった兵が首を落とされる。
子供が四人、順次首を落とされる。子供の打ち首、それを見た崇徳は特に傷ついたようなそぶりを見せる。
一人残った崇徳を、平清盛と信西、二人が率いる兵が取り囲み、崇徳を跪かせる。
信西 世を治めんと志した者が、なんともまぁ…哀れよのぉ…
崇徳 (信西を睨みつけて) 貴様に憐れまれる程、落ちぶれているつもりなどない。
信西 不義の子だろうと生かされているのは貴様に流れている血のお陰よ…貴様は命を奪われることもなく、讃岐に流されるのです。京から遠く離れた島で、貴様を苦しめた血に、せいぜいみっともなく感謝するのがお似合いです。何か言い残すことはありますか?
崇徳 いつか…いつか、この恨み、皆の無念、晴らして進ぜよう。
信西 如何にして?
崇徳 予言しよう…貴様達の治める世は長くは続くまい。
信西 は、は、負け惜しみはそれだけですか?
崇徳 私は必ず京へ舞い戻り、貴様らの世を滅ぼしてやろう! そして、私が貴様らよりも! 誰よりも素晴らしい国を作って納めてみせる! 必ず! 貴様ら全員我が友と同じ目に合わせてくれようぞ!
崇徳、兵に連れられ退出。信西、将門も続いて退出。




