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縁切大明神  作者: 麿猫
11/23

十、松山

十、松山


明転

崇徳、寝ている。何かに驚いたように飛び起きる。口元をぬぐいながらあたりを見渡す。


崇徳 ここは⁉ どこだ⁉


飛び起きて進み出る。海の音が聞こえる。


崇徳 ………真坂


鶴が跪く。


鶴 四国、松山に御座います。

崇徳 そうか……戦までは戻れなかった…いや戻らなかったというのが正しいか

鶴 ここから数日後、歴史の分岐点が御座います。そこで、今一度

崇徳 待て…何か聞こえぬか?

鶴 ……童の声?

崇徳 まさか…また会えるとは…!


崇徳、バタバタと退出。


鶴 行ってしまいました。…よかったんです、これで。きっと。


法螺の音が聞こえる。


鶴 おや

阿 (OFF)曲者だ! 者共! であえ!であえ!


座組が一丸となって鬨の声を上げる。座席外(劇場外)の空間を、手が空いている演者たちが鬨の声をあげながら走り回る。バタバタ走り回る。

手に法螺貝を持った吽、阿、猫が颯爽と現れる。猫は琵琶を背負っている。阿吽は顔を布で隠している。

人がもっと沢山出て来そうな気配がするが、気のせいである。


阿 すくねぇ!(釣り竿を構える)

吽 (法螺貝を構えながら) 仕方ねぇ!

猫 (鶴を指さして)おまおっおっおまえっ! (琵琶を構える。Yngwie MalmsteenのFire & ICEっぽい) なななななな(んだ)!

鶴 みなさん! この時代からあの方と一緒だったんですね

吽 ん? 知り合いか?

阿 いや。

鶴 (しまったという感じ) あ

猫 し、しらねぇ! な、ななんだお、お前!

鶴 私は

吽 …白い毛…お前、もしかして

阿 お前も


崇徳、小脇に小さな狛犬の像を1対抱えて戻ってくる


崇徳 見てくれ鶴! 懐かしい! それに俺の子も………(阿吽猫に気が付いて)おや、お前たち、何をしてるんだ?

猫 御館様!

吽 (鶴を指さして)なんかいます!

阿 とつぜんなんか白いのが!

崇徳 そうか、この時代のお前たち……あーそうだったなぁ…お前らは昔っからこうだった……(改まって)こいつは俺の客人だ。存分にもてなせ。仲良くしろ。


3人は構えていた物を下げる。


吽 やはりそうか!

阿 我々の仲間だろうと思ってたんだ!

崇徳 お前らほんと調子いいな

猫 お、御館様が言うなら…

阿吽猫 すいませんした!

鶴 いえ、此方こそご挨拶が遅れました。鶴と申します。

吽 鶴!

阿 めでたい名前だな!

猫 (人見知りしている)

崇徳 …あの声は…!


崇徳、何かを聞きつけて、喜び勇んで退出。


吽 なんだか本日はご機嫌だな。

阿 良い歌でも詠めたんじゃないか。 

猫 (人見知りをしている)


猫は阿吽に両端からバンバンどつかれる。

吽 (ヒソヒソ声) お前いつものおしゃべりはどうした

猫 (ヒソヒソ声) だ、だってよう

阿 (ヒソヒソ声) 人見知りするだけ時間の無駄だぜ

猫 (ヒソヒソ声) だ、だってよう…俺達ののこと、こ、こわいだろ

吽 (ヒソヒソ声) あーかもしんねーな…

阿 (ヒソヒソ声) 無理もねぇ…


なんだかよそよそしい空気感が漂う。皆、どうしようかと探り合う。阿吽は愛想を振りまく。猫はもじもじする。


鶴 (咳) 以前、私はあの方に助けて頂いたのです。

阿吽猫 !

鶴 皆さんもそうでしょう?

吽 お、おお! そうだ!

阿 よくわかったな! お前頭いいな!

猫 (人見知りをしている)

鶴 突然現れて、こんなお願いをするのは大変恐縮なのですが…予定まで時間があるのです。あの人のこと、教えてくださいませんか?

吽 御館様のことか?

鶴 ええ。助けて頂いたのに、あの方のこと殆ど何も知らなくて。

阿 それならちょうどいい!

吽 もてなせと言われているしな!(猫をつついて)おい。

猫 (もじもじしている)

吽 あーもう!


吽は、猫が紐で下げている琵琶を遠心力で一回転させる。猫は琵琶が手前に戻って来た時に、それをキャッチして、すぐに歌いだせるような姿になる。


猫 え。

阿 (鶴へ向かって)丁度いい。今、作ってる最中なんだ。

吽 あの方の話だ。

阿 あの方の凄さを語り継ぐ為の、俺達の歌だ。

猫 ……

吽 歌えって

猫 でも

阿 いいから歌えって

猫 で…でも

鶴 あまり緊張なさらないで。貴方の演奏で、崇徳様は素晴らしい舞を納められていました。いえ、あの方は貴方の演奏を信頼しているご様子。じゃなくて、えっと、そんな話を伺いました。だから、教えてください。


間。阿吽は猫の動向を見つめている。


猫 (頷く)


琵琶の音が響き始める。


鶴 (傍白) あの人を知れば、あの人の心へ届く言葉がきっと見つかるのです。私は、あの方に伝えたい。どれだけ、感謝しているか、どれだけ、あの人に救われたのか。どれだけ、それを返したいと思っているのか。私は、あの人に、どうしても伝えたいのです。私の言葉が、届かなくなる前に!


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