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縁切大明神  作者: 麿猫
10/23

九、境内にて

九、境内にて


日が昇った頃。神使達が境内の清掃をしている。

鳩が歌っている。(ハトポッポの歌ではない。実際にいる鳩がよく歌ってる唄っぽい鳴き声があるのでそれをなんかいい感じで歌え。) 猫と阿吽、鶴、仲良さそうに来る。


神使A おはようございます

猫阿吽 おはようございまーす

鶴 おはようございます


猫 よし、今日も縁切りやらにゃんやらをいっちょやってやろうじゃにゃいか。

阿 見てろよ~

鶴 拝見しましょう

吽 よし、今日はこれを使ってみようぜ


吽は大麻(おおぬさ)を3本どこからか持ち出して来る。(なんか他に面白い物があればそれでよいしそれが良い)


鶴 昨日はなんでしたっけ………ハサミ…おとといは、豆……その前は…ドッチボール…

猫 にゃっ! 参拝者が来た!


参拝者、何やら物騒なお願いごとをしている。(物騒なアドリブ)


吽 よっしゃ縁切りしてやろうぜ。

阿 どうやって

吽 どうしような。


吽はおもむろに、手に持っている大麻を参拝者に向かって直接もふもふする。

阿と猫も続いてもふもふする。参拝者は大麻に埋もれる。


吽 なんか効きそうだな

鶴 そうでしょうか

猫 魚の頭も信心からって言うしにゃ。

阿 効くと思えば効くんだ。

 

阿吽は超低音でイワシイワシ…と念仏のようにブツブツ唱えながらモフモフする。

 

参拝者 なんか変な感じがする

鶴 そりゃそうでしょう


崇徳やる気なく出てくる。


崇徳 …お前ら、いつの間に仲良くなったんだ。


猫阿吽は参拝者をもふもふしたまま一緒に退出。鶴は崇徳のそばまで行き、深々とお辞儀。


鶴 気が付けば、不思議と。

崇徳 そうか。

鶴 あの…

崇徳 なんだ。

鶴 少し、お時間いただけますか?

崇徳 ……まぁいいだろう。


崇徳 腰掛ける。鶴、少し離れた所に座ろうとするが、思い直して隣に正座…しようとするが、思い直して崇徳と同じように、崇徳より背筋を伸ばして、崇徳の横に座る。


崇徳 うむ。して、話とは。

鶴 私が出雲の使いというのは、真っ赤な嘘で御座います

崇徳 …………ほう。

鶴 ここにお伺いしたのは、別の理由があってこそ

崇徳 別の理由? (鼻で笑う)なんだそれは

鶴 過去をやり直したいとは、思いませんか?


 別場所 出雲

兎、神使がせわしなく入ってくる。


兎 何!?鶴がいないだと!?

神使D はっ。どこにもおりません。

兎 江戸…彼は江戸へ、武蔵の国へ向かった筈だろう。

神使D いいえ、武蔵へに向かった形跡も、彼が過去へ向かった形跡も未だ御座いません。

兎 ならば何処へ?


急ぎ、神使Eが入ってくる。


神使E 此方をご覧ください。


神使Eは手紙を兎へ渡す。兎、それを見る。


兎 あの、バカ者!


兎は神使Dへ手紙を押し付け、急ぎ退出しようとする。


神使D ど、どちらへ?

兎 京だ。急げ!

神使D、渡された手紙に目を落とす


神使D あの者、か、神を滅ぼそうというのか?

神使E 反逆だ…これは明確な反逆行為だ!


神使DE急ぎ退出。


 戻り 境内にて


崇徳 何を言い出すと思えば、過去を変える? 何を言ってるんだお前。

鶴 (崇徳をまっすぐ見て) ……

崇徳 どうやら冗談ではないようだな。(鼻で笑い) して、何故?

鶴 どうやら、恨み辛みを聞き続ける毎日に辟易している御様子。

崇徳 ほう

鶴 それを変えてみたいとは思いませんか?

崇徳 ……

鶴 私は、私という…あ…妖は! この生を過ごす中で一度だけ、過去に戻ることが出来るのです。

崇徳 それを使いたいと

鶴 はい。

崇徳 俺の為に。

鶴 はい。

崇徳 もう一度聞こう。それは何故だ?

鶴 あなたに、幸せになっていただきたい。

崇徳 幸せとな

鶴 貴方には誰かに恐れられることなく、歌を詠み、文化を愛し、人として、生きて欲しい。

崇徳 何を言うのか。

鶴 私は、昔、貴方に助けていただいたことがあるのです。

崇徳 ……

鶴 そのご恩を、今、お返ししたい。

崇徳 お前…何を考えているのだ…愚かしいとは思わんのか

鶴 愚かで構いません!

崇徳 烏滸がましいとは思わぬか。

鶴 思いません!

崇徳 …

鶴 …


崇徳、鶴に背を向ける。


崇徳 ………………………やり直すとしたら何処から


鶴は跪き、黙って手を差し出す。


鶴 貴方が怨霊となる、ほんの少し前


崇徳、鶴の方へ顔を戻し、その瞬間に暗転。



暗がりから猫と阿吽が不思議そうな顔をしながら現れる。猫の手には火のついた提灯。


猫 にゃ…すー様も、鶴もいにゃい。

阿 ほんとだ

吽 どこにもいないな

猫 どこ行ったんだろにゃ。


狛犬がバタバタしながら来る。口々になんか来た、なんだあれ、と繰り返し言いながら、阿吽の背後に隠れる。

兎を筆頭にして、出雲の神使達ががゾロゾロと現れる。


兎 ここに崇徳院はおられるか。

猫 (にゃっぽい咳をしてから) 御生憎、留守でね。

神使D ここに、白い烏の妖はいるか。

猫 ……さてね。

神使E その者に嫌疑が掛けられておる。

阿 嫌疑。

吽 それは、如何なものかな。

兎 この社の御祭神、崇徳天皇を滅ぼすと

猫 (吹き出す) そんなことが出来るとでも?

神使D 勿論そんなことはさせませぬ

神使E 我々が命を懸けてでも崇徳上皇をお守りする所存

吽 後手に回ってるのに何ってんだか

阿 (肯定の意味で)な。


猫、阿吽を肘でどつく。


神使D この社、見分させて頂きたい!

猫 まぁ、拒否する権限もにゃいですし、お好きにどうぞ


出雲の神使達が社を検分する。

兎、猫阿吽の前に進み出て深々と頭を下げる。


兎 お騒がせして誠に申し訳が無い。この非礼は必ず本人に償わせます。必ず…


兎、頭を上げ陳謝しながら離れ、検分の指揮を取る。



吽 だってさ。どうするよ

阿 どうにもこうにも、あいつらもういねぇしなぁ。

吽 どこいったんだろうな。

猫 はー…茶番だにゃあ。

阿 まぁ、お手並み

吽 拝見としよう


猫、提灯を吹き消す。

暗転

暗転の中、猫阿吽はしゃべり続ける。


猫 ほんとどこいったんだろうな

阿 気だけすー様に飛ばしとこうぜ

猫 どうやって

吽 やってみりゃわかんだろ

猫 えー


3人はぽわーっと猫魂と犬魂になって飛び立つ。


遠く、戦火、炎が燃え上がる音が聞こえる。


全員退出。


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