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夢千夜  作者: 西野了
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早朝の保険営業には無理がある

  アフラックの営業に朝早くから行かなければならない。水が流れている用水路らしき溝を辿っていけば目的地に着くらしい。しかし水路が複数あって特定するのが難しい。午前7時30分から仕事をするのだが8時には集合場所に行かなければならない。今日は職場の旅行で8時に出発予定だ。

 水路を辿って行くと小さな家が集まっている場所に来た。「アフラックですが」と言うと痩せたおじさんが出てきた。どうやら以前請求しそこなった医療保険金があると言うのだ。かなり古い高額療養費の請求書を見せて、これに保険金が出ると言っている。僕も保険金・給付金請求のために営業をしているから丁度いい。だけどこのおじさんがお客さんではない。おまけに高額療養費の請求書は古すぎて半分にちぎれてしまった。

 時刻は8時を過ぎたので同僚に先に出発するように電話したけど「待っている」と返えってきた。僕は早く仕事を終わらせねばと焦った。よく見るとその瘦せたおじさんの奥に小さな家があり、子供が3人いる。シモタさんの家だ。僕のお客さんはシモタさんだったのだ。シモタさんは3人の子供を抱える主婦で保険相談をしたがっている。でも今はご飯の前なのでみんなで楽しく列をつくって遊ぶそうだ。オペラ「こうもり」の前半のフィナーレのようにみんなで列を作って部屋中を回るのだが、瘦せたおじさんは下手で1列になっていたのが、途中で離れてしまい2列になってしまった。2匹の蛇がグルグル回っているみたいだ。

 8時をかなりすぎたので僕は焦って同僚が待っている高い道路に行った。帰り道に同僚たちが待っているのが見えたのだ。やはり7時半にお客さんのところに行くのは無理だった。そもそもどの家にいくのか明確でなくて、その家の周辺に行けばいいなんて上司が言うのだから。でもシモタさんに出会えて良かった。やはり彼女は良いお客さんだった。

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