第二十三話 沈まなかった船
アドミラル・クズネツォフ級重航空巡洋艦は沈まなかった。
それが救いかどうかは、まだ誰にも分からなかった。
艦橋構造物の上半分を失った六万トン級の船体は、十二ノットで北へ進み続けた。操舵区画との通信は途絶し、左舷機関は火災。右舷の推進軸だけが回っている。
海面下では右舷側のスクリューだけが水を掻き、艦尾を左へ押し続けていた。舵角表示は中央のままなのに、艦首方位が一分ごとに二度ずつ西へずれる。
飛行甲板からは燃える航空燃料が排水溝を伝い、舷側へ細い火の筋を垂らしていた。艦が波へ乗るたび、その火が千切れて海面へ落ちる。
前方にはカリナ半島の浅瀬があった。
ズーブル級エアクッション揚陸艇の戦闘指揮所で、ペトレンコは《ヴォルナ》の予測航跡を引き直した。
現在針路のままなら、十八分後に砂州へ乗り上げる。その手前で右へ五度ずれれば、岩礁へ艦腹を当てる。左へ流れれば、水深のある水路へ戻り、無人のまま沿岸集落へ近づく。
沈ませないためではない。
人のいる場所へ行かせないための計算だった。
「《ヴォルナ》操舵区画へ、艦首スラスターの状態を確認」
「応答ありません」
「機関科の回線は」
「生きています。ただし、艦内中継が不安定です」
ペトレンコは送信キーを押した。
『機関停止できません』
艦内から、若い機関士の声が届く。
『主蒸気弁へ入る通路が燃えています。遠隔操作も死んでいます』
「退艦できますか」
ペトレンコが尋ねた。
『負傷者を先に上げます。残る者で弁へ行きます』
「行かないでください。艦首を無人の海岸へ向けたら、全員退艦を」
『でも、空母が座礁します』
「もう戦闘には使えません。人を船体の代わりにしないでください」
『ですが、艦を失えば――』
「艦はもう失っています」
言い切ると、周囲の視線が集まった。
《ヴォルナ》は浮いている。機関も一軸が動き、格納庫には使用可能な部品が残っている。それを「失った」と決める権限が、海軍中佐でもない少佐にあるのか。
本来ならない。
だが、艦を資産として数え続ければ、機関士たちは燃える通路へ入る。船体価格と人命を同じ表へ載せれば、巨大な空母は必ず勝つ。
それを止めるためには、先に帳簿から艦を消すしかなかった。
命令は、ウリヤノフスク級重原子力航空巡洋艦を指揮艦として運用する《スヴィターナ》から出るべきだった。
その指揮艦は通信区画を撃ち抜かれ、艦隊回線を維持できない。
最も高い階級の生存者が誰かも、まだ確定していなかった。
だから少佐が、空母の退艦を命じた。
命令権限を確認する余裕はなかった。海軍法は沈みかけた艦を浮かせず、階級章は燃える通路を通らない。届く回線を持つ者が、届く言葉を使うしかなかった。
「《ヴォルナ》全区画へ。総員退艦。負傷者、非武装者、機関科の順。武器は艦内へ残してください」
『コヴァル側の乗員も救助しますか』
護衛艦から質問が入った。
「海へ出た者は全員です。拘束は甲板へ上げてから」
『発砲された場合は』
「応戦を許可。ただし救命艇ごと撃たないでください」
敵と味方を水面で分ける方法はない。濡れた制服も、油に汚れた顔も同じになる。
ペトレンコは救助艇の配置を決めた。北へ二、南へ三。風下側は煙が流れるため一隻だけ。医療能力のある警備艦を中央へ置く。
《ブレヴィス》自身も被弾している。右舷機関室で三人を失い、負傷者を抱えていた。
それでも救助艇を一隻出した。
余裕があるから救うのではない。余裕がない時に何を残すかで、艦隊の形が決まる。
*
午前八時六分。
《ヴォルナ》は砂州へ乗り上げた。
最初に海底へ触れたのは艦首ソナーの下だった。
鋼板を隔てても分かる低い擦過音が船体を後ろへ走り、続いて全長三百メートルを超える船が一度だけ跳ねた。慣性で前へ押された艦載機の脚止めが軋み、固定索が甲板を鞭のように打つ。
船体全体が持ち上がり、金属の軋む音が海へ響く。艦首が二メートル沈み、右へ傾く。
機関は止まった。
火災は続いた。
《ヴォルナ》の艦首は砂へ深く食い込み、飛行甲板が右へ三度傾いた。格納庫内で固定の外れた機材が滑り、船体の内側から鈍い衝突音が続く。
機関士の最後の報告どおり、岩礁は外していた。
退艦者を載せた救命艇が次々に離れる。定員を超えた艇では、水兵が舷側へしがみついていた。海へ飛び込んだ者の中には、救命胴衣を着けていない者もいる。
ペトレンコは双眼鏡で人数を数えた。
一艇、六十八。
二艇、五十一。
海面に少なくとも二十三。
数え終える前に、煙で見えなくなる。
「北側救助艇、右へ。空母艦尾に十人以上」
『了解。ですが、弾薬誘爆の警報が出ています』
「三分だけ入って。三分で離脱」
救助艇が煙へ戻る。
三分という数字に医学的な根拠はない。弾庫温度と風向から、これ以上近づけておけない時間を選んだだけだった。
救助とは、安全な場所から手を伸ばす行為ではない。危険の一部を、助ける側へ移す行為だった。
クリヴァク級警備艦と民間曳船が接近し、救命艇を回収する。
上空では、オスタヴァ基地から飛来したKa-27PS救難ヘリ――西側識別名「ヘリックスD」――が艦尾の外へホイストを下ろした。二重反転ローターの風が黒煙を押し潰し、海面へ落ちた燃料膜を同心円状に散らす。
その外側では、第88特務支援群のMH-60Sシーホークが右舷側を低速で並走していた。開いた側扉から救難員が身を乗り出し、波間へ緑色の発煙筒を投げる。煙が海面を這い、漂流者の位置を一つずつ可視化した。
「ヘリックス二号、艦尾から離れて。右推進軸がまだ回ってる」
『了解。ホイスト中、あと十二秒』
Ka-27PSは機首を風上へ振り、吊り上げられた水兵が船体へ叩きつけられない距離を保った。救難員の脚が着水者の脇へ入り、ワイヤが張る。濡れた二人の身体が海面を離れた瞬間、直下を《ヴォルナ》から剥がれた外板が通過した。
飛行甲板にいた者、機関区から出られた者、コヴァルの命令に従った者、拒んだ者。海へ入れば区別はなかった。
救助艇では、反乱側の水兵が命令拒否者へ救命索を投げた。甲板へ上がれば事情聴取が待っている。それでも、今ここで溺れさせる理由にはならなかった。
公国側の会戦損害は、昼まで確定しなかった。
戦死百四十三、行方不明五十六、負傷三百余り。
そのうち《ヴォルナ》の死者は九十一。
ペトレンコのロケットで死んだ者、ヴォロディミルのミサイルで死んだ者、火災で死んだ者を正確に分けることはできなかった。
《スヴィターナ》の通信区画でも二十八人が死亡した。
帝国艦隊はスラヴァ級ミサイル巡洋艦とソヴレメンヌイ級駆逐艦を一隻ずつ失い、さらに二隻が大破。残る水上艦は東へ退いた。キロ級潜水艦二隻の所在は不明だった。
ヴェルナ海の主導権は公国側へ移った。
完全な制海権ではない。
潜水艦と機雷が残る海で、その言葉を使う者はいなかった。
ペトレンコは損害集計の最初の版へ目を通した。
戦死百四十三。行方不明五十六。負傷三百十二。
十五分後の第二版では、戦死百四十九、行方不明四十八、負傷三百十四になった。遺体が見つかり、名簿が重複し、意識を取り戻した者が所属を答えたためだった。
数字が変わるたび、人間が増減しているように見える。
実際には、分からなかった死が、分かる死へ移されているだけだった。
《ヴォルナ》の死者の原因欄には、空欄が多い。
A-22による破片。
Kh-38の爆風。
艦載機火災。
艦内交戦。
判定不能。
ペトレンコは、自分の砲撃による可能性がある者へ印を付けさせた。軍法聴取で必要になる。正確な責任範囲を狭めるためではない。分からないまま自分に都合よくまとめないためだった。
次に、擱座した艦の安全区画を決めた。
前部弾庫は温度低下を確認できず、立入禁止。航空燃料区画は漏洩あり。原子炉を積む艦ではないが、非常用発電機と蓄電池だけでも、海水が入れば有毒ガスと火災を起こす。
救助が終われば、今度は残った艦そのものが沿岸への脅威になる。
「油防除船はいつ着きます」
「オスタヴァから二時間半」
「遅いです。港湾曳船へ吸着材を積ませて先行。漁船組合にも協力を要請してください」
「民間船を軍艦火災へ近づけるのですか」
「弾薬区画から一キロ外で油を止めます。危険範囲は海軍が標識する」
沿岸流は六時間後、南西へ変わる。何もしなければ、漏れた燃料は二日後にオスタヴァの取水域へ届く。
会戦に勝った艦隊が、自分たちの油で奪還した港を閉じる。
笑い話なら出来が悪い。現実なら、処理費用の見積書が来る。
「《ヴォルナ》の飛行甲板に残る機体は」
「炎上三、大破二。使用可能性あり四。ただし回収手段がありません」
「人員捜索が終わるまで機体評価を止めてください」
「航空部隊から、塩害前に回収したいと」
ペトレンコは回答を一秒止めた。
戦闘機一機の価値は大きい。次の作戦で、何人を守れるかもしれない。だが捜索路へ回収機材を入れれば、遺体と生存者を運ぶ通路を塞ぐ。
「航空部隊へ、十二時間待つよう伝えて。異議があれば私の名前を出してください」
「また責任を増やしますか」
艦長が静かに尋ねた。
「減らす方法があるなら教えてください」
「ありません」
「では、記録をお願いします」
責任は、勇ましく引き受けるものではなかった。
処理されずに残った仕事が、最後に誰の机へ積まれるかというだけのことだった。
*
午後、ヴォロディミルはオスタヴァ基地へ戻った。
フライトスーツのまま、臨時の調査室へ入る。
ヴォロディミルは着陸してから一度も手袋を外していなかった。
右手が震えていることを、誰にも見せたくなかったからではない。見せれば、周囲が慰めようとする。それに答える言葉を考える時間が惜しかった。
撃ったのは自分だ。
震えまで部下に処理させる必要はない。
机の上には、《ヴォルナ》から回収された記録装置と、コヴァルの私物が並んでいた。
古い国家保安総局の識別票。
暗号表。
庭園計画と記された薄い文書。
私物箱には、それ以外のものもあった。
擦り切れた海図用鉛筆。艦隊創設時の集合写真。少年時代のヴォロディミルが描いたらしい、船とも家ともつかない絵。裏にはコヴァルの筆跡で日付だけが書かれている。
工作員の証拠と、親代わりだった男の残骸が、同じ机へ並べられていた。
どちらか一方だけなら簡単だった。
「原本か」
「複製です」
イリーナが答えた。
「作成時期は二十七年前。改訂が四回。最終指令はDay 3に帝国皇都から送られています」
「内容は」
「大公を保護下へ移す。不能なら統治能力を消失させる」
「殺害、と書かなかったのか」
「保安機関は、後で意味を変えられる言葉を好みます」
ソフィアが記録装置の音声を止めた。
「コヴァル個人の発言と、帝国の指令は一致していません」
「どう違う」
「帝国は生け捕りを優先した。コヴァルは、あなたが誰の手にも渡らないことを優先した。途中から任務ではなく所有欲になっています」
ヴォロディミルは識別票を見た。
「俺を育てたことまで、任務だったのか」
「分かりません」
ソフィアは断定しなかった。
「二十七年分の行動を、一枚の指令書で説明することはできません」
イリーナが別の記録を開いた。
「コヴァルの個人端末には、帝国側への定期報告が残っています。内容は、あなたの健康、教育、政治的人脈。Day 0以降は報告頻度が増加」
「俺が反乱を始めてからか」
「正確には、あなたが亡命を決断した六時間後からです」
「その時点で殺害命令は」
「確認できません。『回収可能性を維持せよ』です」
ソフィアが画面を切り替える。
「一方、コヴァルは艦隊内で弾薬配置と指揮権限を変更しています。帝国指令と並行して、独自の準備を進めた可能性が高い」
「いつからだ」
「少なくともDay 18。ドレナ川作戦の前後です」
二十二日前。
その間もコヴァルは会議へ出て、損傷艦を回し、港の奪還計画を承認した。公国の勝利に必要な仕事をしながら、公国の指揮艦へ砲を向ける準備をしていた。
裏切りだけでは説明できない。
忠誠だけでも説明できない。
人間は、二つの矛盾した仕事を同じ手で続けられる。
慰めではなかった。任務だったと断定する証拠も、愛情だったと断定する証拠もない。曖昧さだけが、死んだ男から最後に残された。
ヴォロディミルは少年の絵を裏返した。
証拠品番号が貼られている。
思い出まで押収品になるのか、と一瞬考えた。
すぐに打ち消す。国家元首が自分の都合で証拠を持ち出せば、庭園計画の調査そのものが疑われる。
「全資料を封印。俺にも原本を渡すな。閲覧記録を残せ」
「よろしいのですか」
「よくない。だから残す」
自分が欲しい答えを、自分の権限で作らせない。その程度しか、死んだ男の所有物ではないと証明する方法を思いつかなかった。
*
ペトレンコは別室で事情聴取を受けていた。
「発射時、《スヴィターナ》が散布界へ入る可能性を認識していましたか」
「はい」
「《ヴォルナ》に命令拒否者がいる可能性は」
「認識していました」
「それでも発射した」
「はい」
同じ答えを、何度も繰り返す。
聴取室の机には、水の入った紙コップが置かれている。ペトレンコは一度も手を付けていない。持ち上げれば、指の震えが記録映像へ残る。
聴取官は敵ではない。
だからこそ厄介だった。
帝国の尋問なら、答えない理由を敵へ押しつけられる。味方の聴取では、自分の判断を自分の言葉で切り分けなければならない。
「射撃前に、大公から許可を受けましたか」
「いいえ」
「艦隊司令部からは」
「通信不能でした」
「《ブレヴィス》艦長は」
「反対を記録するよう、私から求めました。艦長は射撃諸元の作成に参加しました」
「つまり共同判断だった」
「発射命令は私です」
「艦長を守ろうとしていますか」
ペトレンコは初めて答えを止めた。
守ろうとしている。だが、それだけではない。命令した者と、実行可能な形へ整えた者は別だ。どちらか一方を消せば、事実ではなくなる。
「艦長の行為は記録どおり評価してください。私の命令責任と混ぜないでください」
「もう一度聞きます。後悔していますか」
ペトレンコは手を握った。
「後悔しています」
聴取官が顔を上げた。
「判断が誤りだったと」
「違います」
彼女は小さく息を吸った。
「同じ状況なら、また撃ちます。だから、撃ったことを後悔しなくて済む人間にはなりたくありません」
言葉にした途端、右舷機関室の防火扉が閉じる音を思い出した。
この日、彼女が閉じた扉は一つではない。
《ヴォルナ》へ撃った時も、味方である可能性を残したまま引き金の向こうへ置いた。
正しかったと断言すれば、次も簡単に撃てる。
間違いだったと断言すれば、《スヴィターナ》で死んだ者へ説明できない。
そのどちらにも逃げないことが、いま負える責任の限界だった。
聴取官は次の質問へ進む前に、記録端末の時刻を確認した。その沈黙だけが、この部屋で与えられる休憩だった。
*
夜、ヴォロディミルは擱座した《ヴォルナ》を見に行った。
砂州の上で、《ヴォルナ》は黒い輪郭になっていた。消火作業の照明が傾いた船体を這い、焼けた艦橋の開口部から時折、橙色の火が息をした。
ペトレンコが少し離れて立っていた。
「聴取は終わったか」
「暫定で、です。軍法会議の判断は後になります」
「俺も同じだ」
「陛下は、最高指揮官です」
「だから撃った責任が消えるわけではない」
二人は、沈まなかった船を見た。
《ヴォルナ》の周囲には油防除用のブームが張られ、港湾曳船二隻が放水銃を上部格納庫へ向けていた。水流が焼けた鋼板へ当たるたび白い蒸気が噴き、風に押されて飛行甲板を横切った。
飛行甲板の端では、遺体収容班の白い照明が一定の間隔で止まった。Ka-27PSはローターを畳まず待機し、機関を回したまま次の搬送先を待っている。回転数の揃った二重ローター音だけが、波と放水の音を規則正しく切った。
船体は残った。
残ったから、内部へ入り、名前を確認し、何が起きたか調べられる。沈んでいれば、海が証拠と遺体を同じ暗さへ持っていった。
救いと呼ぶには重すぎるが、沈まなかったことには意味があった。
「コヴァルは、俺を自分の作品だと言った」
「違います」
「すぐ否定するな」
「事実と違うので」
ペトレンコは、焼けた艦橋を見上げた。
「作品は、作った人へ撃ち返しません」
「お前も俺も、味方へ撃った」
「はい」
「それで王冠を取り戻せると思うか」
「分かりません」
今度は彼女が断定しなかった。
「でも、今日ここで終われば、死んだ人たちは味方に撃たれただけになります」
ヴォロディミルは返事をしなかった。
戦争を続ければ、死者へ意味を与えられるわけではない。そんな言い方をすれば、次の死者を前の死者のために使うことになる。
ただ、ここで統治も調査も投げ出せば、七分間の味方撃ちは、確かに七分間のまま残る。
「明日、全記録を公開準備へ回す」
「庭園計画もですか」
「軍事上伏せる部分は残す。俺の出自に関する部分は、枢密院と議会へ渡す」
「王位が揺れます」
「もう揺れている。隠せば、揺れていないふりをする費用まで増える」
ペトレンコは擱座した艦を見た。
「船と同じですね」
「何がだ」
「沈んでいないものを、沈んだことにはできません」
ヴォロディミルは初めて手袋を外した。
右手はまだ、わずかに震えていた。
ペトレンコは見たが、触れなかった。慰める代わりに、視線を海へ戻した。
その距離が、今夜はありがたかった。
海から、まだ油の臭いがした。
会戦は勝利として記録される。
その勝利の中心には、公国軍が公国軍を撃った七分間が残った。
翌朝には、擱座した空母の横を補給船が通る。戦争は、悼む側の都合では停泊してくれなかった。
遠くで汽笛が鳴った。
夜間航路へ入る最初の補給船だった。《ヴォルナ》から一・五キロ離れ、機雷掃海済みの細い水路を進んでいく。
甲板の水兵たちは擱座した空母を見ていたが、敬礼はしなかった。敬礼する相手が艦なのか、死者なのか、命令を拒んだ者なのか、まだ決められない。
補給船は速度を落とさず通過した。
沈まなかった船は海辺に残り、止まれない国だけが、その横を先へ進んだ。




