外伝一「島虫」(四・完) 書いた最初の頁
外伝一、最終話です。
――先生が、行かなかった土地があります。
――《《中洲へ入った者は、《《四十一人》》いた》》。
◆
――《《そのうち十四人が、すでに倒れている》》。
――《《残る、《《二十七人》》》》。
◆
――《《わたしは、その二十七人を、《《一人ずつ調べた》》》》。
◆
――《《全員、《《下帯まで脱がせた》》》》。
――《《女は、なつたちに任せた》》。
◆
――《《そして、《《九人に、痕があった》》》》。
◆
――《《九人とも、《《熱はなかった》》》》。
――《《元気に働いていた》》。
◆
「――《《宗吉さま》》」
弥兵衛が、青い顔で言った。
「――《《この九人は、どうなりまするか》》」
◆
「――《《たぶん、《《これから倒れる》》》》」
わたしは、そう答えた。
◆
「――《《防げませぬのか》》」
「――《《防げん》》」
わたしは、はっきりと言った。
◆
「――《《もう、《《入っておる》》からだ》》」
◆
――《《わたしは、その九人を集めた》》。
――《《そして、《《告げた》》》》。
◆
「――《《お前たちの身体に、痕がある》》」
わたしは、そう言った。
「――《《これは、《《中洲で、何かに刺された痕》》だ》》」
◆
「――《《そして、《《たぶん、これから熱が出る》》》》」
◆
――《《九人が、《《一斉にざわめいた》》》》。
◆
「――《《なぜ、そんなことを言う》》」
一人が、叫んだ。
「――《《言わなんだら、《《知らずに済んだ》》のに!》》」
◆
――《《わたしは、その男を見た》》。
◆
――《《その通りだ、と思った》》。
◆
――《《だが、先生は、こう書き残された》》。
◆
――《《一、告げるか告げぬかで迷うたときは、《《告げよ》》。》》
――《《 告げられた者は、《《残りの時を、自分で使える》》。》》
――《《 告げられなんだ者は、《《使えぬ》》。》》
◆
「――《《お前たちに、《《やってもらいたいことがある》》》》」
わたしは、そう言った。
◆
「――《《一つ。《《今日から、河原へ入るな》》》》」
わたしは、指を折った。
「――《《二度刺されれば、二度病む。……その道理は、まだ分からん。だが、《《入るな》》》》」
◆
「――《《二つ。《《熱が出たら、すぐに来い》》》》」
わたしは、続けた。
「――《《我慢するな。……《《早く寝かせるほど、たぶん軽く済む》》》》」
◆
「――《《三つ。……《《これが一番大事だ》》》》」
◆
「――《《《《お前たちが、他の者に教えろ》》》》」
◆
「――《《は》》」
「――《《この普請場には、三百人おる》》」
わたしは、そう言った。
「――《《わたしは、十日で京へ帰る》》」
「……」
「――《《《《わたしが帰った後、誰が教える》》》》」
◆
「――《《お前たちだ》》」
わたしは、そう言った。
◆
「――《《お前たちは、《《刺された者》》だ》》」
わたしは、続けた。
「――《《そして、《《痕を、自分の身体で見た者》》だ》》」
「……」
「――《《わたしが百回言うより、《《お前たちが一回、自分の腋を見せるほうが効く》》》》」
◆
――《《予防の触れは、《《五つ》》にまとめた》》。
◆
――《《一、《《中洲と、腰より高い草の中へ、入るな》》。》》
――《《 どうしても入らねばならぬときは、以下を守れ。》》
――《《二、《《肌を出すな》》。》》
――《《 下帯一つで入るべからず。》》
――《《 ――《《手甲、脚絆、首に布。袖と裾は、紐で縛れ。》》》》
――《《三、《《草の上に、座るな。寝るな。》》》》
――《《 休むなら、《《土の出た所か、堤の上》》で休め。》》
――《《四、《《上がったら、その場で着物を脱ぎ、《《叩け》》。》》》》
――《《 ――《《虫は、着物に付いてくる。すぐには刺さぬ。》》》》
――《《 《《潜り込む場所を探して、しばらく歩き回る。》》》》
――《《 ――《《ゆえに、《《叩き落とす間がある》》。》》》》
――《《五、《《その日のうちに、湯を使え》》。》》
――《《 湯がなければ、川で洗え。》》
――《《 ――《《そして、《《腋と股と乳の下を、《《自分の眼で見よ》》》》。》》》》
◆
――《《四つ目を書いたとき、わたしは《《手が止まった》》》》。
◆
――《《『虫は、着物に付いてくる。すぐには刺さぬ』》》。
――《《『潜り込む場所を探して、しばらく歩き回る』》》。
◆
――《《わたしは、《《それを見ていない》》》》。
◆
――《《痕が、《《柔らかく、汗の溜まる、着物に隠れた場所》》にしかない》》。
――《《ゆえに、《《虫は、そこまで移動している》》はずである》》。
◆
――《《だが、わたしは《《その虫を見ていない》》》》。
◆
「――《《弥兵衛》》」
わたしは、そう言った。
「――《《書き足せ》》」
◆
――《《※以上は、《《それがしの推量である》》。》》
――《《 虫そのものを、それがしは見ておらぬ。》》
――《《 ――《《痕の在り処から、逆に考えたに過ぎぬ。》》》》
◆
――《《 ゆえに、《《証は立たぬ》》。》》
――《《 ――《《証の立たぬまま、書き残す。》》》》
――《《 ――《《いつか、誰かが、この虫を見つける。》》》》
◆
――《《先生が、二十七年前に書かれた形である》》。
◆
――《《触れは、その日のうちに出た》》。
◆
――《《人足たちは、《《笑った》》》》。
◆
「――《《この暑いのに、脚絆をせよと》》」
「――《《首に布を巻けと》》」
「――《《草に座るなだと。……どこで休めばよい》》」
◆
――《《わたしは、それを、《《予期していた》》》》。
◆
――《《先生の書に、こうある》》。
◆
――《《一、予防の触れは、《《必ず笑われる》》。》》
――《《 なにゆえなら、《《まだ病んでおらぬ者に、面倒を強いる》》ものだからである。》》
――《《 ――《《ゆえに、笑われて当然と思え。》》》》
――《《 ――《《そして、《《笑わぬ者を、一人作れ》》。》》》》
◆
――《《笑わなかったのは、《《痕を見つけられた九人》》だった》》。
◆
――《《彼らは、自分の腋を見せて回った》》。
◆
「――《《見ろ》》」
「――《《おれにも、あった》》」
「――《《痛くも痒くもねえ。……気づかなんだ》》」
◆
「――《《伊八にも、あったそうだ》》」
◆
――《《伊八の名が出た瞬間、《《笑い声が消えた》》》》。
◆
――《《七日目》》。
――《《九人のうち、《《四人が倒れた》》》》。
◆
――《《だが――《《四人とも、《《熱が出たその日に、来た》》》》》》。
◆
「――《《宗吉さま! 熱が出ました!》》」
――《《一人は、自分で歩いて来た》》。
◆
――《《わたしは、その男を《《すぐに寝かせた》》》》。
――《《甘い塩湯を、絶やさず飲ませた》》。
――《《涼しい場所に置き、身体を拭き、そして――《《ただ、そこにいた》》》》。
◆
――《《それが、わたしにできる全部だった》》。
◆
――《《薬は、ない》》。
――《《だが、《《早く寝かせた》》》》。
◆
――《《十日目》》。
――《《わたしが京へ発つ日である》》。
◆
――《《数を、まとめた》》。
◆
――《《倒れた者、総計二十七名。》》
――《《 うち、死亡、《《六名》》。》》
――《《 ――《《うち五名は、触れを出す前に倒れた者である。》》》》
◆
――《《 触れを出した後に倒れた者、八名。》》
――《《 ――《《うち死亡、一名。》》》》
◆
――《《新しく中洲へ入った者は、《《一人もいなかった》》》》。
◆
――《《そして、《《新しく刺された者も、いなかった》》》》。
◆
「――《《宗吉どの》》」
戸倉どのが、堤の上で頭を下げた。
「――《《かたじけない》》」
◆
「――《《戸倉どの。……六人、死に申した》》」
わたしは、そう言った。
◆
「――《《それがしは、《《一人も治しておりませぬ》》》》」
◆
「――《《なれど、《《止まり申した》》》》」
戸倉どのは、そう言った。
◆
「――《《宗吉どの。それがしは、二十日のあいだ、《《どう手を打てばよいか、分からなんだ》》》》」
彼は、続けた。
「――《《坊主を呼び、祈祷をさせ、塩を撒き、……そして、《《病人を葦の囲いに放り込んだ》》》》」
「……」
「――《《それがしは、《《四人、そこで死なせ申した》》》》」
◆
「――《《戸倉どの》》」
わたしは、そう言った。
◆
「――《《それは、《《知らなかったからにござる》》》》」
◆
「――《《知る手立てが、なかったのだ》》」
わたしは、そう続けた。
「――《《ゆえに、責められませぬ》》」
「……」
「――《《なれど――《《今、貴殿は知られた》》》》」
◆
「――《《ここから先は、違い申す》》」
◆
――《《先生が、三十年言い続けた言葉である》》。
――《《わたしは、それを、《《初めて自分の口で言った》》》》。
◆
――《《発つ朝》》。
――《《なつが、握り飯を持ってきた》》。
◆
「――《《お医者さま》》」
「――《《なつどの》》」
「――《《一つ、お伺いしても》》」
「――《《なんなりと》》」
◆
「――《《あの三人は、《《治りますか》》》》」
◆
「――《《二人は、たぶん》》」
わたしは、正直に答えた。
「――《《一人は、《《分かり申さぬ》》》》」
◆
――《《なつは、頷いた》》。
――《《そして、こう言った》》。
◆
「――《《お医者さま。……わたくしは、《《怒っておりました》》》》」
◆
「――《《さようでござろう》》」
「――《《女の身体を見ろだの、乳の下を見ろだの》》」
彼女は、そう言った。
「――《《《《この男は、何を言うておるのか》》と》》」
◆
「――《《なつどの。それは、《《正しゅうござる》》》》」
わたしは、そう言った。
◆
「――《《いえ》》」
なつは、首を振った。
◆
「――《《見つけたとき、《《手が震えました》》》》」
彼女は、そう言った。
「――《《本当にあったのでございます》》」
「……」
「――《《《《見なんだら、なかったことになっておりました》》》》」
◆
――《《わたしは、その言葉を、《《京まで持って帰った》》》》。
◆
――《《京、啓迪院》》。
◆
――《《八月》》。
◆
――《《わたしは、『手当書』の前に座った》》。
◆
――《《六巻ある》》。
――《《一巻から五巻までを書かれたのは、先生である》》。
――《《六巻は、徳川内府どのが書かれた》》。
◆
――《《そして、《《七巻目は、まだ薄い》》》》。
――《《先生が亡くなられてから、わたしと、わたしの弟子どもが書き足しているものである》》。
◆
――《《わたしは、そこに、新しい項を書いた》》。
◆
――《《一、越後の在にて見たる熱病のこと。》》
――《《 土地の者は「島虫」と呼ぶ。》》
◆
――《《 症――》》
――《《 一、突然の高熱。下がる日がない。(瘧にあらず)》》
――《《 二、割れるような頭痛。》》
――《《 三、胸腹の、《《押しても消えぬ》》赤い斑。》》
――《《 四、首・腋・股の腫れ。押せば痛む。》》
――《《 五、眼の充血。》》
――《《 ――《《下痢なし。咳なし。喀血なし。》》》》
◆
――《《 診立ての決め手――《《黒いかさぶた》》。》》
――《《 径五分。黒褐色。周囲に赤い輪。硬い。剥がれぬ。》》
――《《 ――《《痛くも痒くもない。ゆえに本人は知らぬ。》》》》
◆
――《《 ※これを見つけるには、《《全身を裸にするほかない》》。》》
――《《 男――腋・臍・腰・股・尻・陰嚢の裏・膝の裏。》》
――《《 女――《《乳の下》》・腋・腰・股。》》
――《《 ――《《着物の形によって、場所が変わる。》》》》
◆
――《《 ※《《羞恥は、診察を殺す》》。》》
――《《 見苦しいと思うのは、見る側である。病人はそれどころではない。》》
――《《 ――《《見なんだ結果は、見た結果より、必ず醜い。》》》》
◆
――《《 ※ただし、《《男の医者が女子を見るべからず》》。》》
――《《 「見られぬゆえ、見なかった」で済ますは怠慢である。》》
――《《 ――《《《《見る者を、作れ》》。》》》》
――《《 絵を描いて渡し、探す場所を告げ、そして任せよ。》》
――《《 ――《《それは、産屋の作法と同じである。》》》》
――《《 (『手当書』第五巻・女と赤子の巻に拠る)》》
◆
――《《 元――《《草の中の、何かが刺す》》と考える。》》
――《《 刺されてより、《《五日ないし十二日》》で熱が出る。》》
――《《 ――《《この間、何も起こらぬ。ゆえに、本人は結びつけられぬ。》》》》
◆
――《《 ※虫そのものは、《《見ておらぬ》》。》》
――《《 痕の在り処から、逆に考えたに過ぎぬ。》》
――《《 ――《《証は立たぬ。証の立たぬまま、書き残す。》》》》
――《《 ――《《いつか、誰かが、この虫を見つける。》》》》
◆
――《《 手当て――《《薬なし。》》》》
――《《 早く寝かせ、涼しくし、甘い塩湯を絶やさぬこと。》》
――《《 ――《《それだけである。》》》》
――《《 ――《《治らぬ者は、治らぬ。》》》》
◆
――《《 予防――五箇条(別記)。》》
――《《 ※予防の触れは、必ず笑われる。》》
――《《 ――《《笑わぬ者を、一人作れ。》》》》
――《《 ――《《一番効いたのは、《《痕を見つけられた者が、自分の腋を見せて回ったこと》》である。》》》》
◆
――《《わたしは、そこで筆を置いた》》。
◆
――《《そして、《《もう一行、書き足した》》》》。
◆
――《《 ※この病を、先生はご存じなかった。》》
◆
――《《わたしは、その一行を、《《長いこと見ていた》》》》。
◆
――《《先生は、三十五年、この国を診て歩かれた》》。
――《《尾張。美濃。京。近江。播磨。甲斐》》。
◆
――《《だが、《《越後へは行かれなかった》》》》。
◆
――《《行く時が、なかったのだ》》。
◆
――《《わたしは、《《七年前の冬》》を思い出していた》》。
◆
――《《先生は、寝床の上で、こう言われた》》。
◆
――《《俺の身体は、《《最後の症例》》だ。》》
――《《無駄にするな。》》
◆
――《《そして、最後にこう言われた》》。
◆
――《《医者は、《《自分が蒔いた種の実を、たいてい見ずに死ぬ》》。》》
◆
――《《わたしは、筆を取り直した》》。
◆
――《《そして、その一行を、《《書き換えた》》》》。
◆
――《《 ※この病を、先生はご存じなかった。》》
――《《 ――《《ゆえに、これは、《《それがしが書いた最初の頁》》である。》》》》
◆
――《《わたしは、その下に、署名を入れた》》。
◆
――《《七年前、先生の死を記したときと、同じ形である》》。
◆
――《《記す。啓迪院、宗吉。》》
◆
――《《秋の初め、越後から文が来た》》。
◆
――《《弥兵衛からである》》。
◆
――《《宗吉さま。》》
――《《その後、倒れた者はございませぬ。》》
――《《中洲の草は、《《冬まで刈らぬ》》ことになりました。》》
◆
――《《一人、亡くなりました。》》
――《《なつどのが看ておられた、飯炊きの女子でございます。》》
――《《――《《最後まで、一人にはいたしませんでした。》》》》
◆
――《《それと、お知らせがございます。》》
――《《河原へ入る者が、《《唄を作りました》》。》》
◆
わたしは、その先を読んで、《《手が止まった》》。
◆
――《《ひとつ、草にゃ座るな 土の上》》
――《《ふたつ、袖と裾とを 紐で締め》》
――《《みっつ、上がったら脱げ 叩き落とせ》》
――《《よっつ、湯を使うたら 腋を見よ》》
――《《いつつ、熱が出たなら その日に来い》》
◆
――《《節は、どこかで聞いたようなものでございます。》》
――《《人足どもが、「昔から知っておる節だ」と申しております。》》
――《《――《《どこで覚えたかは、誰も存じませぬ。》》》》
◆
――《《わたしは、その文を持ったまま、《《笑った》》》》。
◆
――《《先生の唄である》》。
◆
――《《三十九年前、岐阜城の裏庭で、《《字の読めぬ三百人のために作られたもの》》》》。
◆
――《《節だけが、《《越後まで来ていた》》》》。
◆
――《《そして、《《言葉を入れ替えられて、新しい病に使われていた》》》》。
◆
――《《誰も、作り手を知らない》》。
◆
――《《それでいい、とわたしは思った》》。
◆
――《《先生の書には、こう記されている》》。
◆
――《《一、唄は、伝染する。》》
――《《 紙は焼ける。人は死ぬ。》》
――《《 ――《《だが唄は、人の口から口へ、勝手に移ってゆく。》》》》
◆
――《《わたしは、弥兵衛への返事を書いた》》。
◆
――《《弥兵衛どの。》》
――《《唄、書き写して寄越されよ。》》
――《《――《《『手当書』に加える。》》》》
◆
――《《それと、一つ。》》
――《《――《《京へ、来ぬか。》》》》
◆
――《《啓迪院は、誰でも入れる。》》
――《《字が読めれば、なお良い。》》
――《《――《《読めずとも、唄が覚えられれば、それでよい。》》》》
◆
――《《 外伝一「島虫」 了》》
外伝一「島虫」、これで完結です。
ツツガムシ病は、現在では抗菌薬によって治療できます。テトラサイクリン系の薬が著効し、早期に投与すれば速やかに解熱します。
ですが、抗菌薬が存在しなかった時代の致死率は、報告によっては三割に達したとされます。慶長二年の宗吉には、打つ手がありません。
彼にできたのは、原因を突き止め、曝露を止めることだけでした。
これは、感染症対策の本質でもあります。治療薬のない病に対して、人類が繰り返し用いてきた唯一の手段が、感染経路の遮断です。
作中の予防五箇条のうち、四つ目——「上がったらその場で着物を脱いで叩け」——には、実際の根拠があります。ツツガムシは付着してすぐに刺すわけではなく、しばらく体表を移動して、皮膚の柔らかい部位を探します。その間に払い落とせば、感染を防げます。
ただし宗吉は、虫そのものを見ていません。彼が書き残したのは、痕の分布から逆算した推論だけです。
この虫が実際に同定されるのは、明治期を待つことになります。
――
外伝一は、本編の主人公が知らなかった病を、弟子が見つける話でした。
本編第五十話で、彼はこう書き残しています。
「医者は、自分が蒔いた種の実を、たいてい見ずに死ぬ」
その逆もまた真である、という一篇にしたつもりです。師が知らなかったことを、弟子が書く。それが起こって初めて、渡したことになるのだと思います。
長らくのお付き合い、ありがとうございました。




