第14話
他の話の編集を始めてるため少しペースが落ちます。
時は巡り――俺は、無事に三歳の誕生日を迎えた。
この世界において、「三歳」というのは一つの大きな節目であるらしい。
前世の現代日本とは違い、この世界では乳幼児が三歳まで無事に生き残ること自体が、中々にハードルが高いのだ。
その最大の原因は、感染症や病気に対する医療インフラの圧倒的な不足。
この世界には手厚い科学的医療など存在せず、神殿の神官による「治癒魔法」が主な医療リソースとなっている。
だが、これがとんでもない高額請求(ぼったくり価格)なのだ。
治癒魔法を一回受けるだけで、平民の約一ヶ月分の給料にあたる金貨一枚が飛ぶ。
欠損を伴う大怪我や骨折ともなれば、ほぼ年収分に匹敵する費用がかかるため、貴族でもなければ神官に治療をお願いするのは実質不可能。そのため、多くの平民や農民らは、お世辞にも衛生的とは言えない薬屋や冒険者の僧侶、時にはシャーマンや呪術師の民間療法に頼らざるを得ないのが現状だった。
そんな過酷な環境下で、俺が怪我や病気一つすることなく、極めて健康にこの日を迎えられたことには、周囲の過保護なサポートも含めて感謝しかない。
そして三歳になると、この世界の全人類にとっての「一大イベント」が幕を開ける。
――『鑑定の儀式』だ。
ゲームでもお馴染みの、自分のステータスを確認することができるイベント。
これによって、今まで隠されていた基礎ステータスや固有魔法、職業適性がすべて開示される。
…とはいえ、俺はすでに自分の固有魔法【最適化】の存在に気づいてフル活用しているから、今さら驚くようなステータスはないと思うが……。自分の肉体がどれだけ成長したかを定量的に確認するには絶好の機会だ
それはそうと、俺の肉体もこの二年間でだいぶ成長した。
身長も一メートルほどになり、視点も高くなって成長を日々実感している。言語システムもアプデが完了し、今では周囲と申し分なく会話ができるようになった。
ちなみに、魔法の発動に関しては、今でも当然のように無詠唱で発動可能だ。
ただ、初級魔法のマスター以降、中級魔法の検証は行っていない。
中級ともなれば単純に出力が大きすぎる上、万が一制御に不安があって暴発でもさせたら、メアリーを始めとする屋敷の防衛システム(過保護な大人たち)に一発で検知されて大騒ぎになるからだ。
自分自身の感覚的にはいつでもバグなく中級魔法は発動できるという確信はあった。
そんなことを考えていると、部屋の扉が静かに開いた。
「ユークリッド様、おはようございます。今日はいよいよ『鑑定の儀』ですね! この日を無事に迎えられて、私も本当に嬉しいです」
「おはよう、メアリー。いつも体調管理をありがとうね。俺もすごく楽しみだよ。鑑定の儀は何時からだっけ?」
「勿体無いお言葉です。お昼食の後に、教会からの使者が来られる予定となっております。それまでに、儀式用の正装にお着替えをいたしましょうね」
メアリーはいつもの優しい顔を浮かべながらも、どこか嬉しそうに目を細めてテキパキと俺の着替えを 準備していく。
この『鑑定の儀式』は、三歳になったすべての国民に受けることが義務づけられている。
職業の適正や固有魔法、固有能力が判明するのだが、過去にはごく稀に、平民や農民の子供から『勇者』や『賢者』といった規格外の超レア職業が誕生した事例があるらしい。
国家としての最高戦力を見落とさないための、義務というわけだ。
そのため、一部の貴族や王族を除けば、基本的には最寄りの教会に出向いて鑑定を行うのが通例なのだが――名門アレクサンド公爵家ともなれば、話は完全に別次元となる。
なんと、教会側から派遣された高位の使者が、わざわざお屋敷にまで出向いてくれるのだ。
というのも、有能な人材のステータスや固有魔法の存在は、他国への情報流出を防ぐため、そして国内の他の貴族との権力闘争を有利に進めるための、最重要機密だからである。
我が家のセキュリティ意識の高さは相変わらず徹底している。
そうして、豪華で美味しいお昼ご飯を食べ終わり、一息ついた頃。
我が家の強固な門をくぐり抜けて、ついに教会からの使者がやってきた――。




