数日後に破滅する刑事さんですわ!
「……S級、だと?」
刑事の顔から血の気が引いていくのが手に取るように分かります。
なにせ『S級』とは単なる強さの指標ではなく、無限の財を生み出すダンジョンから誰よりも資源を手に入れる事ができる国家規模の経済的価値と、一国の軍隊に匹敵する戦略的価値。それを両立した個人に贈られる称号なのですから。
「は、はったりだ! S級がこんな、安っぽい格好をして、エセお嬢様言葉で話すわけないだろ!」
「人の格好や喋り方にとやかく言わないで下さいませ!!」
せっかく気分良く話していたのに、ウィークポイントを突かれ思わず反論してしまいます。
「こほん。というか、この国の治安を守るはずの刑事様ともあろうお方が、ギルド証を見分けることすら出来ないの?」
「馬鹿言うんじゃねえ!見た目は同じでも偽装の可能性もあるだろうが!」
「あらあら、仮にも襲撃犯の通報を受けていたのでしたら、犯人の中に高ランク冒険者が混じってないかの確認のため、照会用魔道具を持ってくるのは常識でしょ?まさか、その必要すらないと思っていたのかしら?」
「ぐっ……」
わたくしが優雅に指先を立てながら言葉の端に共犯じゃないかと疑いを忍ばせたところ、刑事は言葉を詰まらせ、警棒を握る部下たちの手も目に見えて震え始めました。
「勘違いしないでくださいまし。わたくしに超法規的な権限……例えば、貴方をその場で処罰したり、法を無視して追い出したりする権利はございませんわ。S級といえど、現代社会においては一市民。法治国家のルールには従わなければなりません」
わたくしは一歩、また一歩と、たじろぐ刑事との距離を詰め、その耳元で毒を孕んだ甘い囁きを落としました。
「ですが……『不当な捜査によって、日本の至宝たるS級探索者の名誉と安全が著しく損なわれた』という事実。それを『S級専属ギルド員』の目の前で行ったという事実。これだけで国と冒険者ギルド相手に貴方は踊る羽目になりますわ……ドレスコード的にいただけないですけど」
「なっ!?」
今更エレナさんの存在を思い出したのか、目をカッと見開き彼女を見つめる。その熱視線に対して、エレナさんは意地悪く手をひらひら振りました。
「くそっ!……。お、おい、引き上げるぞ!」
自分がどれほどのお間抜けさんなのか、ようやく理解した刑事はわたくし達の目を直視できず、吐き捨てるように叫びました。
「ここは一旦引いてやる! だが覚えておけよ、S級だろうが何だろうが、必ず引きずり出してやるからな!」
「ふふふ、お次があれば……ですけどね」
「ど、どういう意味だ!」
「違法捜査に加えて、国家とギルドの名誉を貶める発言の数々。貴方の後ろにいるお方は、再起の機会を与える温情と切り捨てる手軽さ、どちらを優先するのかしら?」
「待て……待ってくれ! 悪かった、俺が間違っていた! 今までの発言は全部取り消す、だから……!」
入ってきた時の強気の態度が一瞬で崩れ去り、彼はその場に膝をつきました。無様なほどに顔を歪め、わたくしの裾に縋りつこうとするその目に宿るのは、先ほどまでの傲慢さではなく、保身への必死な情けなさだけ。
「映像を消してくれ! 金なら出す、上への報告も揉み消す! だから頼む、助けてくれ!!」
「あら、本当にお見苦しいですわね。ですが残念ながら、この映像魔道具は使用した際、ギルドに提出義務があるから無理なんです。わたくしの独断でデータを消去することなど、規約違反で不可能ですわ」
「というか、ギルド職員の前で警察が賄賂や証拠隠滅の強要しないで下さいよ……」
私からの侮蔑に加えて、エレナさんが呆れ果てた言葉を聞いた刑事は顔を蒼白く染め、力なく床にへたり込みました。
わたくしはそんな彼をゴミを見るような目で見下ろし、引導を渡すべく最後の一撃を突き刺します。
「法を守るべき方が、保身のために証拠隠滅の提案ですか? ……本当に救いようがありませんわね。貴方がしがみつこうとしたその地位も権力も、明日の朝には塵となって消えるでしょう。せいぜい、冷たい檻の中で自分の過ちを数えて過ごすといいわ」
「あ、あぁ……」
絶望に打ちひしがれ、もはや声も出ない刑事。私はふんわりとスカートを揺らし、優雅に背を向けました。
「さようなら、元・刑事さん。次にお会いするのは、法廷の証言台かしら?」
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