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石の檻

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です

 しばらくすると、木製の柵と扉が道を塞ぐように設置された場所に出た。


 そこには、見張りの兵士が立っていたが――――


 サルーキがフードを軽く持ち上げて顔を見せると、兵士は敬礼して扉を開けた。


 扉を通り抜けて、更に森の奥へと進んでいく。


「さっきの兵士は? 味方なのか?」


「正真正銘の正規兵だ。軍の指示で、主に民間人が立ち入らないように見張っている」


「お前、軍に追われているんじゃねーのかよ」


 俺が至極当然の疑問をぶつけると、サルーキは皮肉っぽく口元を歪めた。


「軍も一枚岩ではないと、昨日、説明したはずだ。この場所の警備は、はっきり言ってしまえば閑職だからな。上層部に噛み付いたり、任務に失敗したり……。理由は様々だが、軍の中で居場所を失った者たちの流刑地になっているというわけだ。そういう連中は、だいたい強硬派のことを嫌っているので、こちら側に引き込むのも容易い」


「つまり、味方なんだな?」


「そうだな。この場所に限らず、軍内部には俺たちと価値観を共有する仲間が、何人もいる。そのおかげで、あらゆる情報がこちらに筒抜けというわけだ」


 昨日から、随分と軍の内部事情に詳しいと不思議に思っていたのだが、そういうカラクリがあったらしい。


「軍が一枚岩じゃないのは分かったけど、お前らは大丈夫なんだろうな? 嫌な言い方になるけど、寄せ集めの集団は、一人でも裏切り者がいたら終わりだぞ」


 もし、裏切り者がいた場合、こちらが軍の情報を把握しているように、強硬派も不穏分子の動向を把握している可能性がある。


 要するに、今のこの状況は、軍に「泳がされている」だけかもしれないのだ。


「まあ、その時はその時だな。どうせ、俺たちはこの国の敗残兵。死んで元々だ」


 サルーキは達観したように呟き、その後で「ただ」と付け加えた。


「一つだけ反論するなら、俺たちは決して烏合の衆ではない。少なくとも、今の軍よりは固く結束していると言える。その理由は――――もうすぐ分かる」


 確信めいた口調で断言すると、サルーキは再び背を向けて歩き始めた。


 その口ぶりから察するに、これから会う次期獣王候補の要人が、寄せ集めの集団に過ぎない反強硬派を一つにまとめあげているカリスマなのだろう。


 ひと目見れば、誰もが納得して。


 あの傍若無人な獣王を説得することができて。


 なんなら、戦っても勝機を見出すことのできる人物。


 そんな人物、本当にいるのだろうか?


(――――まあいいや。会えば分かるんだし)


 考えても分からないことは、考えるだけ時間の無駄だ。


 俺は思考を中断して、サルーキの後を追いかけた。



 森の中に伸びた一本道は、開けた場所に繋がっていた。


「何だ、これ?」


 広場と呼んでも差し支えないほどの空間には、複数の建物があった。


 一つは、ごく普通の丸太小屋。生活の気配が感じられる。


 一つは、多分、倉庫だと思われる建物。これも特におかしな点はない。


 ただ、最後の一つ――――これは明らかに異質だった。


 丸太小屋ではなく堅牢な石造りになっており、窓が一つも無い。故に住居とは思えない。


 砦のような外観をしているが、隣の丸太小屋と比べて、特別に大きいわけでも高いわけでもない。そもそも、砦だとしたら周辺の見通しが悪すぎる。


「……檻か?」


 何となく思ったことをそのまま口に出すと、サルーキは驚いたように俺を見た。

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