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検問で引っ掛かる

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です

「大通りから王都の外に出る。あまり怪しまれるような行動を取るなよ」


「なんで、わざわざ正面口から出るんだよ」


「大通りから出なければ、目的地まで時間がかかりすぎる。先方を待たせるわけにはいかん」


(うーん……)


 どうやら、先程からサルーキの言動が妙にピリピリしているのは、これから会う獣王候補の要人に気を遣っていることが原因らしい。


(待たせちゃいけないってことは、待たせると怒られるのか? 短気なのかな?)


『そんな怒りっぽい人、覇王丸さんが見て「納得する」とは思いませんけど』


(まあ、喧嘩になるだろうな)


 第一印象が悪ければ、最悪の場合、問答無用で殴り飛ばしてしまうかもしれない。


『普通に考えれば、身分の高い人なんじゃないですか? 貴族とか』


(獣人国には王家が無いのに、貴族はあるのか?)


『あー……どうでしょうね。ちょっと調べてみます』


(相変わらず、お前は下調べが足りないな)


 今から調べたところで、答えが分かる頃には、目的地に着いてしまう可能性が高い。


(今更、調べなくてもいいぞ。着けば分かるんだから)


 俺は山田との会話を適当に終わらせて、荷台の外に目をやった。


 見覚えのある景色だ。


 ちょうど、大通りの入口から王都の外に出るところらしい。


「何事も無く、街の外に出られそうだな」


 俺がヘラヘラと笑いながら、ハウンドに話し掛けると、


「あ、おい。そこの馬車、ちょっと待て!」


 一度は馬車を素通りさせた兵士が、後ろから声を掛けてきた。


     *


 馬車の中に緊張が走る。


(マズいな)


 もし、荷台の奥に身を潜めているサルーキが見つかってしまえば、最悪、衆人環視の中で、捕り物が始まってしまう。


 ――――知らんぷりしろよ。


 ――――言われるまでもねーよ。


 俺とハウンドは互いにアイコンタクトを交わして、努めて平静を装った……のだが、


「な、な、な、何のご用でしょうか?」


 四つ耳の御者が、誰の目にも分かるくらい露骨に動揺していた。


(駄目だこりゃ)


『あからさまに挙動不審ですね』


 俺は早々にシラを切る作戦を諦めて、不意打ちで兵士を殴ることに決めた。


 幸い、この馬車は視界を遮る幌付きだ。兵士が積荷を検めようと荷台に乗り込んだところを、後ろからぶん殴って気絶させてしまえば、通行人に気取られることはないだろう。


 後は、作戦が終了するまでの二十日間ほど、兵士には行方不明になってもらえばいい。


 頭の中で瞬時に拉致監禁計画を練り上げた俺は、獲物が荷台に乗り込んでくるのを手ぐすね引いて待っていたのだが――――兵士の対応は、俺の予想とは違った。


「呼び止めて、すまないな。少しだけ待ってくれるか。知り合いを見かけたんだ」


 動揺を隠せていない御者に気さくに話し掛けると、荷台にいる俺に向かって「よう」と声を掛けてきたのだ。


「どうした? 王都での用事はもう済ませたのか?」


 よく見れば、昨日、王都に入る際に俺を呼び止めた兵士だった。


「なんだ。あんたか」


「なんだとは、ご挨拶だな。奥さんと、お兄さんは一緒じゃないのか?」


 そう言って、兵士が荷台の奥を覗き込もうとしたので、俺は視線の先に回り込むように体をずらして、それを妨害した。


「別行動だ。買い物をしすぎたから、俺だけ金を取りに戻るんだよ」


「なんだ。奥さんに高価な贈り物でも買ったのか?」


「そんなところだ」


 もういいだろ、さっさと仕事に戻れよ、と。


 俺が手で追い払うような仕草をすると、兵士は苦笑して謝った。


「いや、悪い悪い。見知った顔を見かけたので、つい、な」


「お前、友達がいないのか?」


「いるけども。……口が悪いな、お前は。あまり問題行動を起こすなよ?」


「分かってるよ」


 問題行動どころか、近いうちに反乱を起こす――――とは、勿論、言わなかった。


「また、王都に戻ってくるんだろ? 非番の時に見かけたら、飯でも奢ってやるよ」


「やっぱり、友達がいないんじゃないか?」


「いるけども」


 兵士は困ったように笑いながら、御者に「行っていいぞ」と合図を送った。

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