王都からの脱出
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その後、細々としたことを話し合って、俺たちは二手に分かれた。
俺とハウンドは、獣王候補の要人に会いに行くため、待ち合わせ場所である昨夜の食堂へ。
ライカとオルツは、留守番組に今後の予定を伝えるため、一足先に郊外の森へ。
「出発の準備はできているか?」
俺とハウンドが、相変わらず「閉店」の看板を掲げている食堂に足を踏み入れると、既に到着していたサルーキが、開口一番にそう尋ねてきた。
「できているなら、すぐに出発するぞ。裏口を出たところに馬車を待たせてある」
「どこまで行くんだ?」
「王都から少し離れた場所だ」
いいからついて来い、と。
サルーキは説明らしい説明をせず、さっさと店の奥に引っ込んでしまった。
(なんだかピリピリしてるな……)
『そうですね』
(!?)
突然、不意打ち気味に山田が話しかけてきたので、俺は思わず周囲を見回してしまった。
『あ、僕です。周囲を見回しても、何もありませんよ』
(お前……。いつからいたんだよ?)
『ついさっきですね。おはようございます』
(もう、昼近くなんだけど)
どうやら、昨夜、俺に付き合って最後まで話し合いを傍聴していたせいで、山田も寝坊してしまったらしい。
(百歩譲って寝坊は仕方ないとしても、お前が一番の重役出勤って、どういうことだよ)
『いやー。目覚ましをかけなかったんで、思ったより寝過ごしちゃいました』
うっかり目覚ましをかけ忘れたのではなく、意図的にかけなかったらしい。
(確信犯じゃん)
『睡眠もばっちり取ったので、今日も頑張りますよっ』
(もう好きにしてくれよ)
俺が山田とのくだらない会話に時間を割かれていると、店の裏口に行ったはずのサルーキが戻ってきて、何をモタモタしているのかと怒られてしまった。
*
食堂の裏口に停まっていたのは、幌付きの荷馬車だった。
荷台には木箱や麦わらの束が積み込まれており、雑然としている。
「王都の周辺にある農村に、野菜を仕入れに行く馬車だ。俺たちは途中で降りる」
「木箱には何が入っているんだ?」
「主に酒などの嗜好品だ。物々交換の方が喜ばれることもあるらしい」
そう言うと、サルーキはさっさと荷台の奥の物陰に身を隠してしまった。軍に追われているのだから、当然と言えば当然だが。
「お前たちも、荷台の適当な場所に座っていろ」
「そんな雑な隠れ方で大丈夫なのか?」
「強硬派は、俺が既に王都を脱出し、もう二度と戻ってこないと考えている。だから、王都に出入りする馬車の積荷を、いちいち検めるようなこともしない」
しないと断言したからには、同様の方法で、過去に何度も王都に出入りしているのだろう。
「随分、警備がザルなんだな」
「一日に何台の馬車が、王都を行き来すると思っている? 検問に割く人員などあるものか」
「まあ、そうなんだろうけど」
俺は麦わらの束を座布団代わりにして、荷台の端にどかりと腰を下ろした。ハウンドも俺の対面にあぐらをかいて座ったので、自然と巨漢二人が外からの視線を遮る形になる。
「出発していいぞ」
俺が合図を送ると、サルーキが御者に声を掛けて、馬車は動き出した。
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