ちょっとだけお手伝い
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「逆に言えば、強硬派の連中がそれをやってくれれば、不満に思っている奴らも納得するしかないから、軍も一つにまとまるんだけどな」
「それができたら、苦労はしねーだろ」
横からハウンドが口を挟んできた。
「あの獣王を一騎打ちで倒せる奴なんて、お前以外には心当たりがねーぞ」
「まさかとは思うが……。君が新たな獣王になるつもりなのか?」
「そんなわけないだろ」
勝手に決め付けてドン引きしているオルツに、俺は即座に反論した。
獣王の座など、真っ平ごめんだ。
そもそも、俺は獣人に変装しているだけの人間なのだから、獣王の前提条件である「最も強い獣人」には当てはまらない。
それに、たとえ正体を隠したまま王座に就いたとしても、四つ耳が獣王になったら、それはそれで国内が揉めるだろう。
「新しい獣王候補は、一応、いるらしい。今日は、そいつに会いに行くことになっている」
「ほう? その候補者というのは、誰なのだ?」
「はっきりとは教えてくれなかったんだ」
反乱の鍵を握る人物なので、超が付くほどのトップシークレットなのだという。
ただ、サルーキは「実際に会えば納得するはずだ」と断言していたので、それなりの人物であることは間違いないだろう。
「その候補者が説得するか、あるいは俺が挑発して怒らせれば、もしかしたら獣王がやる気を取り戻すかもしれないって言ってたな。それでも駄目なら、一騎打ちで倒すらしい」
「ふむ……。最初は説得を試みるということか」
オルツは、俺の言葉を受けて、思案顔になった。
「もし、獣王がやる気を取り戻した場合――――魔王軍との戦争を回避する方向に動く可能性は無いのだろうか?」
「どうだろうな? サルーキは「そうはならない」って言ってたけど」
たしかに、サルーキの言葉どおり、獣王の長きに渡る沈黙により、獣人国と魔王軍の関係が悪化していることは間違いないだろう。そして、その関係を修復するために、あの自尊心の塊のような獣王が、謝罪の言葉を口にしたり、頭を下げたりするとも思えない。
だが、魔王軍の方はどうだろうか?
竜の巣の反転攻勢や、四大貴族の一角である赤髪侯の敗北など、トレンタ大陸での苦戦が続いている魔王軍が、これ以上、戦線を拡大させることを本心では望んでいなかった場合、獣王が出頭要請に応じるだけでも、すべてを不問にしてしまう可能性は十分にある。
要するに、誰がどのように考えて行動するかなど、第三者が完璧に推し量ることはできないということだ。
――――もっとも、それは俺にも当てはまるのだが。
「取りあえず、心配はしなくていいぞ。そのへんのことに関しては、こっちも人類側に不利にならないように動くつもりだから」
「何か、考えがあるのか?」
「自慢じゃないけど、こういうことを考えるのは得意なんだ」
あえて多くを語ろうとせず、俺が不敵にほくそ笑むと、
「あれは、何か、悪いことを考えている時の顔です」
「あの顔を見ると、なんだか腹が痛くなってくるんだよなぁ……」
横で会話を聞いていたライカとハウンドが、ため息混じりに失礼な感想を口にした。
*
「まあ、とにかくだ。いろいろあって、この国の問題にちょっとだけ首を突っ込むことにしたから。予定外で悪いけど、皆も協力してくれると助かる」
そう言って、俺が「宜しく頼む」と頭を下げると、
「分かりました。……反乱のお手伝いは「ちょっとだけ」ではないと思いますけど」
「頭を下げる必要は無い。舵取りである君がそうすると決めたことなら、我々は信じて付いて行くだけだ」
ライカとオルツは苦笑いを浮かべながらも鷹揚に頷き、
「……ま、この件に関しては、俺が捕まったことが発端だからな」
いつもなら皮肉の一つくらいは口にするはずのハウンドも、神妙な顔をして頷いた。
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