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新たな王

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です

 三週間と聞くと、猶予期間としては十分すぎるような気もするが、軍事行動を起こすまでの期間と考えると、かなり短いと言わざるを得ない。


 現時点で、どれだけ準備が進んでいるかにもよるだろうが。


「で? 俺にそれに協力しろってこと?」


「……そうだ。本来、こんなことを頼めた義理では無いことは、百も承知だが。俺たちには、戦力が足りない。数云々の話ではなく、一点突破を可能とする個の戦力が」


 溺れる者は藁をも掴む、の心境なのだろうか。


(俺は藁じゃないけど)


『戦力的には敵国の軍艦ですよね。駄目もとで頼んでみたくなる気持ちは分かります』


(駄目もとすぎるだろ……)


 それだけ、切羽詰まっているということなのだろう。


 だが、それはそれ、これはこれだ。


「はっきり言わせてもらうと、俺たちには協力するだけの利点が無い」


 サルーキの目的が、獣人国と魔王軍の全面衝突の回避にあるならば、それは人類側にとってデメリットにしかならない。


 このまま放っておけば、労せずして敵と敵がぶつかってくれるのだ。たとえ魔王軍が順当に押し勝ったとしても、多少なりの損害が出るのであれば、その方がメリットは大きい。


 もっとも、自分たちのルーツである獣人国が壊滅的な被害を受けることに対して、この場にいるハウンドをはじめ、ライカやオルツの獣人組が何を思うのかは分からないし、今日一日、王都で話をした親切な獣人たちのことを思うと、少しだけ心苦しくはあるのだが。


「悪いけど、こっちも敵のために命は懸けられない。この国と魔王軍の同盟関係が続いたら、結局、今までどおりに俺たちと敵対するんだろ?」


「――――いや。恐らくは、そうはならない」


 俺がそう返答することを予想していたのか、サルーキはすぐに首を横に振った。


「魔王軍との間に生じた溝は、もう埋まることはないだろう。俺たちが目指していることは、軍を――――ひいてはこの国を一つにまとめることだ。そのためには、もう一度、獣王様に奮起していただくか、あるいは……新たな王に立ってもらわなければならない」


 新たな王。


 サルーキは俺の目を真っ直ぐに見据えながら、はっきりとした口調で、断言した。


     *


 それから、たっぷり数時間はサルーキたちと話し込み――――


 草木も眠る時間帯に、俺とハウンドはアクビを噛み殺しながら宿に戻った。


 宿の主人に代わって店番をしていた獣人に尋ねると、ライカとオルツが宿を変更したという記録は、帳簿には残っていないらしい。部屋に戻っているかどうかについては、店番を交代した時間が深夜なので、それ以前のことは分からないそうだ。


(宿を変える必要は無かったわけだけど……)


 ただ、それは結果論だ。


 オルツは用心深そうな性格をしているので、荷物をまとめてこっそり出て行った可能性もあるし、俺に言われたとおり荷物を置きっぱなしにして戻らなかった可能性もある。


 眠っているのか。それとも、もぬけの殻か。


 俺がそんなことを考えながら部屋の前に立つと、


(ん?)


 目の前でゆっくりと扉が開き、ライカが隙間から顔を覗かせた。

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