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タイムリミット

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です

「王城で兵を募集しているのも、魔王軍との開戦に備えてのことだろう。強硬派の連中は、表向きは獣王様のために行動しているように見せているが、実際には獣王様を傀儡にしようとしているだけだ」


 そして、そんな強硬派の動きを、快く思わない獣人も、軍の中には存在するらしい。


「どっちの数が多いんだ?」


「正確な数は分からん。強硬派の思想に賛同しなくとも、獣王様の顔を立てるための行動には従うという者もいるし、その逆もいる」


「お前は強硬派のことが気に入らないんだろ?」


 そうでなければ、そもそも、こんな話を俺にしたりはしないだろう。


 サルーキは苦々しい表情で頷いた。


「本音を言えば、俺も魔王軍のことは好かない。ただ、この国を護るために連中と手を結んだ獣王様の判断を、俺は間違いだとは思っていない」


「そう考えている獣人は多そうだな」


 オターネストで話を聞いた捕虜の獣人も、そのようなことを言っていたはずだ。


「俺が気に入らないのは、強硬派の連中が獣王様を傀儡にしようとしていることと、獣王様がそれを放置していることだ。国を護ることも、軍をまとめることも、獣王様にしかできない。今の獣王様は、王たる者の責務を放棄してしまっている。軍が一つにまとまっていない状態で魔王軍とぶつかれば、破滅が待っているだけだ」


「それは、あまり良くないな」


 獣人国と魔王軍が互いに損耗してくれるのであれば、俺としては願ったり叶ったりの展開だが、魔王軍が一方的に押し切るのでは、一時的な足止めや時間稼ぎにしかならない。


「それで、この状況を何とかするために、お前らが動いているってわけか」


「できることなら、軍の中にいながら、そうしたかったのだがな」


 サルーキは頷いて、俺が最初にした質問の答えを、ようやく口にした。


「強硬派を牽制するような動きが軍内部で見え隠れし始めた時期に、ようやく、俺に王城への出頭命令が下った。もっとも、それは強硬派の兵士が自宅に押し掛け、強制的に連行しようとする強引なものだったようだが――――」


「よく逃げられたな?」


「幸運にも、たまたま家を空けていた。俺は身寄りのいない独り者だからな。明け方の時間帯を狙ったところで、家にいるとは限らん」


 口ぶりから察するに、女のところに転がり込んでいたのではないかと思ったが、話の続きが気になるので、余計な茶々は入れなかった。


「大方、獣王様の敗戦に関する噂をかき消すために、オターネストにおける作戦失敗の責任を俺に擦り付けるつもりだったのだろう。無論、俺にはその責任があるし、今更、おめおめと生き長らえようとも思わんが――――それでも、姑息な強硬派のために捨ててやれるほど、この命は安くない」


「それで、身を隠しているってわけか。……王都にいて平気なのか?」


「王都にいなければ、こちらから動くこともできないからな。幸いなことに、この区画には強硬派と対立する者が数多く住んでいる。互いの利害が一致しているうちは、身柄を売られるようなことはない」


 サルーキの話では、魔人も人間も下に見ている強硬派は、当然のように人間との混血である四つ耳の獣人も下に見ており、過去にも四つ耳の獣人の婚姻や出産を規制しようとしたことがあったらしい。それ以来、両者は不倶戴天の間柄なのだという。


(要するに、敵の敵は味方ってことか)


 どうやら、互いに立場や主義主張の異なる幾つかの勢力が、強硬派に対抗するという一点において結託し、共闘しているようだ。その中でも、軍内部の事情に精通し、かつては遠征部隊の司令官まで務めたことのあるサルーキは、リーダーとして最適な人材なのだろう。


「魔王軍の設定した出頭要請の期限が、俺たちにとっても期限になる。それまでに、俺たちは行動を起こさなければならない。――――そして、それに失敗すれば、ベスティアはまとまりを欠いたまま魔王軍との泥沼の戦争に突入することになる」


「期限っていつだよ?」


「明日から計算して、ちょうどニ十日後だ」


 つまり、残り三週間らしい。

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