強硬派
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「言論統制か」
これも、独裁国家ではよくあることなのだろう。
特に獣人国においては、獣王個人の武威が国防に直結している。獣王敗戦の噂など、たとえ真実であったとしても、認めることも、放置することもできないはずだ。
「そして、俺が決定的におかしいと感じたのは、副官だった魔人が解任されたことだ」
「フィ……仮面の魔人のことか」
うっかり、フィオレという名前を口に出しそうになってしまった。
(危ねー危ねー)
『気を付けてくださいよ』
(分かってるって)
幸いにも、サルーキは俺が口を滑らせかけたことに気づいていないようだ。真剣な表情のまま、話を続けた。
「獣王様は、傍目にも分かるほど、副官殿を信頼していた。よもや自分の意思で解任するとは思えない」
「誰かれ構わずに八つ当たりするくらいには、荒れていたんじゃないのか?」
「たとえ、そうだとしてもだ。そもそも、魔王軍の本隊から出向している副官を解任することが、何を意味するか分かっているのか?」
同盟関係にヒビを入れる行為なのだぞ、と。
サルーキが力説したので、俺も事の重大性に気が付いた。
たしかに、獣王の副官として出向していたフィオレには、獣王の片腕として働く以外にも、獣人国を「監視する」役割があったのだろう。今もなお世界中で戦線を拡大し続ける魔王軍にとって、獣人国が裏切るかどうかは重大な関心事のはずだ。
そのために、見張りとして派遣したフィオレが、獣人国から一方的に解任されたとなれば、魔王軍としては、当然、真意を問いただそうとするに違いない。
「魔王軍は幾度となく王城に使者を送ってきた――――が、そのすべてが獣王様と会うことも叶わずに、追い返されたようだ」
「どんどん雲行きが怪しくなっていくな」
「この時点で、俺は軍の動きに対して、完全に不信感を抱いていた。そして、俺と同じように疑念を抱いていた同胞の調査により、ある事実が判明した」
そこまで言うと、サルーキはここからが本題だと言わんばかりに、卓上に身を乗り出して、少しだけ声を潜めた。
「恐らく……お前に敗北したことが原因なのだろうが、今の獣王様はあらゆることに対して、無気力になっている。そして、それを幸いとして軍の強硬派が好き勝手に動いているようだ」
「強硬派?」
「選民思想に取り憑かれた連中だ。魔王軍とも、人類国家とも、慣れ合うことなく、国家間の問題は武力をもって解決すべきと考えている」
話を聞く限りでは、随分と攻撃的な考え方をする連中のようだ。
「連中は、魔人も人間も、等しく下に見ている。今までは獣王様の不興を買うことを恐れて、おとなしく命令に従っていたが、ここにきて本性を表したようだ」
「お前は強硬派とは違うのか?」
「……俺にも同じ感情がまったく無いとは言わん。これは、単純に程度の問題だ」
要するに、強硬派の思想はサルーキでも「相容れない」と考えるほど、極端なものらしい。
「魔王軍が獣王様に対して、期限付きの出頭要請を出したことは知っているか?」
「ああ」
「それによって、今、この国は強硬派にとって非常に都合の良い状況に陥っている。なにしろ強硬派は、期限切れを「待つ」だけでよいのだからな」
このまま獣王が出頭命令を無視し続け、動こうとしなければ、魔王軍と獣人国の同盟関係は破綻する。それこそが、強硬派の待ち望んだ状況なのだという。
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