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敗戦の噂

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明日です。

「お前もなんとなく、獣王が負けたんじゃないかって思わなかったのか?」


「正直、もしかしたら……と、思うことはあった」


 だが、同時に、そんなことはあり得ないとも思ったのだという。


「華々しい戦勝報告を御伽噺のように聞くだけの市井の者とは異なり、軍の内部にいる者は、獣王様の常軌を逸した強さを、実際に目の当たりにしているからな」


「それは分からなくもない」


 斯くいう俺も、獣王の強さを目の当たりにした一人だ。直接対決に勝利した俺でさえ、獣王の強さが異常であったことについては、まったく異論が無い。


「そう言えば、お前はこの国の中じゃ何番目くらいに強いんだ?」


「唐突だな。何の話だ?」


「さっき、自分で獣王の片腕とか言ってたじゃないか。それって、二番目か三番目に強いってことじゃないのか?」


 俺の素朴な疑問に、サルーキは面食らったような顔をした。


 だが、これは別におかしな質問ではない。


 一般的に、組織の中で「ボスの片腕」と称されるのは、側近中の側近だけだからだ。


「――――いや。そういうわけではない」


 だが、サルーキは思案顔で少し考えた後、首を横に振った。


「残念ながら、俺よりも強い者はいる。俺はただ、獣王様に重用されていただけだ」


「えこひいきか」


「……多少の語弊はあるが、そういうことだ」


 つまり、獣人国は実力主義ではあるが、二番目に強い者がナンバー2になるわけではなく、ナンバー2以下の人事はすべて獣王が決めるらしい。獣王の独裁国家というわけだ。


「まあ、二番目に強い奴を側近にするのは、危険といえば危険か」


 最も強い者が王位に就くのであれば、必然的に次期獣王の座に最も近いのは、二番目に強い獣人ということになる。当然、野心はあるだろう。


 両者が固い信頼関係で結ばれているのならともかく、そうでないのであれば、クーデターを成功させる確率が最も高い者に、ナンバー2の地位と権力を与えるメリットは少ない。


 だが、サルーキはそんな俺の考えを、見当違いだと一刀両断にした。


「それは、いかにもこの国の実情を知らない者の考えだ。獣王様の家系は、王家というものが存在しないこの国において、三代続けて王位を世襲している。――――それくらい実力が飛び抜けているのだ」


「それはつまり、例えば、今、この店の中にいる獣人が束になって襲い掛かったとしても、獣王には敵わないってことか?」


「僅かな時間稼ぎが、関の山だろう」


「ハウンドを入れてもいいぞ」


「同じことだ」


 どうやら、鎧袖一触で返り討ちにされてしまうらしい。


 先日、ロザリアを救出するため、南部侯爵の屋敷に殴り込んだ際には、俺も反乱軍の兵士や傭兵に取り囲まれたが――――あの時と同じようなことになるのだろうか?


(……なりそうだな)


『魔王軍の中では、唯一、覇王丸さんよりも体の大きな敵でしたからね』


 サルーキと獣王の両方と戦ったことのある俺には、二人の実力差がはっきりと分かる。


 もし、今、二人が戦ったら、サルーキは一撃で獣王にのされてしまうだろう。


 獣王の実力が頭三つ分くらい飛び抜けていて、二番手以下がどんぐりの背比べだとすると、束になっても敵わないというサルーキの発言は、嘘ではなさそうだ。


「そんなにも強いはずの獣王が、今回に限って沈黙を続けていたわけか」


「そうだ。元々、気まぐれな御方なので、数日程度なら、よくあることだと気にもしなかっただろうが……。今回は音沙汰の無い期間が長すぎた。軍の内部にいた俺でさえ不審に思ったほどだ。しばらくすると、王都内で「獣王様が敗北したのではないか」という噂が囁かれるようになった」


 だが、それに対しては、軍がすぐに取り締まりを始めたのだという。

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