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トカゲの尻尾切り

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です

(そもそも、オターネストへの奇襲を成功させたのは、サルーキの手柄だよな?)


『そうですね』


(それなら、俺に負けて不利な状況になったとしても、その時点ではまだオターネストを奪い返されたわけじゃないんだから、手柄が帳消しになるのはおかしいんじゃないか?)


『あー、うーん……。どうなんでしょう?』


 山田も一理あると思ったのか、即答せずに曖昧に言葉を濁した。


『まあ、そのあたりの事情があったから、処分保留になったんじゃないですか?』


(ああ、なるほど)


 そういうことなら、納得できる。


 オターネストは、魔王軍にとって、オット大陸侵攻の足掛かりとなる重要な拠点だったはずだ。


 敵国の領内に橋頭保を築いたという事実は、単にサルーキの手柄というだけではなく、魔王軍に与する同盟国として、獣人国が挙げた大きな戦果になる。


 だからこそ、獣王はサルーキの代わりにオターネストに残り、籠城戦の陣頭指揮を執ったのだろう。


『獣王と仮面の魔人のせいで、一時的に膠着状態になりましたけど。でも、海上を封鎖されてオターネストが陸の孤島になった時点で、僕はジリ貧だったと思いますけどね。今となっては結果論ですけど』


(まあ、そうだな)


 結局、獣王が戦線に残ってまで護ろうとした戦果は、アルバレンティア王国軍が仕掛けた霧の中の攻城戦で、露と消えてしまった。


 その敗戦の責任が、俺に負けた獣王にあると考えるのか、その前の段階で不利な状況を作り出してしまったサルーキにあると考えるのかは、それこそ匙加減一つだろう。


(どうなったのかは、だいたい想像がつくけど)


 なにしろ、ついさっき、サルーキは自分で「軍から追われる身」だと自白している。


 恐らく、オターネストにおける敗戦の全責任を背負わされてしまったのだろう。絵に描いたようなトカゲの尻尾切りだ。


 俺は釈然としない思いを抱きながら、答え合わせをするようにサルーキに話し掛けた。


「それで、どうしたんだ? 追って処分は下されたのか?」


「ああ」


 サルーキは頷いて、ほんの少しだけ、表情に怒りのような感情を滲ませた。仕方がないとは言っていたものの、やはり、本心では納得していないのかもしれない。


「謹慎が言い渡されてしばらく経ってから、獣王様が王城に戻ったという知らせを耳にした。俺はすぐに出頭を命じられるだろうと思っていたのだが、いつまで待っても呼び出しは掛からなかった。様子がおかしいことに気が付いたのは、その頃だ」


「おかしい? 何がだ?」


「通常は、獣王様が遠征から帰還した際には、大々的な戦勝報告が行なわれる。だが、今回はそれが無かった。それどころか、帰還後に獣王様の姿を見たという者すらいないのだ」


「うん」


 それは仕方ない、と。


 事情を知っている俺は、納得して頷いた。


「だって、負けてるからな」


 戦勝報告など、できるはずがない。


 しかも、メイスで俺にタコ殴りにされた上に片目を潰されているので、見た目が痛々しすぎて、雄姿をお披露目することもできなかったのだろう。


 もっとも、たとえ目に見える外傷が無かったとしても、プライドの高すぎる獣王に、敗戦の事実をひた隠しにして虚勢を張るなどという「恥の上塗り」ができるとは思えないが。

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