奇妙な食事会
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冷めた料理が片付けられ、代わりに温かい料理がテーブルに並べられたところで、かつての敵と席を並べての奇妙な食事会が始まった。
「酒は飲まないのか?」
「いらない」
どうせ「未成年だから」と言っても、何が問題なのかと首を傾げられるだけなので、下戸ということにしておいた。
ちなみに、獣人国には飲酒に年齢制限は無いらしい。
「それでは……と言っても、乾杯をするような間柄ではないからな。先に食事を済ませてしまうか?」
話はその後でもいい、と。
サルーキは気を遣ってくれたが、俺としてはあまり長居をするつもりはない。さっさと用を済ませて、宿に戻りたいところだ。
「堅苦しい場じゃないんだろ? それなら、食いながら話を聞く。こっちは勝手に食うから、そっちも勝手に話をしてくれ。質問がある時は、その都度、口を挟む」(もぐもぐ)
「……まあ、それでも構わんか。合理的と言えば、合理的だ」
既に料理を食べ始めている俺を見ながら、サルーキは納得した様子で頷いた。
「お前たちがこの国を訪れた理由は、ハウンドから聞いている。今日一日、情報収集をしていたようだな」
「ああ」
「この国と魔王軍の関係が、破綻しかけていることも知っているのだろう?」
「大通りの入口で、兵士からそんな話を聞いたな」
たしか、軍が人手不足なので、王城で新兵を募集しているという話をしていたはずだ。
「それって、軍の上の連中は、魔王軍との戦闘を想定しているってことだろ?」
「だろうな」
「だろう?」
サルーキが他人事のように頷いたので、俺は眉をひそめた。
「お前も上の連中の一人だろうが」
そうでなければ、オターネストに侵攻した部隊の総指揮を任されたりはしないはずだ。
だが、サルーキは平然とした様子で、首を横に振った。
「俺はもう軍に籍を置いていない」
「そうなのか?」
「それどころか、軍から追われている身だ」
「!?」
いきなり、かなり衝撃的な事実をカミングアウトされた。
「どういうことだ?」
「そうだな。……では、そのあたりのことから話そうか」
サルーキは呼吸を整えるように深く息を吐き出すと、俺に敗れてから現在に至るまでの出来事を語り始めた。
*
サルーキ曰く、獣人国では「強いこと」が何よりも評価されるらしい。
その最たる例が、当代最強の獣人が「獣王」として国を治めるという、シンプルで原始的な政治システムだろう。
強くなければ王位に就くことも、王位を守ることもできず、当然、世襲も認められない。
歴代獣王の武勲がそのまま抑止力となり、他国の侵略から国を守り続けてきたという歴史的背景があるからこそ、この風変わりな(見る人によっては野蛮な)政治システムは国内で受け入れられているようだ。
そんな完全実力主義の獣人国において、サルーキは平民の出自でありながら、獣王の片腕と称されるまでに昇りつめた「成り上がり者」だったのだという。
「自分で言うのもなんだが、あの頃の俺は武功を上げることしか頭に無かった。オット大陸に奇襲をかける作戦の総指揮を任された時は、千載一遇の好機を得たと、喜んだものだ。部下のことなど、自分の手駒としか見ていなかった」
「まあ、そんな感じだったな。……今は随分と角が取れたように見えるけど」
「お前に敗北して、すべてを失ったからな」
そう言って、サルーキは自嘲気味に笑った。
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