再戦 VSサルーキ 決着
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「このっ!」
反射的に繰り出した前蹴りは、虚しく空を蹴る。
だが、同時に床を踏み鳴らす音が聞こえた。
(上か!)
俺の前蹴りを跳躍でかわして、飛び掛かってくるつもりのようだ。
棒立ちの俺に上から襲いかかり、床に押し倒し、首筋に短剣を突き付けて、
「俺の勝ちだな」
などとドヤ顔で言うつもりなのだろう。
「させるかよ!」
「――――なっ!?」
間髪いれずに跳躍した俺に、さしものサルーキも仰天したようだ。
絶対にそうだと決め付けることはできないが、多分、サルーキは魔法を使えない。
だから、いったん跳躍してしまえば、空中では物理法則に従うしかないはずだ。
「ぐっ!」
ガツン、と。
空中で、頭と頭が激突する。
同時に、左腕に刃物で斬り付けられるような痛みが走った。
斬られたのではなく、伸ばした左腕がたまたま短剣に触れてしまったのだろう。
要するに――――
(短剣を持っているのは、こっちの腕かっ!)
俺は無我夢中でサルーキの右腕を掴み、もつれたまま床に落下した。
有利な体勢になったのは――――空中で押し勝った俺の方だ。
そのまま、全体重をかけてサルーキの体を押さえ付ける。
柔道で言うところの、寝技(固め技)に近い体勢だ。
見様見真似ではあるが、ひとまず体の自由を奪うことには成功した。両肩をしっかりと床に固定してしまえば、そう簡単に抜け出せるものではない。
後は、痛みが引いて目を開けられるようになるまで、この体勢を維持するだけ。
サルーキは何度か抜け出そうともがいたが、体重差と気迫でそれをさせなかった。
「……ふう」
やがて、聞こえてきたのは、諦めるようなため息。
同時に、背中をぽんぽんと叩かれた。
ギブアップの合図だ。
「俺の負けだ。技を解いてくれ」
「よし」
目を擦りたい衝動を懸命に堪えていた俺は、すぐに技を解いた。
「あー、くそっ。酒なんか吹き掛けやがって」
「どんなに小細工を弄しても、勝てないのでは意味が無い」
良い案だと思ったのだが、と。
サルーキは起き上がる気配もなく、淡々と感想を口にした。
「ランプを消せって言ったのは、俺の注意を逸らすための囮か」
「部下を使って勝ったところで、お前は納得しないだろう。こちらにとって重要なのは、勝ち負けではなく、お前に話を聞いてもらうことだからな」
「……話か」
そうだったな、と。
俺は深呼吸をするように、ため息を吐いた。
ハウンドを拉致してまで、俺に聞いてもらいたい話とは、いったい何だろうか?
なんだか、きな臭い匂いがする。
十中八九、まともな要件ではないだろう。
(……あれ?)
服の袖で何度か目を擦り、目を開けられるまでに回復した俺は、ふとサルーキが握り締めている短剣に目を止めた。
おかしい。
右手で持っていると思っていたのに、いつの間にか左手で握っている。
(どういうことだ?)
向かい合った状態で、俺は左腕を負傷したのだから、サルーキは右手に短剣を握っていたはずだ。
「お前、そっちの手で短剣を持っていたのか?」
不思議に思って俺が尋ねると、
「落下する時に持ち替えたんだよ」
近づいてきたハウンドが、サルーキの代わりに説明をしてくれた。
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