再戦 VSサルーキ その四
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「おっと」
上体を反らした目と鼻の先を、短剣の切っ先が通り過ぎる。
どうやら、生半可な箇所を攻撃しても俺は避けないと判断して、目を狙ってきたようだ。
さすがに目を攻撃されたら、俺も避けざるをえない。
そして、回避を優先すれば、先程と同じ戦法は使えない。
「ちっ」
俺は舌打ちをして、苦し紛れに前蹴りを放ったが、それはあっさり避けられてしまった。
その後は、サルーキの攻撃を俺が避け、俺の反撃をサルーキが避けるという、攻撃と回避の応酬が何度か繰り返された。
形勢は、俺の圧倒的優位から、一進一退の五分にまで戻されたように見える。
だが、このままではサルーキに勝利の天秤が傾くことはないだろう。
なぜなら、俺がサルーキの攻撃を避けるのは、顔の近くを狙われた時だけだからだ。
裏を返せば、それ以外の箇所を攻撃されても俺は避けない。肉を切らせて骨を断ち、一気に勝負を決めるつもりだ。
つまり、現状、サルーキが攻撃できる箇所は極めて限定されていて、どこに攻撃がくるのか分かっている俺は、容易に避けることができるのだ。
これでは互いに決定打を欠き、長丁場になるのが目に見えている。
そして――――消耗戦になったら、そこはもう俺の土俵だ。
何度目かの攻防を凌ぎ切った後、サルーキは呼吸を整えるために俺から大きく距離を取り、テーブルの上に置いてあるコップを手に取って、残っていた液体を口に含んだ。
「おい。まさかとは思うけど、酒じゃねーだろうな」
「案ずるな。ただの水だ」
サルーキが酒に強いかどうかは知らないが、激しい戦闘の最中にアルコールを摂取するほど馬鹿ではないようだ。
「さすがに、前回の戦いの時とは違うようだな。動きがサマになっている。場数を踏んで戦闘に慣れたのか、それとも誰かに鍛えられたのか……」
「両方だな」
一応、今までの実戦経験や、ゲンジロウ爺さんに付けてもらった稽古の成果は、サルーキが実感する程度には、俺の動きに反映されているようだ。これは素直に喜ばしい。
「……だがな。変わったのは、お前ばかりではないぞ」
そう言って、サルーキは店内をぐるりと見回した。
――――何かを企んでいるようだ。
今までの経験というよりは、直感でそう思った。
「前回の戦いでは、俺も、お前から学んだことがある」
「何だよ?」
「自分に有利な状況を作り出すことだ」
サルーキは迷いのない口調で、断言した。
「今にして思えば、あの時のお前の言動は、すべてが誘導だった。俺の性格を見抜いた上で、利用できるものはすべて利用し、堅牢な城塞都市に堂々と潜入し、王将同士の一騎打ちにまで持ち込んだのだ。その時点で、俺の完全な作戦負けだった」
「あの時は、そこまでする必要があったんだ」
「……本当にな」
不意に、それまで静観していたハウンドが、横から口を挟んできた。
何とも言えない複雑な表情をしているのは、致死性の高い毒キノコを食わされて、無理やり協力させられた時の記憶を思い出しているからだろう。
別に同情はしないが。
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