再戦 VSサルーキ その三
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追い詰められて、持ち前の負けん気にようやく火が点いたのだろうか?
力任せに腕を振り解こうとしてきたので、俺は手を放してやった。
解放された途端、サルーキは後方に跳躍して一気に間合いを広げた。
「やっと、本気になったか?」
「……」
俺の挑発的な言葉にも、過剰な反応をしない。
前回、傲慢な鼻っ柱をへし折られたせいだろうか? サルーキは随分と冷静になったように思える。
最初は牙まで折れてしまったのかと思ったが――――そういうわけではなさそうだ。
「……本当のことを言えば、俺はお前のことが嫌いだ。お前さえいなければ……と。今までに何度、思ったか分からない」
「嫌いなのはお互い様だろ」
「そうだな」
ふっ、と。
自嘲気味に笑って、サルーキは短剣を逆手に構えた。
逆手――――要するに、刃物を思い切り突き立てる時の持ち方だ。
「だが、今の俺には、個人の好き嫌いを持ち出せるほどの余裕がない。お前が本当に獣王様を倒したというのであれば、何としても話を聞いてもらわねばならん。力づくでもだ」
「やってみろ」
言いながら、俺は今までのような棒立ちではなく、低い中腰の姿勢で身構えた。
緊張感が跳ね上がった。しょっぱい消化試合が、いきなり優勝決定戦になったかのようだ。
(なんだか、わくわくしてきたな)
『戦闘狂ですか?』
(そうかもな)
好き放題に暴れているうちに、怒りの感情が薄らいだことが原因かもしれない。
これまでのやり取りで、サルーキの目的が俺への復讐でないことは分かった。
人質を取ったことは腹立たしいが、酷い扱いを受けていなかったのであれば、まだ許せる。
個人的な好き嫌いはともかくとして、今の俺にドス黒い恨みや憎しみの感情は無い。
(話を聞いてやってもいいかもな)
『それなら、戦う必要は無いのでは?』
(それとこれとは話が別だろ)
サルーキほどの実力者と戦う機会は、はっきり言って貴重だ。
百聞は一見にしかず、という諺もある。
この一回の実戦には、百回分の稽古と同じ価値がある――――かもしれない。
(……さすがに百回分は言い過ぎか)
せいぜい数十回分だろう、と。
俺が冷静に考え直したところで、サルーキが先に動いた。
――――速い。
それが素直な感想だった。
さすがは獣人と言うべきか。瞬発力が普通の人間とは比べ物にならない。
先程までは俺の突進を迎え撃つ「守りながらの攻撃」だったが、攻めに転じたことで攻撃に勢いと鋭さが増している。
サルーキは短剣を逆手に握り締めたまま、躊躇なく俺の顔を斬り付けてきた。
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