戦力外通告
毎日1000文字を目標に続きを書いています。
次回の更新は明日です。
ここから先は殆ど蛇足なのだが――――
その後、ゲンジロウ爺さんも船に乗り込み、出港を待つだけという状況になったところで、
「兄貴ぃ!」
「お久しぶりでーっす!」
ワンパターンな呼び声と共に、船団の見送りに集まってきたピスキスの住人をかきわけるようにして、見慣れた(見飽きた)二人組が駆け寄ってきた。
「お前ら、なんで、此処にいるんだよ?」
てっきり、出港する船のどれかに乗り込んでいるものとばかり思っていた俺は、思わず大声を上げてしまった。
「もう船が出るぞ。お前たちも、さっさと乗り込めよ」
停泊する船を指さしながら「早く行け」と急かすと、
「ふっ……」
「笑止!」
いつもどおりの無礼な口調で、アホ兄弟は俺の忠告を笑い飛ばした。
「ご心配なく!」
「俺たちは後発隊に振り分けられました!」
「え?」
マジかよ、と。
思わず、口に出して呟いてしまった。
リゼットの話では、後発隊に振り分けられたのは航海の未経験者――――要するに、ずぶの素人のはずだ。
「お前ら……。見習いの船乗りとしてピスキスと竜の巣を一往復しているのに、後発隊に振り分けられちゃったのか?」
だとすると、これはもう、遠回しな戦力外通告の可能性がある。
俺の中でアホ兄弟は、言動に問題があることを除けば、わりと器用に何でもこなす万能型の便利屋というイメージだったのだが――――船乗りの世界はそんなに甘くないということなのだろうか?
だが、アホ兄弟の反応は、ふてぶてしいほどに余裕しゃくしゃくだった。
「ふっ……。俺たちは将来的に勇者の船の船長になるほどの逸材ですよ?」
「船乗りの基礎は、完璧に身につけました!」
「それじゃあ、なんで後発隊に振り分けられたんだよ?」
俺が疑惑の眼差しで睨み付けると、アホ兄弟はもう一度、俺の質問を笑い飛ばした。
「俺たちに足りないものがあるとすれば……それはずばり心構えです!」
「性根を据えて仕事に取り組めば、とっくに一人前だと言われました!」
「それ、一番駄目なやつだぞ」
要するに、こいつらは甘やかすとすぐに楽をしたがるので、厳しい環境に身を置かなければ一ミリも成長できない根っからの駄目人間だということだ。
(故郷にいても成長しないはずだ)
『実家を追い出されるのが、十年、遅かったですね』
家族ですら匙を投げたこの二人を、いったいどうすれば、人として成長させることができるのだろうか。
いっそのこと、獅子のごとく千尋の谷に突き落としてしまえば、持ち前の往生際の悪さを発揮して成長するのかもしれない。
ゆっくりと遠ざかっていく船に、呑気に手を振るアホ兄弟を見つめながら、俺はぼんやりとそんなことを考えた。
こうして、ゲンジロウ爺さんと大量の支援物資を乗せた先発隊は、俺たちよりも一日早く、トレンタ大陸に向けて出発した。
先発隊が竜の巣に到着するのは、順調にいけば、今から約十日後だ。
はたして、海上を船で一直線に移動する方が早いのか。
それとも、オース海峡を越えて、地上ルートを竜の背に乗って移動する方が早いのか。
それを確かめるための準備は、既に調っている。
翌日、俺たちは万全を期して、西部地域の最西端、剣の岬に向かった。
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