どっちが先に着くか競争
毎日1000文字を目標に続きを書いています。今回は短めですみません。
次回の更新は明日です。
積荷のチェックが終わると、いよいよ船団の先発隊が出港する時間になった。
今回、先発隊と一緒に海路で竜の巣に向かうのは、まだ足の調子が万全ではないゲンジロウ爺さんだけだ。
本当はヒナを同乗させるべきか迷ったのだが、竜の通訳はゲンジロウ爺さんにもできるし、海路は基本的に何もすることがなくて退屈なので、残りのメンバーは上陸作戦に加わることになった。
ゲンジロウ爺さんにとっては、今回が竜の巣への初訪問になるが、いくら面識が無いからといって、俺たちの時のように問答無用で攻撃されることはないだろう。
(乗組員たちは顔見知りだし、要注意人物のファシルも水源の森にいるし)
『そもそも、ゲンジロウさんなら攻撃されても返り討ちにできますからね』
一応、紹介状よろしく、ゲンジロウ爺さんが仲間(勇者の一人)であることを書いた手紙を持参してもらうので、万が一にも物騒なトラブルに巻き込まれる心配はないはずだ。
「それじゃあ、達者でな。どっちが先に竜の巣に着くか、競争だ」
「うむ。おぬしも無茶をせんようにな」
「作戦が失敗したら、後発隊の船に乗って竜の巣に行くよ」
「それが賢明だの」
短いやり取りの後、再会を約束して握手を交わす。
「ヨキも今までありがとうな」
続いて、俺はゲンジロウ爺さんの後方に控えているヨキに感謝の言葉を伝えた。
今回、竜の巣までの護衛を兼ねて、先発隊を先導する役割はヨキが担当することになった。
本来、竜王の側近であるヨキは、部下の竜に航路を覚えさせた後は、竜の巣に戻って竜王の護衛をしたかったはずだ。
それなのに、ヨキは状況を正確に把握した上で、地上戦が苦手であるにも関わらず、自ら抑止力となって、最後までピスキスを防衛してくれた。
「悪かったな。人間側のゴタゴタに巻き込んじまって」
「感謝ノ言葉ハ不要ダ。我々ハ持チツ持タレツノ関係ナノダカラ。私ガイルコトデ、コノ町ヲ護ルコトガデキタノデアレバ、ソレハソウイウ巡リ合ワセダッタト言ウコトダ」
発言が男前すぎて、もはや感心して唸ってしまうレベルだ。
この謙虚さと誠実さ、是非、ナルヒェンにも見習ってほしい。
「ゲンジロウ爺さんをよろしくな」
「任サレヨウ」
俺が鼻先に手を置いて軽く撫でると、ヨキは猫のように喉の奥をごろごろと鳴らして頷き、相変わらず不慣れな飛翔魔法で沖合の海へと移動していった。
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