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ヒナからの伝言(でっち上げ)

毎日1000文字を目標に続きを書いています。

次回の更新は明後日です。

 そこに立っていたのは、リッタをはじめとする神聖教会の使節団の面々だ。


 彼らは俺に霊薬を渡した後も、反乱が終息するまでピスキスの防衛に当たってくれていたのだが、スエービルランス王国との停戦に関して、神聖教会に仲裁を依頼する親書を渡す必要があったため、今日まで滞在を延長してもらっていたのだ。


 もっとも、その親書は既にリゼットを経由して渡してあるはずなのだが……。


「お前ら、まだいたの?」


「うっ……。皆様をお見送りしてから、出発しようと……。あと、聖女様に最後のご挨拶をしようと思っていたのですが。いらっしゃらないのですか?」


「いらっしゃらないぞ」


 今頃、ライカとヒナとロザリアは、王城でジョアンとお茶会をしているはずだ。


 勿論、ただのお茶会ではない。勇者の嫁が集まって何やら楽しそうに話をしている……と見せかけて、実はライカの治癒魔法について、あれこれと相談および検証をしているのだ。


 ライカが治癒魔法を習得したことについては、結局、旅に同行するメンバーと一部の身内に限定して、事実を包み隠さずに打ち明けることにした。


 旅に同行するメンバーに打ち明けたのは、生き死にに関わるような重大な局面で、ライカが治癒魔法を使えることを知らないばかりに、致命的な判断ミスをしないようにするため。


 ジョアンに打ち明けたのは、魔法について相談できる最も身近な専門家だから。


 ロザリアに打ち明けたのは、単純に秘密を共有できる家族だからだ。


 俺とライカだけで抱え込むには重すぎる問題だったので、専門家のジョアンに相談できて、ライカも肩の荷が下りていることだろう。そんなライカを気遣って、付き添ってくれたヒナとロザリアの二人にも感謝しなければいけない。


「爺さんとは、王都で別れの挨拶を済ませてきたからな。今日は留守番だ」


「せ、聖女様は、私どものことについては、何かおっしゃっていませんでしたか……?」


「特に――――」


 何も言っていなかった、と。


 俺が、期待の眼差しを向けてくるリッタに無慈悲な現実を突き付けようとすると、すぐ横でゲンジロウ爺さんが「空気を読め」と言わんばかりに、わざとらしく咳払いをした。


「――――お前たちには、格別の感謝をしていたぞ」


「おおっ。本当ですか!?」


 咄嗟についた嘘に、一気に盛り上がる使節団の面々。


「ピスキスの町を護ってくれてありがとうだってさ。直接お礼を言いたかったけど、自分には聖女としてやるべきこと(お茶会)があるから、ゴメンなさいって」


「いえ、聖女様のおっしゃるとおりです! よくよく考えれば、一介の衛兵に過ぎない私どもが、軽々しく聖女様にお目にかかりたいなどと、おこがましいことでした!」


「ヒナの期待に応えるためにも、聖地まで親書を運ぶ大役、きっちりこなしてくれよ?」


「はっ! この命に代えましても!」


 テンションMAXになった使節団の面々は、船を見送ってから出発すると言っていたことなどすっかり忘れた様子で、俺たちに対する別れの挨拶もそこそこに、ピスキスの町を出立し、神聖教会の聖地キドゥーシュプカに帰っていった。


「宗教の力ってすげーな」


「そうだの」


 聖女の肩書きが付くだけで、大人たちが嬉々として命令に従ってくれるのだ。ヒナと力を合わせれば、オット大陸だけなら簡単に征服できてしまうかもしれない。


「そういえば、俺とヒナが結婚することについて、あいつらは何とも思っていないのかな?」


「第一報を聞いた時は、さすがに驚いていましたよ? 私も驚きましたが」


 リゼットがその時の様子を詳しく話してくれた。


「ただ、最終的には納得されたようです。皆さん、ヒナちゃんが覇王丸様を慕っていることは知っていましたから」


「ふーん」


「あと、上から説明を求められたら困るとも言っていました」


「上? ……ああ、あの爺さんたちか」


 たしかに、法王はともかく、ヒナのことを猫かわいがりしている最高幹部の爺さんたちは、俺とヒナの結婚を快く思っていないだろう。


 リッタたちが何も言わなかったのは、爺さんたちから何を質問されても「知らなかった」で押し通すつもりだからなのかもしれない。


(ライカの治癒魔法のことで、法王に相談しようかとも考えていたけど……)


『ほとぼりが冷めるのを待った方が良さそうですね』


(だな)


 こうして、ヒナの里帰りを兼ねた大聖堂への再訪は、俺の中で当面延期となった。

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